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掌編

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掌編置き場
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2016年4月の記事一覧

桜色の花が咲く。小さな花の塊がまるで綿菓子の様だ。
咲き誇るその花達を、塊が崩れぬ様にそうッと収穫する。
冬を越えたモノ達が目覚める為の花。冬という死を乗り越えて春という誕生の時に口に含む生命の乳。穢れた血生臭さとは程遠い漲る血潮の香りを、次の春への想いと共に箱へ納める。 #掌編

雲は薄い虹色をしている。
そう言うと大体は怪訝な顔をされる。
聞かれなければ答えることもないし、正直に答えたところで利はない。
と、思っていた。
姉が、それは玉虫色というんだと教えてくれるまでは。
以来姉との朝の挨拶は、今日も良い玉虫色だね、になった。
利は、割とある。 #掌編

スコップを振るいながら思う。桜の下には死体が埋まっていて、だから桜は美しく咲くというが、でもそれは違うけど正しいと僕は思う。肌寒い夜風の中、汗を腕で拭う。傍にスコップを突き立て、穴のふちに膝を落とす。
桜の下には、血を吐く様な恋心と、少しの涙が埋まっている。 #掌編 #桜

友人夫婦の家は良い家だが、廊下の奥だけは日中も煤けた様に暗い。転居祝いの宴会の時手洗いから戻らない共通の友人を捜しに行くと、煤けた奥でしゃがみこんでいる。友人は私に気づき振り向くと、シィ、と指を口元に当て何事も無かった様に戻っていった。その日以降、あの暗さは消えたという。 #掌編