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2020ボクシング部早慶戦総括


0 はじめに


K-ProjectのNoteをご覧いただき有難う御座います。

今回から、K-Projectの活動の一つであるProject Teamsの活動について、コンサルを担当した部活との試合までのミーティングや、施策実施の詳細をこちらで紹介していきます。

なぜこのような企画をスタートさせたかという話を少しさせてください。


20200523 K-pro事業計画 運営メンバーMTG用


K-Projectは、学生スポーツ界のさらなる発展のために活動をしています。

我々が描いているのは、アメリカの大規模スポーツコミュニティ、NCAAの世界観です。10万人収容のメガスタジアムが満員の観客で埋め尽くされ、その中心で世界トップレベルの学生アスリートたちの試合が行われる。特筆すべきは、試合の広報、運営のすべてを学生で賄っている。そんな世界です。

特に運営管理を学生が担うという点に、このビジョンの肝があります。

多くの日本のトップアスリートは競技に考えが囚われている人間が非常に多い。目の前の試合で最高の結果を残す、それが全て。それはむしろアスリートとしてあるべき姿なのかもしれませんが、K-Projectの考え方は違います。

我々K-Projectは、多くのアスリートにとってかけがえのないスポーツを通じて、将来社会の先導者として活躍できる能力、考え方を養うことができると考えます。

スポーツの場では、誰もが本気です。その熱量の相乗効果によってあらゆる物事に緊張感が生まれ、他の何物でも得ることができない経験ができると確信しています。

その第一歩がこのProject Teamsの活動です。

慶應義塾體育會の競技力と體育會生の運営力を向上させ、いつか辿り着きたいスポーツ界を体現する、学生スポーツの先導者となるための活動にしていきたいと考えています。


前置きが長くなりましたが、初回は2020年12月5日に開催された體育會ボクシング部の早慶戦のご紹介です。読者の皆様の活動の一助となれば幸いです。



0-1 體育會ボクシング部について

概要

創立 1925年
部員数 20人
主な戦績 関東大学ボクシングリーグ2部 準優勝(2019)
普段は日吉キャンパスの蝮谷道場にて活動を行っています。

早慶戦について

会場 新記念館(2020年創立)
試合結果 勝利
観客数 ライブ配信アーカイブ5500回再生(例年100人ほどの観客数)
試合への予算 約100万円


観客数の数値だけ見て頂いてもわかる通り、大成功の早慶戦であったと言えます。


Phase1 

1 戦略立案


1-1 ケープロとボクシング部、関係のキッカケ

今回ボクシング部のコンサルを担当させて頂いたのは、ボクシング部担当者の「ライブ配信」をしてみたいという希望がキッカケでした。コロナウイルスの影響で多くの部活が無観客試合を余儀なくされる中、是非自分の部活でもライブ配信に取り組んでみたいというボクシング部の意向でした。

このライブ配信を実現させるべく、今回早慶戦のお手伝いをさせて頂くことになりました。


1-2 コンセプト策定

Project Teamsの部活コンサルでは、まず初めに目標設定を行います。K-Projectではこの目標のことを、「コンセプト」と呼んでいます。

「コンセプト」とは、何のために試合をするのか、ということの言い換えでもあります。これが定まっていなければ、どのような施策を何のために打つのかが決まらない上に、試合後に次に向けた反省ができません。目的、目標があるからこそ、どこがどのようにまずかったのかを振り返ることができます。

色々な部活の広報担当と話していると、このフェーズを意外とおざなりにしている部活が多いように感じます。まずは、目標設定を簡単でもいいので設定することが大切です。

このコンセプト決めは、部の担当者とK-Projectのコンサル担当のフランクなコミュニケーションからスタートします。「ボクシング部の早慶戦って例年どんな感じなんですか?」「今の部の雰囲気ってどうですか?」「早慶戦の目標とかって決まってます?」など、の質問に答えて頂きながら、部員が早慶戦に何を求めているのか、試合結果以外の動機を見つけ出します。

