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書籍紹介:実力も運のうち 能力主義は正義か?

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書籍名:実力も運のうち 能力主義は正義か? / The Tyranny of Merit
著者:マイケル・サンデル / Michael Sandel
おすすめ度: ★★★★★
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「人種的・性的な不正義は減少してきたというのに、われわれは賢い者と愚かな者をめぐる大きな不正義を抱えつづけるだろう。」

能力主義(能力を持っている人こそ偉いし儲けて当然だという考え方)のせいで、成功者と貧困者が分断されてしまった。

本当はみんなで幸せになるべきなのに能力主義はそれを実現できていない。

これは一体どういうことなのか?という話です。

能力主義的倫理の核心は「人生は自分自身の努力と意思によって100%コントロールできる」と思い込んでいる点にあります。

しか「今の自分」になるためには、どんな家庭に生まれたか、きちんとした教育を受けられたか、その他あらゆるラッキーも多分に含まれているはずです。

つまり「自分の努力だけが自分の人生を決めているわけではない」という事実がすっぽ抜けてしまっているのです。

それによって成功者は「努力したのだからこの結果は当然だ」と調子にのるし、貧困者は「私の努力が足りなかったからだ」と自分を責めることになる。

そして両者の溝は深まり「世界全体が持つ者と持たざる者に分断されてしまっている」と説明しています。

白人と有色人種で入口が分けられていたことに違和感を感じなかったように、今わたしたちはこの「能力主義」の偏見に気づいていない可能性があるということです。

著者はこれに対する根本的な解決方法は「ひとりひとりがこのことを理解し態度に示す」ことだとしていました。


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チームで仕事をしていると、自分よりデキの悪い部下が気になったりします。

そしてそれを「努力が足りたいから」「さぼっているから」と評価しがちです。

あなたのように部下を持てる=それなりに実績を積み上げてきたのでしょうから、そのための努力や工夫も人一倍してきたとおもいます。

その視点から見ると余計に「仕事なのに工夫も努力もしないで仕事ができないなんて甘えだ!」と怒りたくなるのも当然です。

しかし「仕事のデキるあなた」は、果たしてあなたの努力だけの結果でしょうか?

頑張ったから仕事のデキる人になったのでしょうか?

仕事のデキない人は「努力をしなかった」から仕事ができないのでしょうか?

このことを改めて頭の片隅に置いておくだけで、互いのストレスは少し軽減するかもしれません。

ストレスが軽減すれば生産性もあがるかもしれませんし、不要な離職を防げるかもしれません。

改めて考えたいポイントだと思います。

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