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まちを知る場

愛媛県八幡浜市には、歴史資料館や博物館の類いがありません。
その代わり、市立図書館の一角に「郷土資料室」があります。

資料の展示によって郷土を学ぶ機会を提供する場なのですが、展示資料のほとんどは郷土の偉人・二宮忠八についてのもの。
これでよいのでしょうか。

二宮忠八は明治から昭和の初めにかけて活躍した実業家で、有人飛行が可能な構造をもった飛行機模型を世界に先駆けて発明していた人物です。
類い稀な先見性をもち、勤めていた製薬会社でも抜群の業績を挙げていた彼が郷土の偉人として称えられることには何の異議も無いのですが、彼の生い立ちや功績から「八幡浜」というまちの姿や歴史について学べることには限りがあります。

“柑橘王国”と呼ばれる愛媛県の中でも随一の温州みかん出荷量を誇る八幡浜の柑橘産業は、どういう経緯で発展してきたのか。
日本に数ある水産港湾都市の中で、八幡浜にはどのような特徴があるのか。
じゃこ天、削りかまぼこ、八幡浜ちゃんぽん、といった特産品・名産品はどのように生まれたのか。
まちの産業や暮らしについて、気候や地形などの地理的特徴、歴史的背景と結びつけながら体系的に学べてこそ、まちを知る場としての役割を果たせるものと考えます。

一人の偉人の紹介に郷土史を代表させる「郷土資料室」の姿に、私は違和感を覚えています。


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