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直違の紋に誓って

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実在した二本松少年隊の一人、武谷剛介を主人公とした小説です。 二本松藩がどのように戊辰戦争に巻き込まれ、藩の誇りを賭けて戦ったのか。そして、明治の「西南戦争」は戊辰戦争の敗者にと…
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2022年11月の記事一覧

【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~再出発(2)

 磐根は戦に出ることはなかったが、その見識の広さは端倪すべからずものがある。磐音もまた、…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~再出発(1)

 明治十一年、二月。  剛介は一旦下長折の実家に帰省し、事の次第を説明した。  会津に「妻…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~会津の種子(2)

 正月明けに若松署に出勤した剛介は、篠原の机の前に立って辞表を出した。一応、引き継ぎもあ…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~会津の種子(1)

 十一月。会津では既に初冬の気配を見せ始めていた。この頃になると、剛介の腹は既に決められ…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~丸山翁の話(2)

 一昔前に預かった二本松の種子が、若木となって次の世代を見せてくれるとは、あの頃は思いも…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~丸山翁の話(1)

 八月の盆に合わせるかのように、剛介はやっとのことで若松に戻ってきた。九州での戦いは、剛…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~出水(4)

 その知らせが届いたのは、鹿児島との連絡がついた七月下旬だった。別働第三旅団は、新撰旅団に後任を託す形で、解団するとの伝達があった。既に、川路は東京に戻されている。一説によると、川路は西郷を監視するために、多くの密偵を放ち、西郷の暗殺を図っていた。また、宇都を初めとする郷士に対しては、「地ゴロと馬鹿にされた悔しさを思い出せ」と盛んに巡査としての仕官を勧め、薩摩の者同士の戦いを促した。結果として多くの薩摩人の怨みを買い、それを危惧した大山巌らが、川路を外すことを決めた。  それ

【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~出水(3)

 伊藤に見送られて、剛介等が伊藤の邸宅を出ようとしたときだった。刹那、垣根の影から飛び出…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~出水(2)

「私などはもう、とうに楽隠居をして、日がな不知火の海を眺めて暮らすつもいじゃった。そいが…

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1年前
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~出水(1)

 六月十七日。別働第三旅団はこの日、出水に足を踏み入れていた。季節は梅雨であり、連日雨が…

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1年前
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~御船(2)

 御船は一旦薩軍の掌中に戻ったため、なかなかこれを抜くことが出来ない。そのため、再びこの…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~御船(1)

御船は、熊本から四里ほど離れた東南の方向にある。街の中心を御船川が流れており、「御船台」…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~熊本(3)

 剛介は、にこりと微笑んでみせた。まだ二十三の剛介を捕まえて、「おじさん」はなかろうと、…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~熊本(2)

 植木警視隊の者らは、夜半近くに熊本城下に入った。熊本城下はまだ薩軍が潜伏している可能性がある。その誤解を避けようと、熊本の家々では日章旗を掲げて官軍を迎え入れた。秩序が行き届いているというのが、剛介が熊本城下に足を踏み入れた第一印象だった。そういえば、日章旗は「日本の国旗」として認められるようになったのだったな、と取止めもないことを思い出した。改めて思う。今は、会津も薩摩も関係ない。「日本」という国から道を外した者が敵なのだと。  それにしても、予定では、本日に熊本城入城の