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新しい助成金の創設「産業雇用安定助成金」

コロナ禍の対応に新たな雇用関係の助成金が創設されました。

今回の産業雇用安定助成金は、従業員の雇用維持のために従業員に「出向」してもらうと会社が受給できるものです。

出向にも種類が多くありますが、今回の助成金受給要件に合う出向は、コロナ禍により仕事が減って従業員が余っている会社と、仕事が増えて人手不足となっている会社の間で、期間限定で従業員に出向先の会社で働いてもらい、期間満了で元の会社に戻ることを前提とした出向です。

籍を元の会社に置いたまま出向するため「在籍型出向」と言います。

助成金の概要を軽く触れておきます。

①出向運営経費
具体的には出向中に要する経費の一部に対して90%の金額が助成されます。
(中小企業で出向元が出向者以外の従業員で解雇などを行っていない場合90%)(解雇している場合は20%)
(経費とは:出向元事業主及び出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など)

②出向初期経費
出向の成立に要する措置を行った場合、その経費に対し出向元、出向先各、出向者一人当たり10万円の助成。
更に加算額があります。

措置とは:就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備など


さて、そもそも「出向って、そんなにうまくいくの?」という印象を受けますが、出向元と先の双方のニーズが合致した出向をするためのマッチングが重要であり、これを行政が担当するようです。企業と行政の間ではそれなりに良好な関係を維持したいでしょうから、ある程度は在籍型出向が成立するでしょう。

ただ、出向の期間満了後に従業員自身が「私は出向先の会社に転職したい」と出向元の会社に戻らず退職し、出向先へ就職することは企業間の契約があったとしても妨げる事はできません。日本国憲法の職業選択の自由が労働者個人を守っているためです。

そうゆうことがあるだろうな。と思います。

他社で働いて、2社の企業を内側から比較する機会は、一般的な労働者にはない経験です。

特に出向先が「いい会社」であったときを考えると、心が揺れることもあるのではないかと思うのです。

逆に出向元が「いい会社」であれば「やっぱりウチの会社は良いね!」と再確認していただけるかもしれません。愛着や尊敬から会社への貢献意欲が高まるかもしれません。

最近頻繫に見聞きするM&Aであっても上記内容は同じです。買収した側の会社の経営方針や新しい上司が気に入らなければ、買われた側の労働者は新天地を求めて退職することになります。

買収した会社の特許や「のれん」が目的ならともかく、会社は人で成り立っており、人が抜けたら買収の意味はどうなるのでしょう。新たな価値を生み出すのも人であり、未来に対する投資と言えるのかどうか。

また、退職せざるを得なくなった従業員の身になって考えた時、会社は人を幸せに出来ていない事実を受け止めるべきです。M&Aをコンサルティングする会社や支援する機関・士業が増えましたが、儲かるからと安易にM&Aを勧めることは避けていただきたいと思っています。

少し話がズレましたが、人を移動(異動)させる難しさを知り、普段の労働環境や社風、方針などをふりかえって「自社は、うちの従業員が戻ってくれるような会社だろうか」と再確認する必要がある助成金なのかもしれません。

※参照:産業雇用安定助成金 厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082805_00008.html

※在籍出向とは
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page06_00001.html
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