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無知の知

昨日、そのまま寝てしまって目覚めてからは、もう寝るのが怖くなって朝まで起きておくことにしました。夜を食べずに寝たので、朝が近づくにつれてお腹もすいてきました。マイケルがケーキをつくってくれていたので、それを頂きました。

Mar. 20

朝はいつもより少し早く家を出ることができたけど、結局1本早いのに乗ることはできなくて、いつも通り同じ電車に乗ることになりました。

今日も途中でエレンがバスに乗ってきて、また横に座ってくれました。音楽を聴いていたので、いくつかおすすめのスウェーデンの歌手を教えてもらいました。Veronica Maggio、Mares、Ulrik Munther、どれも聴いてみましたが全部好きでした。初めてのはずだけど、どこかで聴いたことがあるような感じがしました。

それからエレンのことをもう少し聞いてみると、彼女は高校を卒業した後、大学には行っていないけれど、いくつかの講義(?)を受けていて、それを通して先生になるための勉強をしているみたいです。以前みていたビデオもそれに関するものだと言っていました。

そうして勉強と並行に、この学校で6歳児の子たちを見ています。なぜ先生になりたいのかを聞くと、難しい質問だな、と言いつつ、子どもたちといるのが幸せであること、彼らが成長していく/学んでいく過程を近くでみられることは本当に楽しいことを話してくれました。そう話しながら、昨日もそうだったけど、忘れずバスの降車地点前でボタンを押してくれました。

今日こそ高学年のクラスをみることができると思っていたのですが、今日は保護者と話すために高学年の先生たちは忙しく、都合があまりよくないと言われました。

もしかすると予定のすりあわせで齟齬が生じているのかもしれない、と思ったけれど、明日には、と言ってくれたので今日はこれまでと同じように8歳児の子たちをみることにしました。

子どもたちは最初、スウェーデン語の勉強をしていました。やっぱり、7歳児の子たちに比べると、教科書の内容もぐんとレベルがあがるんだなと昨日と比較して感じました。

そしていつものようにまた途中で踊ります。見ていると、ゲームセンターのダンスゲームを学校でしているような気持ちになれます。また、昨日、8歳児のクラスでは換気をしていないと思っていたけれど、私が気づいていなかっただけで、換気をしているようでした。

そのあとは、みんなでダウン症の女の子の動画をみました。今日これを観たのは、明日、3月21日がWorld Down Syndrome Dayといって、世界ダウン症の日となっているからです。

ダウン症は21番目の染色体が3本あるために生じる先天性のもので、誰でもなりうる可能性をもつものです。その数字にちなんで3月21日がこうした日となりました。こうして世界が一体となることを想うと、すごくぞくぞくします。

以前先生たちが、今週木曜日は左右違う靴下を履くことを説明する際、この日のことも教えてくれたのですが、そのとき私は全くの無知で、理解することができませんでした。日本ではもう春休みに入ってしまっているため、教育機関でこうした教育は行われてこなかったことに気が付きました。

今日のお昼は、ミートボールがありました。このトマトにかかっているバジルソースが私は大好きなのですが、エリアナは生のトマトは好きだけど、このソースはあまり好きじゃないと言っていました。

子どもたちはミートボールとパスタは大好きみたいでたくさんとっていたけど、野菜はあまり好きじゃないみたいです。ケニャが嫌そうに1枚だけキャベツをとっていたのが印象的でした。

今日もミートボールは2種類あって、ベジタリアンのためのものも用意されています。シェフに、この学校にベジタリアンの子はどのくらいいるのか聞いたところ、5%ほどだと言っていました。私は大学生になるまで周りにベジタリアンの人がいなかったため、5%いるだけでもすごく驚きました。

エリアナはいつも1人で何かをしているので、気になって話しかけてしまいます。(笑)今日は竹馬をしていました。私も挑戦してみたけど、エリアナの持ち方では全くできません。私がやっとのことで日本で竹馬をするように乗ると、すごく驚いていました。

そのほかに、今日は3人組でジャンプしまくる遊びだったり、sail manという手遊びをしていたり、私が知らないものをたくさん見ました。新しい遊びを知っている子は、すぐにみんなの人気者になるみたいです。ナーラはみんなに囲まれていました。

お昼休憩のあと、教室へ戻るとまたiPadをしていました。私はiPadが本当に子どもたちにとって良い教育媒体なのか気になって調べてみたのですが、賛否両論あるみたいです。そりゃそうか。先生たちは、子どもたちがiPadを使う時間を厳しく決めていて、iPadをつかわないときは金庫にしまわれます。

そのあとは、スウェーデン社会についての勉強でした。スウェーデンの北方に住むサーミ族と呼ばれる小数民族のお話でした。調べるといろいろな記事が出てきて、アナと雪の女王に出てくるクリストフも、サーミ族だということが分かりました。

