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夏嶺 (なつね)
2016年2月24日 18:36
聞けば、伯母は昔はたいそう歌の上手い人であったそうだ。 どこかでお抱え歌手のような事をして、稼いでいた時期もあったと言う。 今では喉の引きつった傷が、それはもう叶わない事と語っていた。 で、あるにも関わらず。 伯母はよく歌っている。 よく見かけるのは夕焼けの綺麗な日や朝焼けの綺麗な日、雪のきらめく日や、要するに伯母の気に入った空模様の日の庭だった。 初めて見た時には、何を口をぱくぱくさ
2016年2月23日 22:15
郵便受けのかすかな音に、身支度を整える手を止める。そわりと心臓を撫でる予感に郵便受けを開けてみれば、ふくよかな封筒が郵便受けの中で微笑んでいた。そっと手に取ったその封筒は、いつものように仄かに見知らぬ土地の香りを纏っている。差出人は、彼女だ。私は整えようとしていた髪もそのままに、ハサミで慎重に封筒の端を切る。封筒から写真の束を取り出すと、異国の香りはますます強くなった。埃っぽいような、