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高校の通級指導1年の振り返り②

こんにちは。栗原白帆です。
前回に引き続き、勤務校(昼間定時制)で行った通級指導について書き留めていきます。


就労について

通級指導を受けている、いないに関わらず、なんらかの障害がある生徒にとって就労は大きな課題の一つです。
自分で働いて税金を払って生きていけるなら、それに越したことはない。
自分の力で収入を得ることは社会的自立だけでなく、本人の精神的自立にも大切なことだと思っています。

たとえ進学をめざしていたとしても、いずれは就職する日がきます。
その日のために、本校の通級指導では「働く学習」というカリキュラムを組みました。
”組みました”なんて、エラそうに書いていますが、組んでくださったのは異校種交流で通級指導者育成に来てくださっているT1の先生です。

「働く学習」は通級を受けるすべての生徒の共通課題として取り組みました。指導の半分を個別の課題の時間にあて、残りの半分で「働く学習」を行う、というイメージです。

私が担当している生徒Aの場合は、45分の授業の中で、前半は声出しと日常のやり取りのロールプレイ、後半に「働く学習」といった感じです。

「働く学習」では、就労スタイルの違いから学んでいきます。

もっと周知されてもいいと感じた、就労スタイル

普通校では通常就労スタイルは1つしかありません。
「一般雇用」と言われるものです。これは障害者手帳を持たずに、どんな人も同じ条件で雇用される形態、いわゆる”普通の就職”のことです。

それに対して、障害者手帳を取得することで就労のバリエーションが格段に増えます。
まず「障害者雇用」。これには「特例子会社」も含みます。それから「就労継続支援A型」、「就労継続支援B型」。

いきなり就労は難しい。もう少し就労のイメージを持ってから…、という場合には、障害者のための「職業訓練校、職業能力開発校」や「就労移行支援」なども利用できるようになります。

こういった情報は特別支援校では当たり前のように扱われるのかもしれませんが、普通校の教員や生徒、保護者はなかなか触れることのないものです。

T1の先生は就労スタイルの違いについて、自分の力と周りの支援の割合をわかりやすく図で説明していらっしゃいました。下の図です↓。

これを見ると、生きていくために自分の力でがんばるスタイルもあれば、周りの支援を得てがんばるやり方もある、ということがよくわかります。
また、支援をどれだけ受けるかということも、自分で決めていい、ということも。

ちなみに「就労継続支援」については必ずしも手帳は必要ないそうです。病院でなんらかの診断がつけば利用できる、とのことでした。
今後の課題は「手帳も診断もない”グレー”の子はどうすればいいのか」ということですね、とT1の先生がおっしゃっていたのが印象的です。


障害者手帳取得について

私の勤務校では通級指導を受ける生徒には、様子を見てやんわりと手帳取得を勧めています。もちろんこれはへたをすると保護者から強い反発を受けるので、切り出すまでに十分な時間をかけ、保護者と本人に少しずつ探りを入れながら伝えていくという感じです。

1年を通じて、障害者手帳の取得は障害者として生きていくというよりも、そういう選択肢を持つことができるようになる、ということなんだと思うようになりました。

手帳を取得したからと言って必ずしも「障害者雇用」をしなければいけないわけではありません。本人が希望するなら「一般雇用」を選択することもできます。
それでやってみて、もし苦しいと感じたら「障害者雇用」に切り替えることができる。選べる、というのは生きやすさにつながるのではないかと思います。

できるだけ手帳取得につなげていきましょう、という方針になった背景には離職率の高さと、その後の2次障害へのリスクが高いことがあります。

通級指導を受ける生徒は、人とうまくコミュニケーションが取れなかったり、人と同じ速度で作業するのが難しい生徒が多いため、一般雇用で就労しても、多くの場合続かずに辞めてしまうケースが多い。離職した後は、自信を無くし、家から出られず…というのは、もっとも考えたくない結果ですし、2次障害としてウツなどを発症してしまう心配もあります。

どんな形でも、自分の力で収入を得続けていれば、社会とのつながりも切れることなく続いていきます。
そういう意味でも、できるだけ離職せず仕事を続けられるよう、自分に合った就労スタイルを選ぶ、選べることがとても大切だと感じています。

続きます。







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