30分読書 禍いの科学(わざわいのかがく)ーなぜ人間は過ちを繰り返すのか?
最近本から離れてたのですが、最近また本を読みたい気持ちが出てきました。知的好奇心が急に膨らんできた、というか取っ散らかってきた感じ。このあと、感動小説とホラーサスペンスが待ち構えてます。
最近になってようやく外側に意識が向けられてきた感じ。
ということで久しぶりに30分読書をしてみました。
タイトル:禍いの科学
作者:ポール・A・オフィット(翻訳 関谷冬華)
出版社:日経ナショナルジオグラフィック社
ページ数:277ページ
あらすじよりこんな本です。
サブタイトルに『正義が愚行に変わるとき』とあるとおり、
この本には人間が生んだ科学の中で、最初は正義だと思われていたことが、実は愚行で大きな損失を招いた事例のドキュメントです。
ここから得たい事は?
「人間が本質を見抜くためには、どんなことに気を付ければよいのか?」
世間で良いとされてるものは、声が大きければ、ついその波に飲まれてしまいます。その中で、いかに本質を見抜くにはどうしたらいいのだろう?
特にコロナの発生から今まで、いろいろな憶測や科学データなどが、多く出てきました。いまだに私は何が正しいのか正確に判断が付きかねることが多いです。
このようなときのモノの見方、意識の持ち方といった点を学ぼうと思います。
30分読書後、学んだ結論
人間はバイアスに影響されるのは仕方ない。そういうものだと思うこと。
そして感情的にならず、データ・ファクトを元に判断すること。
アヘン、マーガリン、化学肥料、優生学、ロボトミー手術、沈黙の春、ビタミン健康法、
この7つの言葉、
よく聞く言葉ですし、いまでも聞く言葉もいくつかあります。
この7つの事例について、良かれと思って科学を構築していった経緯、そして禍いに転じたその後について、事実ベースの話が書かれています。
(最後の主要参考文献の量がとても多い!それだけ事実ベースに忠実に書かれたのでしょう)
いくつかは紛い物だと、いまではすぐわかるものですよね。
たとえばロボトミー手術。鼻の奥から棒を差し込んで、脳の前頭葉を切り離す?壊す?手術方法です。(想像するだけで痛々しい!)
ロボトミー手術の画像を検索したけど、なかなかに痛々しいので控えときます。
現代の私たちからみるとバカバカしいことは火を見るより明らかなのに、ノーベル賞を受賞し、それ以降も世界で40,000件もの症例があるそうです。
色んな事象の中で考えさせられるのが、
簡単なやり方に安易に飛びつくことの危うさがあげられます。
自閉症の治療にもロボトミー手術は用いられたそうですが、いまだに簡単に治る治療法は確立されていません。なのにロボトミー手術を多くの医者が施したのは、夢のような方法で簡単に済ませられるという人間の思慮の浅さによるものだと感じました。
そしてもう一つありがちなのが、
事実検証が甘いこと。もしくは事実検証をせず感覚で判断すること。
その一例として『沈黙の春』が挙げられます。『沈黙の春』とは本の名前で、環境問題を最初に人類に投げかけたレイチェル・カーソンの本です。
この本は人間の行動が地球環境を壊していると、当時は誰も気づかなかったことを、本を通して世に投げかけました。そして多くの賛同を得たのですが、事実的な検証がなされた科学ではありませんでした。作者の思いをベースにした本だったのです。
地球環境破壊の一つとして鳥類が減少しているという事例があります。そのデータは、ある田舎に住む一般の人の鳥類観測だけを論拠にしていました。(鳥類の観測する専門機関によると鳥類は実際は5倍に増えていたとのこと)
ここからは私の想像でしかないので、その点了承いただきたいのだが、
作者は
環境破壊によって、鳥が減少しているに違いない
という思い込みから、根拠に合うデータだけをピックアップし、結論に結び付けていたのではないかと感じます。これはまさに確証バイアスですね。
しかし、この動きは一大ムーブメントに発展し、市民運動に留まらず、政治的な動きにまで及ぼすのです。
それと引き換えに何万人という命、特に子供の命が代償になってしまった。
残念ながらムーブメントの途中は誰もそのことには気づかなかったんです。いや気づいた科学者もいたが、ムーブメントに飲み込まれてしまった。
このことから得られる教訓は、
認知バイアスに陥ることは常に意識しておくこと、
そのために理性的にデータから判断すること
感情的にならないこと
ということです。
人間は失敗の連続であり、失敗するものである。
それでもなお、過去から学んだ教訓を、不確かな未来の決断の時の参考にすることなんだと思いました。
一方で、過去の正しさが未来の正しさではないこともある。地動説と天動説はその例ですよね。
読後、何だか堂々巡りになってしまいました。『どうすればいいんだろう?』と。
一時は、何だか判断することが怖くもなりましたが、間違いながらも前進していきたいなと感じた本でした。
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