君からの最後の手紙は、結局誰にも見せられなかった。いつかこの手紙の場所で、同じぐらい美しい夕日を浴びながらグラスを捧げれば、君と笑ってグラスを鳴らす、愛しく切ない夢を見られるような気がしている。美しい手紙をありがとう。手紙の場所で、また。 #今はもうここにいないあなたへ贈る言葉

伯母と歌

聞けば、伯母は昔はたいそう歌の上手い人であったそうだ。
どこかでお抱え歌手のような事をして、稼いでいた時期もあったと言う。
今では喉の引きつった傷が、それはもう叶わない事と語っていた。

で、あるにも関わらず。 伯母はよく歌っている。
よく見かけるのは夕焼けの綺麗な日や朝焼けの綺麗な日、雪のきらめく日や、要するに伯母の気に入った空模様の日の庭だった。
初めて見た時には、何を口をぱくぱくさ

手紙

郵便受けのかすかな音に、身支度を整える手を止める。
そわりと心臓を撫でる予感に郵便受けを開けてみれば、ふくよかな封筒が郵便受けの中で微笑んでいた。

そっと手に取ったその封筒は、いつものように仄かに見知らぬ土地の香りを纏っている。
差出人は、彼女だ。
私は整えようとしていた髪もそのままに、ハサミで慎重に封筒の端を切る。封筒から写真の束を取り出すと、異国の香りはますます強くなった。
埃っぽいような、