同族企業の承継は、100%委譲か、別組織で

私は前職を辞めて、すぐにウィルフを創業し、独立した。

しかし、実は、ウィルフを創業する半年程前から父親の会社に入り、事業承継しようと副業的に準備を進めていた。ただ、自分の未熟さ故に父親と意見が合わず、大喧嘩したために、自分で独立する道を選んだのである。

私の未熟さを痛感する話ではあるが、振り返ると、父親の創業ストーリーも近いものがあった。

20代の頃、曽祖父が創業した繊維の卸問屋で働いていた父は、卸問屋業に未来はないと考え、小売業に進出するべく、紳士服のセレクトショップで独立したとのこと。そこでどのような議論があったのかは定かではないが、一事業部を立ち上げるのではなく、別会社を自己資本で創業したことを考えると、経営自体を切り分けて自分自身で進めていきたいという意志があったのではないか。

親や祖父が立ち上げた会社の中で、親や祖父自体が自分の強烈な意志を持ちながら、同時に子どもが自分で意志を強烈に持って進んでいこうとしている場合、一緒に進んでいくのはどう考えても難しい。いくら議論したところで、結局、組織における最終決定権者は1人であり、組織人はその人が決めたことに従う必要があるからである。その前提に立つと、どちらかが相手を尊重して折れる必要がある。

一緒に進んでいくには、最後は親の判断に従う子どもを育てるしかない。
逆に、子どもの意志を尊重するための選択肢は、経営を承継することを即決めて100%委譲するか、完全別組織で取り組むかである。

まだ、親が現役世代である場合、親も仕事をしたくて経営に取り組んでいる以上、いきなり100%委譲するのは難しいことを踏まえると、一族での承継というのはお金を出資するくらいにとどめて、完全別組織で取り組むのが最適解となるのではないか。

その場合、親が培ってきた会社の名前やブランドは残らなくなってしまうが、それも含めて承継したい場合は、子どもの会社が成長するのを待ち、子どもの会社が、親の会社を買収できる規模にまで成長してきた段階で買収してもらうのがベストなのだと思う。

親が子どもに引き継げる最大の財産は、会社や組織よりも、教育や生き方だと捉え、相続税もかからない教育投資を、私は子どもに全力で行っていきたいと考えている。

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