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“心が傷つく”とは ~その回復のために

「心が傷ついた」
他人の何気ない一言から感じるときもあれば、PTSDと診断されたときなど、幅広い状態のように思えますが、私が今到達した結論は、みな同じ。「その人にとってあるべき世界・正義感からすると、許されない/信じられない出来事・言動に出会ったときの反応」。それが心が傷つく、ということなのではないか、と思うのです。

PTSDとの関係
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、DSM-5の基準によれば、実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的暴力など、精神的衝撃を受けるトラウマ体験に晒されたことが前提とされています。

https://www.jstss.org/ptsd/#:~:text=%E8%A6%9A%E9%86%92%E5%BA%A6%E3%81%A8%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E6%80%A7,PTSD%E3%81%A8%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82


その一方で、直接これらの出来事にはあてはまらないけれど、いじめ、ハラスメント、虐待などでも同様の症状が出ていると思われるケースもあり、近年は「複雑性PTSD」というのも出てきて、ICD-11ではより広がるそうです(この辺は専門外なので、素人情報ですが)。さらに複雑性PTSDでもフォローされていないかもしれませんが、原発事故から避難してきて、個人や国、社会から傷つけられて、深刻なストレス状態にある人たちもいます。
このようないろんな人の状態を説明しようとすると、「複雑」でもなんでもなくて、シンプルに「心が傷ついた場合」として、みな同じ定義で理解することができ、かつ、治療法も同じではないか、というのが今の私の結論です。

定義:心が傷つく、ということ
日常生活の中で、自分(の言葉)が思いもよらずに否定されたり、攻撃されたりすると、ちょっと傷つきませんか。そして、見知らぬ人よりも、身近な人や信頼している人からそれが行われると、さらに傷は深まるのでは・・・
非日常的なこととしては、自分が「こうあるべきだ」と思っていたことからすると信じられないこと、到底許されないことがまかり通ると、そのことによっても強く傷つけられます。例えば、戦争。例えば、強姦。
天災も、自分にとってあるべき世界からすると信じられない出来事です。
いじめ、ハラスメント、虐待も、一つ一つの行為を取り上げるとそれ自体は強い精神的衝撃を与えると思われなくても、それが継続していることが許容されている社会というのは、その人にとってのあるべき世界からすると、信じられない、許されないことです。だから、心は傷つきます。
さらに言うと、他人からはいじめやハラスメントとも言ってもらえないかもしれない誰かの意地悪な言葉や態度、私は、そういった一見些細と思われる言動でも、そのときの状況や、その積み重ねによって、相手の心は深刻なほどに傷ついていく場合があると思っています。理不尽なほど救われない社会、これも心を傷つけていくと思っています。
だから、「その人にとってあるべき世界・正義感からすると、許されない/信じられない出来事・言動に出会ったときの反応」。これを「心が傷ついた状態」と定義します。


心が傷ついた場合の回復方法
私は、安克昌先生の「心の傷を癒すということ」(作品社)という本を読んで頂くのが一番良いと思っていますが、ここでは、この本から私が学んだこととして、自分が傷ついたときにまずすべきこと、傷ついた人がいたときに助けたいと思ったときにすべきこと、心の傷を癒して生きていくために意識してほしいこと、を書こうと思います。


心が傷ついたときにまずしてほしいこと                                                            それは、誰かに話して、あなたの安心できる、安全な場所を見つけてほしい、ということです。自分が傷ついたとき、自分の世界が壊されたとき、自分は一人だ、誰にもわかってもらえない、と孤独を感じる方は多いと思います。すぐに誰かに話す気になれないことも多いでしょう。
でも、相手に壊されてしまった、崩されてしまったあなたの世界、あなたの「あるべき世界」は、きっとあなた一人にしかわからないものではなく、誰かわかってくれる人がいるはずです。だから、あなたの世界をわかってくれる人を探して、傷ついたことを伝えてみてください。もし、すぐに話せる人が見つからなくても、いつか現れます。だから、自分一人ではないと信じて、ゆったりと自分を大切に思う時間、あなたがほっとできる時間を作ってほしいと思っています。

あなたの周りに傷ついた人がいたときにしてあげてほしいこと
それは、その人に寄り添って、その人のどんな世界が壊されたのか、それによってその人がどれほど傷ついたか、聞いてあげてほしい、と思います。
よく、医療・福祉関係者は「傾聴」という言葉を使います。これは本当は、私が今書いたことと同じなんだろうと思います。でも、実際には、「とりあえず黙って聞く」「受け入れたフリをして聞き流す」というような態度も見かけます。でも、それではその傷ついた人は安心できません。その人があなたといると安心できるように、本気でその人の持っていた世界を理解しようとする、そういう気持ちで傷ついた人の話を聞いてあげてください。

心の傷を癒して生きていくために意識してほしいこと
私が安先生の本を読んで一番辛かったのは、心が傷つく前のもとの自分に戻ることはできない、ということでした。以前の傷つく前の状態に戻りたいけれど、もう戻れない、それを受け入れなければならない。これには時間がかかりました。
でも遡って自分で考えた定義からすると、自分が「こうあるべき」と思っていた世界が壊された、そういう自分の世界を壊す人がこの世界にはいる、ということを受け入れる、そういうことなんだと思えました。あえて言えば、自分は認めたくないけれど、私の大事な世界を壊す人もこの世界には存在する、私はそういう世界に生きているんだと「自分の世界」を広げること、そういう世界でこれからは生きていこう、と思うのです。
あなたが生きている限り、あなたの世界をわかってくれる人は必ずいます。誰かに自分を否定されたと思ったときもあったかもしれないけれど、あなたを、あなたの世界を認めて、大事に思う人も必ずいます。だから、自分を大事にして、生きてほしいと思います。


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