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チームを爆発させるには、ビジョン・価値観・スキルの融合点を見つける

「データ分析×人×ビジネス」の軸で記事を書いています。

本記事では以下のことを説明していきます。

  • ビジョン、価値観、スキルとは何を意味するか

  • チームの力を最大化するにはこれら3つの融合点を見つける必要がある

  • ただし、実際にはどうやっても融合点が見つからないこともある

  • スキルレベルの違いによっても力は一点集中しない

ビジョン

この言葉は多くの文脈で語られますが、表面的な言葉にとらわれないようにした方がいいと思います。例えば、ビジョンに近い言葉として「夢」「実現したいイメージ」「理想像」「目指すべきもの」etc. 色々な表現があると思います。いずれもビジネスの場において「チームの力を最大化する」というような意味合いでは、「各人のベクトルが中心に向かう何か」くらいのイメージで捉えたほうがよいかもしれません。

ビジョンとは、各人のベクトルが中心に向かう”何か”とイメージしよう

価値観

これは簡単にいってしまえば「好き/嫌いの基準」くらいの捉え方でいいと考えています。話を日常的なことにして、ランチにオフィスの外へ食べに行こうと数名で出かけたとします。大袈裟ですが、この際に「たまには贅沢なランチを優雅に楽しもっか」というのがビジョンだとします。そうなると、最初はそれに近しい選択肢を数人が言い出しますね。これが各人の価値観が中心(贅沢なランチを楽しむ)へ向かっている状態なわけです。

ただ、ここで誰かが「フランスのフルコースを食べたいから**へ行こうよ」と言ったとします。この時、別の誰かは「フルコースは重たすぎ(食べきれない)」と思うかもしれませんし、また別の誰かは「さすがにそれは高すぎ(そんなお小遣いはない)」と思うかもしれません。これが価値観の違いです。

スキル

前述した価値観と関連しますが、意外と見落とされがちなのがスキルの違いです。一概には言えませんが、価値観の違いというのはスキルレベルの違いからくるものも多かったりします。先の例でいえば「フルコースは重たすぎ」というのは、食べられる量(大食いのスキルレベル)の違いからくるものでしょう。また「さすがにそれは高すぎ」というのは、ランチ1回に支払えるレベルの違いからくるものでしょう(例えば会社からの支給が無限にでるなら、こういう意見は出にくいはずです)。

ビジョン・価値観・スキルの融合点

さてチームの力を最大化するということは、核爆発を起こすようなイメージといえます。簡単に補足すると、ウランやらプロトニウムといったものが中心にあり、そこに向かって均等に力を同時に加えてあげると「ドカン!」といくのが核爆発の仕組みです(厳密な説明ではありません)。重要なことは

  • 各人の力が(力のベクトルが)ビジョンという中心に向かう

  • それが同程度の力で、同じタイミングでぶつかる

という2点です。つまり、多くの書籍で「経営とはビジョンを示すことが重要だ」みたいなことをいうのは、会社レベルでは組織が、部のレベルでいえば各課が、もっと少数のチーム単位なら各人が「同じところを目指せるものを示す」ということです。一つだけ補足すると、示すだけではなく、示したものが「誰もが向かいたくなる」ものになってなければならず、そしてそれは「何度も繰り返し説いて、議論して、業務を通じて体感しながら」納得されていくものだということです。少し極端な言い方をすれば、素晴らしい(ように見える)ビジョンを示しても意味はありません。

そして、さらに事を難しくしているのが「融合点」というものです。実際にはビジョン、各人の価値観、各人のスキル(スキルの違いや、同じスキルでもレベル感の違い)は「立体的」かつ「多面的」なものです。

3つの融合点は立体多面的である

この図では、あるビジョンが「中心に立つ”塔”のようなもの」として描かれています。これが第一の曲者で、現実には1センテンス程度の言語で表現されていますが、これらは基本的に抽象的な表現になっています。つまり、抽象度の高い表現というのは「深い意味があるが、その意味を読み解くには様々な解釈の視点をもったうえで、つまるところ”こういうことだろう”という考える余地がある」という性質をもっています。簡単にいえば、人によって解釈が異なりやすいということです。これはメリットにもデメリットにもなります。

とにかく、ビジョンが塔のようなものであるということは、誰がどういう視点で見るかによって見え方が違うということです。だからビジョンを理解する、自分事として捉える、といったことは前述したように「何度も繰り返し説いて、議論して、業務を通じて体感しながら」納得していく必要があるわけです。

今度は価値観とスキルの話をしていきます。あるビジョンが示されたとき、ある人の価値観とスキルのベクトルも立体的で、かつ一方向的な矢印のようなものでもないという点が重要です。上図で示したように、(私も見たことないので分かりませんが)雲というか霧というか、真夏にアスファルトが熱せられて歪んで見えるかのような、そういうものなのだと想像しています。

冒頭にランチの話を出しましたが、実際に会社のビジョンとかのレベルになるとこういう複雑なものになっていくのだと思います。また、そこに所属するスタッフらも多様性に富んでいるので、図で示すような4人の「モヤモヤが重なる赤い部分」を見つける以上に、それを見つけるのが難しくなるでしょう。場合によっては(とはいえ、けっこうな頻度で遭遇する)各人の価値観とスキルの「モヤモヤ」がビジョンにどうやっても重ならないことがあります。あるいは、他の誰かとの「モヤモヤ」と交わらないようなこともあります。より簡素な言葉で言ってしまえば「ビジョンに共感できない」「価値観が合わない」というやつです。結論として、本当に重なる/交わる部分がない人は「チームに入れない/入らない」のが吉だと思います。それを無理しても、誰も幸せにならない。