サーミ族は昔ひどい迫害をうけていて、それは映画にもなっていました。いつか時間をとって観てみようと思います。日本にも、アイヌの人々がいます。そういえば、渡航前にあったアイセックのイベントで、同じように海外インターンシップに参加する子が、マイノリティをなくしたい、と強く言っていたことを思い出しました。

私は今日まで自分がどうすることもできない理由で孤独を感じた経験はなく、先天的なハンデもなければ、日本人だからとけなされた経験もありません。でもそれは本当に恵まれていただけだと思います。当事者の気持ちになることは難しいけど、自分がされて嫌なことは分かります。もっと、相手の気持ちを理解できる人間になろう、とつくづく思いました。

今日のおやつはパンとバナナで、今日のパンは格別に美味しかったです。くるみやかぼちゃの種が練り混ぜられていたり、まぶされていたりして、いつも以上に食べてしまいました。シェフは本当に天才だと思います。

そのあと、いつもなら子どもたちと外で遊ぶのですが、今日は無理をいってアラビア語の授業を見せてもらうことにしました。イラクやシリアにルーツをもつ子どもたちが部屋に集まっていました。

子どもたちが使っているプリントを見ても何も理解できなかったので、とりあえずアラビア語について調べてみることにしました。アラビア語は右から読むということ、28の文字は、単語のどの位置にあるかで形が変化すること、母音の数が最も少ない言語であること、など、知らないことだらけでした。

私には文字に見えないけれど、子どもたちはアラビア語を一生懸命書いていました。アラビア語はミミズが這ったようにみえるとよく言われますが、英語の筆記体と同じでいくつもの文字がくっついて1つの単語になっているみたいです。先生であるイマッドは、文字が文字をつかんでいる(hold)という表現をしていて面白かったです。

イマッドは他にもいろんな学校に行ってはアラビア語を教えているみたいで、今日水曜日はこの学校に来ることになっているそうです。

あなたも日本語を教える仕事があると思うよ、と言われたのですが、私がスウェーデン語を話せないことを伝えると難しそうな顔をしていました。やっぱり、スウェーデンで、特に子どものいる環境で働くには、スウェーデン語は習得しないといけないみたいです。

プリントはイマッドが用意したものらしく、本当はテキストを渡したかったけど、全員に用意することは難しかったと言っていました。8歳児の子たちの授業が終わった後、教室にやってきた高学年の子たちはアラビア語の教科書を持っていました。

イマッドにお礼を言って、Fritidsの教室に戻ると、今日はなぜか一部の子たちがカラフルな布を羽織っていました。なぜかは全く教えてくれませんでした。

また、明日のWorld Down Syndrome Dayのために、みんなで靴下の工作をしました。子どもたちが色を塗って、先生たちと協力してそれをラミネートし、リボンで結びました。

一部の靴下には文字もかかれていて、みんな平等、もっとユニークであれ、笑顔でいるだけで大丈夫、などといった意味の言葉がたくさん書いてありました。

この日に向けて毎年何か創るみたいで、去年の作品は食堂の前の窓ガラスにたくさん貼ってあります。

おこがましいような気がしたけど、今年が特別になるよう私も何かひと手間加えたいと思い、鶴を飾らせてもらえないか聞いてみました。日本では鶴に「平和」という意味が込められていることを話すと、Why not?と認めてくれました。それぞれ違う、いろんな柄の鶴を飾りました。

学校を出て帰る途中、エリアナの家族に出会いました。エリアナには弟が1人、妹が2人いるみたいで、妹の1人は赤ちゃんみたいです。エリアナはほんとに優しく気の遣える子で、それは長女として3人の弟と妹をみているからなのかな、とも思いました。

***

昨日は少し落ち込んでいて、気持ちもどんよりしていたけど、今日はすごく気持ちが晴れやかでした。私は単純だし、落ち込んだと思ったらすぐ回復するので気分屋気質なところもあるかもしれないとも思いました。

家に帰ってからもやることリストがスムーズにすすんで気持ちがよかったです。エレンに紹介してもらった音楽を聴きながらお風呂に入って、お風呂からあがるとまたマイケルが奥さんと一緒にケーキを作っていました。

その様子を動画にとってみとちゃんに送ると、みとちゃんも笑っていました(笑)ケーキが好きなだけで、食べるために作っているんだと言い張るマイケルですが、絶対ケーキを作る工程も好きだと思います。私はいつものように、上手く写真をとってマイケルに送る役と、1切れ頂いて感想を伝える役を全うしました。

***

今日はいつも以上にたくさんのことを知りました。世界ダウン症のこと、サーミ族のこと、アラビア語のこと。どれも昨日までは知らないことすら知らなかったことでした。

情報社会になった今、スマホなどの機器さえあれば、そこらじゅうに転がっている知識を一定の水準までは誰でもいつでも知ることができるようになっています。

とはいうものの、その知識や情報にいつ出会えるかは環境や状況、運もあると思います。今日は特に、これからも、知ることのできるはずだったことを逃さないよう貪欲でいたいなと改めて思った日でした。


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