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「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常/二宮敦人著」ビブリオエッセー

《ねばならないの向こう側に、人を感動させるものがある》

私自信、絵も工作も版画も得意な方で、街の作品展には必ず選ばれていたし、ピアノはなんと10年も街のピアノの先生をやっていた。

それなら芸術センスがあったのかと言われれば100%ない。
絵にしても工作にしてもピアノにしても基本の蘊蓄を人よりも多少は理解して実践していただけだ。
ピアノに及んでは、好きだと思った事はない。「辞めます」と言えないばかりに、ついには就職先まで私の意思とは関係ないところで決まっていただけだ。

しかし、「芸は身を助ける」はまあまあ本当かもしれない。
絵や工作は、保育士の国家試験取得で容易く有利に働いた。
ピアノも保育士試験はもとより、根っからの「教え好き」に支えられて10年間も稼がせてもらった。

それらで大学を目指す気はさらさらなかった。
並に毛の生えたぐらいじゃ太刀打ちできない世界だと気づいていたし、「◯◯でなければならない」の思考の強い自分では芸術と呼べるレベルには到達するわけがない。そんな事を早くに気づいていた。

東京藝大が芸術の最高学府だったのか。
芸術科が上野にあるのは解せるが、音楽科が上野とは。上野駅界隈に上質な装いで優雅に楽器を抱える姿はアンバランスな気がする。と、言っては台東区に失礼な話だが‥‥。

藝大生のカオスな日常をなんとなく想像できてはいたが、ここまで秘境だったとは、私の想像力もまだまだだ。
ねばならないの壁「あたりまえ」を破っていける人達だからこそ、芸術家であり人を感動させられるんだろう。
岡本太郎の「芸術は爆発だ」の言葉と、頭を空っぽにして読まなければ気がおかしくなりそうになる村上春樹の「羊をめぐる冒険」を思い出した。

芸術は「ねばならない」の世界からは生まれない。

*「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」二宮敦人著を読んでのビブリオエッセー《ねばならないの向こう側に、人を感動させるものがある》


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