今回のコンサルは、当初ボクシング部からライブ配信の実現の希望を受け開始しましたが、コンセプトを決めた後で、ライブ配信がこれらのコンセプトを達成するために本当に必要な施策かどうかを改めて検討しました。施策が目標より前面に出ると、どこかのタイミングで必ず、取り組む人間同士の理解のズレが生じます。目標に対して適切な打ち手であるかどうかを、立案段階で丁寧に確認することが重要です。


今回のボクシング部のコンセプトは以下の三つでした。

①部員に対するモチベーションの向上
②OBへの恩返し
③代表としてリングに立つことの誇りや喜びを伝える


それぞれ解説をしていきます。

①これは、勝利をすることで部内での雰囲気を向上させていこうということです。ヒアリング段階でのボクシング部はコロナの状況下で雰囲気が下がり気味なところがありました。
元々ボクシング部の早慶戦は内機的な動機が強かったため、まずは部員が勝利によって自らを鼓舞できる、そんな舞台を用意しようという趣旨です。

②こちらは、読んで字の如くです。普段から活動を最も近くで支え応援してくれるのは部のOBであり、彼らに勝利という結果を届けることで恩返しをしたい。これは部員の共通した強い気持ちでした。

③ボクシングにおけるリングは聖域です。早慶戦に代表として立てることは、非常に誉れなことであり、ボクシングならではのこういった魅力を伝えたいというものです。
では、誰に伝えたいのか。そもそもこちらのコンセプトは、来年以降のチームの戦力を危惧したものです。大学でボクシングを究めるという選択肢は比較的少ないため、次世代の部活を担う高校生に、その選択肢として慶應大学に魅力を感じてもらうためにこういったコンセプトが生まれました。


1-3 施策考案

次の段階では、それぞれのコンセプトに対して、どのような施策を打つかを検討します。ここでは、ブレインストーミングが重要になります。コンセプトに対して効果的だと考え得るすべての施策を挙げ、実現可能性は全てのアイデアが出た後に検討します。こうすることで、思考の幅が狭くなることを防ぐことができます。


①部員に対するモチベーションの向上

モチベーションの向上を、部員の試合への気持ちを高めることで促そうと考えました。そのため必要なことは、「部員が見て気持ちが高まる何か」を部員に見えるようにすることです。

今回投稿媒体はインスタグラムで想定しています。ボクシング部のメインプラットフォームであり、最もフォロワーも多いためです。

・あなたにとって早慶戦とは。部員のボクシングに対する愛情を投稿。
・コロナ禍での辛い練習シーンの記録を投稿。⇒練習シーンを集めた早慶戦モチベーションビデオに変更。
・他部活への宣伝協力依頼(試合カウントダウン。注目度拡大によって、部員に試合を意識させる)


②OBへの恩返し

OBに、勝利する瞬間を見届けてほしいというのが部員の願いでしたので、どのようにその姿を届けるかどうかを検討しました。

・ライブ配信


③代表としてリングに立つことの誇りや喜びを伝える

先述の通り、高校生がメインターゲットとなります。高校生ボクサーが何を見て慶應ボクシング部に魅力を感じるか、その視点で考えました。

・ライブ配信
・ボクシングの魅力を投稿(高校生にボクシングの良さを再認識してもらう)
・カウントダウン投稿(試合までのリマインド的意味合い)


かくして、目標と施策が確定しました。



Phase2

2 実行


試合まで一か月ほどの時期にすべての立案を終え、実行フェーズへと移行をしました。今回の施策は、インスタグラム投稿系統とライブ配信で大きく分かれたため、投稿系統は画像制作の経験も豊富で既にインスタグラムを日頃から管理していた部の担当者の佐藤さんに一任し、K-Projectはライブ配信を主に担当しました。


