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「ようこそ!子育てキッチンへ/村上美保子著」ビブリオエッセイ

「1人の人間として教育してもらえて、本当に良かった」

私は、義母の言う「子供なんだから」が苦手だった。
えっ?子供だからって許されても、いずれ許されなくなるよね。
それは、一年生になる時?中学生になる時?成人になる時?
「はいっ!今日からはダメですよ!もう子供じゃありませんからね!」
なんて、スイッチを切り替えるみたいに守れるようになるわけがない。

おまけに、やれ危ないとやら、やれやってやればいいのに!!って、先回りしてやる意味がわからない。
痛い思いをするから痛みがわる。悔しい思いをするから次も頑張れる。

と、新米ママの私は、義母の一字一句に反発したものの、自分がばぁばになった時には、どうなるものだかわかりゃしない。
ママとばぁばの立場大違いが、子育ての醍醐味かもしれない。


私には長男、長女、次女の3人の子供がいる。
小3、年長、未満児の冬休み、私と末娘が同時にインフルエンザで寝込んでしまった。
昼近く、長女が持ってきた皿の上には、ゆで卵があった。ちゃんとカットされてマヨネーズも添えてあった。何かを食べさせなきゃと、一生懸命に考えたらしい。
それから、長男と長女は「カレーを作るから、2人で買い物に行くね」と、雪道をソリを引いて2キロ先のお店に出かけた。
子供の足で2キロはなかなかの距離だ。
長女が泣きながら帰宅。
どうも、途中でお漏らしをしてしまったらしい。お漏らし妹をそりに乗せ、兄ちゃんが1キロ以上も引いてきたらしい。まるで、北の国からの1シーンだ。
怒りもせずに、ちゃんと兄ちゃんやれたんだ、「偉いぞ!」と心の中で褒めてやった。
その日、2人で作ってくれたカレーライスは最高のごちそうになった。

お漏らし娘といえば、それだけでも一冊の本になるぐらいの、七転八倒の末、獣医師として研究者になり、学びと研究と論文書きという自由な生き方を手に入れた。

「中学生の時に、自由にするってことは、自分の行動に責任が伴うってことだよ、って言ってくれたんだけど、対、1人の人間として教育してもらえて、本当に良かった。」
来月、母親になるお漏らし娘が、社会人になる日にくれた手紙の一文。
あなたのお母さんにしてくれて、ありがとう。


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