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科学技術は地球の滅亡すら解決できる、と驕るようになった人類


地球の滅亡が迫っている。
突如として観測された彗星が、確実に地球を滅ぼしにかかっている。
早く手を打たなければ、人類どころか地球すら無くなってしまうことになりかねない。
発見した教授は、この一大事を知らせるために大統領へと掛け合い、世界中の人たちにテレビを通して発表することにした。
全ては人類が生き残るために、地球を存続するために。
地球が確実に滅亡するなんてことを発表した日には世界は大混乱に陥るだろう。
果たしてどんな事態になるのか、まるで予想がつかない。
そう、まさに誰も予想しなかった展開に発展するなんて。

彗星が地球に衝突する期限はあと半年とちょっとなんて、予断を許さない状況でしかない。
人類を、地球を守るためには、国家規模、いや世界規模で一丸となって対策に乗り出さす必要があるだろう。
対策チームを至急立ち上げて何がベストな方法か協議するのが普通の展開だ。
そう、普通の神経なら。
だがしかし、今回は一味違う。
アメリカ大統領は個人のスキャンダルの対応に忙しく、地球滅亡と言ったって、科学の力で今までいろんな問題を解決してきたんだから、今回もなんとかなるでしょう?
だからとりあえず静観して動向を見守りましょう、とまるで相手にしない。
教授と研究員は話の通じない大統領に呆れ返り、それならニュース番組で直接世間に知らしめてやろうじゃないかと出演するも、番組の司会者たちは「彗星の衝突? 地球の滅亡? また面白いジョークを持ってきたわね。」くらいの軽いノリでスルーされ、まったく事の重大さが伝わらない。

そんな中でも希望ある、ように思われた。
大統領はことの重大性にようやく気づき、彗星を爆発させようとロケットを発射することになる。
だがそれはスキャンダルから目をそらし、世界を救う使命を背負うことで印象づけ、次の中間選挙を乗り切るためという、なんとも不順な動機であった。
ともあれロケットは発射された。
だがそう簡単には終わらない。
人類の希望を乗せ発射されたロケットが、何故か引き返してくる。
テクノロジーの最先端を行く企業が「彗星には、人類が喉から手が出るほど欲しがっている希少な鉱物の塊だ。爆破して粉々にするなんてあり得ない」と、何百兆円にもなる資源を確保するために、横槍を入れてきたのだった。
人間は滅亡を目の前にしても、金の欲には逆らえないのだ。
「Don't Look Up. 空を見上げて怖がるより、前を見て一歩一歩進もう。」
いい話だけど、ここまで来たらただの現実逃避だろう。

人間は短期的なことに目を奪われがちで、長期的な先のことには判断が疎くなる。
地球は滅亡するという予言は何回も聞かされ、また同じようなことを言っていると軽く流す。
オオカミ少年のように。
情報に溢れた現代はどれが本当の事実なのか、出処はどこなのか、あまりに疎くなりすぎているのかもしれない。
テクノロジーで何とかできるだろう、まさか地球は滅亡しないだろう、するとしても自分が生きているうちにはない。
お上がどうにかしてくれるだろう、自分たちはただ無事に終わるのを待っていればいい。
平和が続いている現代は楽観主義が蔓延している。
しかし実際空に彗星が見え、衝突が間近に感じられるときになって初めて、人間は危機感を覚え、混乱し、狂乱し、愛を確かめ合う。
楽観主義と想像性の欠如。
お気楽になりすぎて最悪の状況を考えられない。
少数の正気と多数の狂気。みたいな感じか。

シリアスなのに話が通じなさすぎてコメディにまとまる感がすごい。
そしてきちんと最後まで描ききってる感がいい。
最後まで生き延びて帰還しても、絶滅の危機はなくならないところが。


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