2-1 画像、動画投稿

製作は佐藤さんにお願いをしました。部として広報活動に佐藤さん以外の人間を割けない状況だったため、一人で製作から投稿までを担当して頂きました。彼女の奮闘無しに今回の成功はないと言えると思います。

試合までの投稿を計画することは、とても重要です。なんとなく試合の1週間前になって最初のカウントダウンを打ち、今までの良さげなカットを使ってイケてる画像や動画を製作して載せてみて、残り三日からまたカウントダウン、、、

インスタグラム投稿は単体でどれだけ映えるかが問われがちですが、試合までの各投稿に抑揚をつけることで、試合までのピーキングを行うことも可能です。ピーキングというのは、一番大切なところに最高のパフォーマンスを持っていくことで、スポーツの場でもよく使われます。これはインスタ投稿でも同じことが可能です。

こちらは慶應義塾大学の男子ラクロス部のインスタグラムですが、その理想といえます。試合が近づくにつれ写真から動画へと切り替わり、より濃密な内容へと変化していきます。見ている側も試合までに気持ちが高まってきます。

こういったピーキングを行うために必須なのがスケジューリングです。今回のコンサルでは、K-Projectからスケジュール表のアイデアを提供しました。

ボクシング部2020企画書

こちらを基に投稿をして頂きました。ボクシング部のインスタかっこいいね、なんて声がちょくちょく聞かれたのは非常に喜ばしいです。


2-2 ライブ配信

冒頭でも紹介しましたが、今回のボクシング部のライブ配信は結果として多くの方に見て頂くことができました。アーカイブ動画の再生回数は5500回を超えています(2021年1月15日時点)。どのようにして動画に辿り着いたかを追うことはできませんが、この数字は間違いなく事前の広報活動の成果といえます。

当初ライブ配信は学内の放送研究会というサークルに協力を依頼する予定でした。配信機器を扱ったことがない学生のみでライブ配信を行うことは技術的にかなり難しいため、K-Projectはかねてより放送研究会に相談をしています。結果として今回は外部委託することができましたが、ライブ配信にチャレンジしたい部活の方がいたら、是非K-Projectに相談して頂きたいです。

今回ボクシング部が外部委託を依頼したのは、NHKグローバルメディアサービスでした。90万円という高額の費用でしたが、部として今年度は早慶戦に注力しようという方針があったため、ハイクオリティの配信をすることができました。

ライブ配信に関してK-Projectがサポートさせて頂いたのは先述のコンセプト①にあった、他部活への宣伝協力依頼です。

どうせやるならより多くの人に見てもらいたい、また試合までに注目度が高まっていることを選手に実感してもらいたいという希望から、このような提案をさせて頂きました。

今回の宣伝は、広報期間を通じて計11部活(ソッカー部、アメフト部、バスケ部、アイスホッケー部、ハンドボール部、男女ラクロス部、端艇部、端艇部カヌー部門、水泳部水球部門、ホッケー部)にご協力を頂きました。部内のリソースだけではコンタクトを取り切れない部活もあるため、たくさんの部活から人が集まるK-Projectならではの強みを、こうした場面で提供することができます。

私の見る限りでも、試合前の3日間はインスタグラムのストーリーでボクシング部のカウントダウンが数多く目につき、多くの人がボクシング部早慶戦と当日のライブ配信の存在を知ることになったと思います。

同時間帯に同じ画像、内容のものをストーリーにてリポストしてもらう、「ストーリージャック」という手法ですが、何度も同じ絵がストーリーに現れたら皆さんも「なんだろう」と思って思わず見てしまいますよね。

こうした戦略が、5500回ものアーカイブ動画の再生に繋がりました。



Phase3


3 結果と振り返り


今回の早慶戦は見事勝利で終わりました。スポーツの試合ですので、当日配信を見てくれる人が増えるためには、勝利することは一定の条件といえるかもしれません。

それではコンセプト毎に振り返ってみます。


①部員に対するモチベーションの向上

結果⇒○
ストーリーの拡散によって部員のモチベーションも高まっているという情報も受け、これらの施策は選手のパフォーマンス向上に繋がったと言えます。投稿の内容も、今回の早慶戦広報活動を通じて話題に上ることが増えたようです。


