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高校の通級指導1年の振り返り③

こんにちは。栗原白帆です。
前回に引き続き、通級で行った「働く学習」について振り返っていきます。

今年度の通級で私が「これ通級関係なく、全員知るべき!」と思ったのは、就労スタイルともう一つ、「働く力」についてです。

就職を考えるとき、高校、大学問わずキャリア教育なんかで何をするかというと「適性検査」です。要は自己分析して、自分に何が向いているのか、どんな仕事を目指すべきか、みたいなことをやるんですが、今年度行った「働く学習」では、適性なんて漠然としたものは最後の最後。そんなことより、働くときにできていなければいけないことはたくさんある、ということを伝えていました。

T1の先生が用いた図がこれ↓です。

働くためにまず必要なのは「健康管理」。
次に「日常生活管理」。次に「対人スキル」、「基本的労働習慣」と続いて、「職業適性」は最後になっています。

どんなに天職に巡り合えたとしても、健康管理や日常生活管理が維持できなければダメなんです。考えてみればあたりまえのことなのに、どうしてこれまでこの部分をもっとちゃんと伝えてこなかったのか。あごが外れそうになるくらい衝撃でした。

この図を見ているとハリウッドで大成功した俳優がのちにドラッグに溺れたり借金まみれになるのは、適性がなかったせいなのではないかとさえ思えます(芸術の分野は別だ!と言われれば、そうなのかもしれないけど。でも私の敬愛する村上春樹さんはとても健康的な方です)。

考えてみれば、学校生活というのはまさにこのピラミッドの土台部分をきちんと積めるように訓練する場所です。

遅刻、欠席をしないようにする。授業をきちんと受ける。
そのためには生活リズムを整え、体調を管理し、ストレスをうまく発散させなければいけません。

クラスの人たちと穏やかにすごす。
全員と友だちになる必要はありません。波風を立てず、友達でもあかの他人でもなく、同じ空間を共有する人として、クラスメイトとして、気持ちよく過ごせるように努力する。自分の感情をクラスメイトぶつけてはいけない。苦手な人にもあいさつをする。感謝を表す。きちんと謝る。公と私の区別をつけられるようにする。

「適性」などとというものは、そういうことが全てできたうえで初めて問われるものだったんだな、と目からうろこの思いでした。

向いてるとか、向いてないとか、そんな浮ついたこと言ってる場合じゃない!まずは遅刻しないで学校に来い!簡単に休むな!気に入らないことがあるからといって、みんなの前で机を蹴るな!不機嫌を顔に出すな!聞こえるように悪口を言うな!働くということは、こういうことだ!!とすべての生徒にこの図を見せたい。

「この仕事向いてない」は、ピラミッドの土台の全部が積み上げられて初めて言えるセリフなのです。

全ての生徒のキャリア教育をこの図から始めた方がいい。
いきなり”適性”などと言うから「なにしていいかわかりません」、「やりたいことなんて思いつかない」という生徒が続出するのではないでしょうか。
たしかにアルバイトもしたことがない高校生がいきなり自分の適性なんてわかるはずがない。私だって教員としてやっていけそうだと思ったのは5年目研修を終えた頃でした。

働く、を考える前に、自分が「働ける準備ができているか」を考えさせる。

考えてみれば、仕事で必要な技術というのは、仕事をしながら身に着けていくものです。そうして仕事を覚えて、できることが増えていく。

多くの仕事では、どんなに適性があっても遅刻・欠席の多発、あいさつしない、感謝しない、謝らないような人は求められません。それは適性以前の問題だからです。
逆に言えば、上記の勤務態度を続ける人が上司であったり管理職で心が苦しくなる場合には、その仕事に対する自分の適性をうたがって別の職場を探してもいいかもしれない。自分の健康管理(メンタル)や日常生活管理を犠牲にしなければ成り立たない仕事は、適性がない、自分に合っていないと判断していいと思います。

健康で、穏やかな人間関係が築ければ大概の仕事は続けることができます。
「継続できる仕事」が「適性のある仕事」だと思います。
まずは普通の毎日をきちんとすること。

通級で私自身がとても勉強になったテーマでした。

通級の振り返り、続きます。

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