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【詞】夏の嘘

どうしたって追いつけないね この波に体を奪われて
周りからとおく遅れて
たとえ呼びかけても返答はないのだろう
はじめから分かっていたけど

水際がさらう面影をさがす きみだけはどこかにいるはず
迎えがくるから ここで待ってたら それしかわたしには

今、世界の眼前で まぼろしに立ち眩んで
流されることも大前提 夏に欺かれているね
果ては世界の最端で どうせなら蜃気楼にでもなって
夏の嘘に付き合ってるだけ


どうしたって裏切れないね 期待のことばに背を押されて
気づいたらそこは崖
足を滑らせても助けはこないのだろう
逃げないならここが最後

寄せては返す波に手をのばす きみの姿は泡になって消える
きっと最初から誰もいなかった ここにはわたししか

この世界を眼前で 被害者面して恨んで
諦めることはない全然 夏を疑っていたね
距離も不安も越えて行け いや、こんなの意思表示でもなくて
夏の嘘に騙されてるだけ

わたしの太陽 裸足の才能 渇いたからだで駆ける時代の
かたちは大小 探すわたしの バタ足で進める夏の海洋

ねぇ ひとりじゃないよ この世界で 誰と生きるか決めて
季節なんてひと掻きで 泳ぎきって対岸へ
波の随 時が凪いだ 辿り着いた渚
そこでなら きみは 誰よりも強いから

今、世界の眼前で まぼろしだって抱きとめて
そこへ降り注いだ雨 この夏の空、貫いて
別れ際、手を振って また明日、出会うため
夏の嘘にふり向かれるまで

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