②OBへの恩返し

結果⇒○
ライブ配信は高精度なものを視聴者に届けることができ、試合の中継としても高いクオリティを発揮しました。いつも近くで応援してくれるOB用のパブリックビューイングも行うことができ、勝利を掴むその瞬間を届けることができたことは、部員にとって大きな達成感に繋がったようです。


③代表としてリングに立つことの誇りや喜びを伝える

結果⇒△
ライブ配信や事前の広報活動により、一定の高校生に試合があるという情報を届けることができました。

一方で、当初具体的な高校名をリストアップしライブ配信のリンクを配布する予定でしたが、こちらは完遂ができずでした。試合前の広報活動に手がいっぱいになり、そちらまで終えなかったことが原因です。我々のほうでも広報に意識が行きすぎ、リマインドできなかったという反省があります。


3-1 来年度以降の反省事項

・モチベーションUPに対しての広報が、オリジナリティの無い内容になってしまった

部員に、ボクシングに対する思いを語ってもらう投稿によって、モチベーションの向上を狙いましたが、既に様々な部活が同様の内容を投稿しています。そもそも、アスリートのモチベーションとは何だろうか、具体的にどのようになるとパフォーマンスの向上に繋がるのか、そういったところを根本から見直す必要があるかもしれません。


・ライブ配信のコンテンツが試合中継しかなかった

視聴者が多いスポーツ中継から学び取れることは、間でCMがあったり、ルール解説VTRが流れたり、選手のインタビューや詳細情報が共有されたり、ハーフタイムにダンスパフォーマンスがあったり、視聴者を飽きさせない工夫、より試合が面白くなる工夫が施されていることです。

制約が多い時期ではありますが、視聴者の感情に寄り添った広報活動を展開することが今後はより必要になると考えます。

こちらは2020年水泳部の早慶戦ですが、ライブ配信中に応援画像を流し、「この画像をスクリーンショットしSNSで拡散して、選手を応援しよう」という呼びかけを行い、より多くの人をライブ配信に流入できるような施策を行いました。水泳部の試合アーカイブ動画は1万回以上も再生されています。


・高校生の視聴に関して、確実に見てもらう工夫を施せなかった

来年度以降、より戦力を高めるためにと打ち出した③のコンセプトでしたが、結局見る人は見る、自然発生的な観戦を期待するのみになってしまいました。広報活動にばかり注力した結果、重要なコンセプトの一つをおざなりにしてしまった形です。

スケジュールで広報活動を整理した通り、やるべき施策を優先順位に基づいて整理し、だれが何をいつまでにやるのかを明確にして臨む必要があるでしょう。場合によっては、それらの施策を実行するために必要な人数を概算し、予めその人数を広報活動に割けるように、何らかの措置を講じておく必要があるかもしれません。

来年度以降はこうした反省を生かして試合への準備を進めていくつ必要があります。


4 まとめ

コンセプトを設定しておいたおかげでいくつかの反省事項が見つかり、来年度以降の課題も明確になりました。来年度のボクシング早慶戦ではこれらの反省事項を基に、より長い期間をもって広報活動にあたりたいと考えています。

しかしながら、明確に目標設定と施策の考案を行ったおかげで、これまで想像もできなかった多くの人に試合を観戦してもらうことができました。ボクシング部にとっては大きな一歩であり、ここから益々塾生が注目する早慶戦になっていくことと思います。

K-Projectでは、このようにして一つ一つの部活と広報活動を共にし、慶應義塾の體育會をより強く、そして盛り上げていきたいと考えています。この活動に共感し、一緒に活動を進めてくれる人材を募集しています。皆さんのご連絡をお待ちしております。

Mailto:tcejorp.k@gmail.com


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