マネージャの仕事は融合点を見つけること

そのチームのビジョンを示すことは前提になるのですが、本当の意味でのマネージャの仕事というのは融合点を見つけることだと考えています。より正確にいえば、自分の意志として表現したビジョンは「できるだけ変えずに」、各人の価値観とスキルのモヤモヤの融合点を「各人との対話の中で導きだす」という操作になります。逆にいえば、これを一定の時間をかけても融合点が見いだせない場合、ビジョンが何かしらの観点で間違っており、修正が必要かもしれません。あるいはもう1つの可能性として、どうやっても共感できない個人はチームから抜けてもらう勇気が必要です。これは価値観の違いを排除するみたいなことではなく、相手の価値観を尊重し、みんな(該当メンバーがそろうチーム)の幸せを追求することを重視するからだということを忘れてはなりません。 ※みんなで仲良くするのは目的ではない。

非常に難しい仕事なのですが、これは数学の最適化問題のようでもあります。ビジョンは固定しつつ、各人の価値観とスキルのモヤモヤが重なる/交わる融合点が最大になるように、その人その人の”聞きたい言葉”で投げかけ、時には意見を聞きながら投げかけのスタイルを工夫するようなものです(融合点を最大化するために、各人との対話スタイルを最適化するとでもいうべきでしょうか)。

とはいえ、ビジネスには時間の限りがあります。だから、時には強引に「指示」をしたり、多少見かけ上になっても「納得しなくても、理解したレベルで進めさせる」ということも必要です。これが、何度か繰り返したように、「何度も繰り返し説いて、議論して、業務を通じて体感しながら」納得さるという仕事内容なわけです。

ちなみに、ビジョンというのはそうコロコロ変えていいものではないと思っています。しかし世の中の企業を見渡すと、成長のステージによってビジョンを変えているケースも存在しています。組織というのは”生き物”なので、時代の変化によって変わらない根本的なところを残しつつも、柔軟にアップデートを取り入れたほうが良いこともあるからだと思います。これが、ビジョン、人の価値観とスキルの融合点を見出すために工夫するということの一端といえるでしょう。

スキルレベルは見落とされやすい

最後にスキルレベルの違いに着目しておきます。これは非常に見落とされやすいことで、ビジョンは素晴らしく、チームメンバーのみんなが共感してくれている、でも成果が出ないというようなときに疑うとよいでしょう。

これも少し極端な例をあげてみます。

例えば、水泳のオリンピックで金メダルを獲るというビジョンを掲げているとしましょう。一定以上の水泳部ならば、将来的にそういうビジョンをもっているはずです(ここではメダルをとることはビジョンではないのでは?というのはつっこまないことにします)。これは選手であれば誰もが思い描きたくなるでしょうし、努力もします。しかしながら、どう頑張ってもオリンピックレベルにはなれない人もいます(人より才能があって、人より努力する人にはなかなか敵いません)。ビジョンも価値観も融合点が見いだせても、スキルレベルが「別の次元にある」と、これまた「3つの融合点」というのは見いだせないわけです。

そして残念なことかもしれませんが、世に出ているチームビルディングで語られているようなメソッドは「このスキルレベルが一定以上に高いメンバーがそろっている」ことが前提に書かれています。これまた極端な例を出してズルいかもしれませんが、私が特殊部隊(ネイビー・シールズ)の中でパフォーマンスを出そうとしても、土台無理な話です。これは私がいかに素晴らしいマインドをもっていたとしても、特殊部隊として活躍する基礎スキルがないわけですから、ビジョンに真の納得と、価値観が交わっていても彼らの輪には入れないのです。そして、そんな私を引き上げる優秀なリーダーやマネージャというのは存在しない(少なくとも時間がかかる)。

さらに、追い打ちをかけるようですが強いチームをつくるためには、結局のところ強い個々が存在している必要があります。文学には疎いのですが「三人集まれば文殊の知恵」という言葉があり、これは「凡人でも三人集まって相談すれば、すばらしい知恵が出る」という意味らしいです。もちろん、そういうこともあるのですが、これは立ち向かう物事(実現しようとする何か)のレベル感によるという基本的なところを見落としてはいけない気がするのです。やや乱暴にまとめてしまうと、

  • ある程度、似通ったスキルレベルの人たちが集まって

  • その人たちがある程度の現実解を導き出せるレベルの問題を解決できる

  • そういう問題の先にあるビジョンを定めないといけない

ということかと思います。これも言われてみれば当たり前なのですが、世の中にはあまりにも「大きく描きすぎて、大きく動けない」というケースが多い気がするのです。

たまには大きく描き、実際には小さく刻んで前へ進む

壮大なビジョンを描くことは大切だと思います。

ただ、そういうのは例えば3ケ月に1回とか、自分たちの在り方を振り返る意味でやった方がいいかもしれません。油断すると人間というのは「やれることをやる」からです。だからチームとしての基準は常に高く持ち続けたほうがいいと思うのです。

そう思う一方で、1週間や1ケ月レベルでは自分、もしくは自分たちのスキルレベルを冷静に見つめ、受け止めるべきです。そのうえで、現実的に乗り越えられる(”健康にわるい影響をおよぼさない範囲”で無理する程度の)スモール・ビジョンをもち、刻んで前に進むしかないでしょう。急がば回れ、継続は力なり、です。




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