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弟が結婚を諦めてると思われたのでは、と思ったとき、私は弟を「弟」と認識していることに気付いた

「あー…………なるほど、弟さんは◯◯(長女の名前)ちゃんたちを自分の子供みたいにかわいがってるんだね〜」

私の弟が長女に誕生日プレゼントをくれた、長女にも次女にもすぐ何か買おうとする、という話をしたときの、ママ友さんのこの発言の「あー」と「なるほど」のあいだに発生した間(ま)に、私はなんだか違和感を感じていた。

それから1か月くらいたったころ、ふと
「あれは『弟さんは(結婚できないだろうから)◯◯(長女の名前)ちゃんたちを自分の子供みたいにかわいがってるんだね〜』という意味だったのでは……?」
と思い当たった。

障害者雇用促進法と障害者年金について調べていたときだった。

弟は二十代後半で、地元で仕事をしている。
私が子供のおむつを替えようとすると、さっとおむつ替えシートとおしり拭きを渡してくれるような気配りができるいいやつだ。

会社でも可愛がってもらっていて、コロナが流行る前は週2〜3ペースで会社の人と飲みに行ったり、土日にでかけてたりしていたらしい。
五歳児が爆笑するようなチープな下ネタで笑っちゃう、少年のような一面も持ち合わせている。

いうなれば、スターバックスの店員さん並みのホスピタリティがある、愛されキャラのクレヨンしんちゃん(アラサー)。


そんな感じで普通に生活してるおバカで優しくかわいい弟なので、うっかりすっかり意識の彼方にいっていたのだけど、弟には脳性麻痺という障害がある。

脳性麻痺、というのは妊娠中や出産時、もしくは生後1か月の間に、脳損傷などが原因で起こる、運動困難と筋肉のこわばりを特徴とする症候群である。

症状の程度や出方は様々で、接していてもほとんどわからない人もいれば、全身の筋肉のこわばりが強く、まったく体を動かせない人もいる。

弟はへその緒が首に巻き付いて呼吸ができず、仮死状態で生まれてきた。

その時の低酸素脳症が原因で脳性麻痺と診断され、「この子は一生歩けません」と言われていた。
手の緊張も強く、文字はかなり震えるし、はさみは危なくて使えない。

が、リハビリの甲斐あって不自然な歩き方ではあるが歩けているし、小学校の時に通っていたパソコン教室をきっかけにパソコンにも触れ、職業訓練校でも学び、私よりパソコンに詳しい。

高校こそ特別支援学校の高等部であったが、保育園から中学まで地元の学校に通い、友人も多い。

中学の修学旅行時、登山の日にちょっと熱を出してしまい、念のため登るのはやめておこうか、となっていた弟を
「いや一緒に行きたいし」と友達がかわるがわるおんぶして登ってくれた、という話を聞いたときは「めちゃくちゃ友人に恵まれてるやんけ!」と涙した。

何がすごいって、その話を弟から聞いた母が、その友達のお母さんたちに電話をしたら一様に「え、うちの子そんなこと一言も言ってなかったけど…」という反応で、
「こんなことあったん?」と聞かれたお友達たちはみんな「いや、友達と過ごしたくて当たり前のことしただけやし、わざわざ話さんよ」というテンションだったらしいのだ。

漢……!!!!

かっこよすぎてありがたすぎて、崎陽軒のシウマイをもって地元に帰り、各ご家庭にお礼に伺う勢いだったのだけど、急に知らん女が家に来て
「あ…あの……弟が大変お世話になりまして……!」と挙動不審をこじらせても超迷惑だと思ってやめておいた。

私の中学の時など、給食当番で3人の牛乳係だったのに、毎回残りの二人がケースに半分しか入ってないほうを持っていくので、
私一人でフルに入ったケースを持っていくハメになる、という地味な嫌がらせをはじめとした、本当に地味~なイジメを受けていたというのに。

9年の差があるとはいえ、同じ中学に通っていてこの差はなんだ?
それもこれも弟がいいやつだからである。しかたない。

とにかく、だいたいの面において弟のほうが素敵だし、めちゃめちゃいいやつなのだ。

だから、ふと「もしかしたら『弟は障害があって結婚できないだろう』とママ友さんに思われたのではないか」と思ったとき、
「そうか、普通の人は障害があるって聞いてたらそう思うのかもしれない」と思うと同時に、その発想が1ミリもなかった自分になんだかびっくりし、
「私は弟のこと、『障害者である弟』じゃなくて、ただ単に『弟』だと認識していたんだな」と気づいた。

障害者が弟なんじゃなくて、弟にたまたま障害があるだけ、というか。
伝わらないかもしれないけど、物事の認識の順番が、たぶん、近くに障害がある人がいない人とは違うんだろうなって。

そもそも私が勝手に「そう思われたんじゃないかな?」って思ってるなんだけど。

とにかくうちの弟は世界一の弟なんです。
無意識に私がそう思ってたことに気づいて、一人で勝手にびっくりした、というだけの話なんですけども。

結婚しようがしまいが、そもそもどっちでもいいし、ずっと楽しく生きてってほしい。
姉はなんでも力になるよ。

あ、ごめん、今「なんでも」って言ったけど、お金はあんまないや……。
そこだけほんとごめんな……。


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