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「俺たちの税金をそんなことに使うな」論はちょっと待って欲しい

ひとり親の支援

昨日のキングコング西野亮廣さんのYouTubeライブ配信を見た。

「ひとり親家庭の子育てを地域で支援できんものかなぁ」という西野さんの思いに対して、「ひとり親となったことは自己責任でしょう」という意見があったという。

結論としては、「そんな世界は息苦しくて好きじゃないから自分で動く」である。かっこいい。

これに関連して、税金の使い道に関しても言及されていて、これはちょっと広く伝えていかなければならないと思ったので記事にする。

「俺たちの税金をそんなことに使うな」という人々

公共事業や新たな政策に対して「俺たちの税金をそんなことに使うな」とは、批判の声としてよく聞く。西野さんが苦言を呈するのはここ。

日本の税金のうち、一部には累進課税制度が適用される。所得税、贈与税、相続税の3種類だが、この中で日常的に支払うことになるのはお給料から差し引いて収める所得税。

累進課税とは、所得や相続の額が高いほど、収める税金も高くなるという制度だ。

この制度のことは、多くの人が知っていると思う。一部の芸能人が高額納税者番付とか騒がれたり、または最近ではYouTuberが高額納税をしている様子を、よく見聞きすると思うから。

問題は、その累進課税における所得層ごとの納税額シェアの比率と、自身の納税額とを比較したことがあるかということだ。

平成26年の財務省財務総合政策研究所というところが出したレポートでは、以下のような統計データが記されている。

この年の所得税納税額は、7兆5千億円
給与総額は186兆円で、所得者4566万人の合計。

データでは、所得税の1/3である2兆円を、上位たった0.97%の高所得者が納税した。所得額1500万円以上の44万人が、全体の1/3の所得税を納税したという。

さらに、所得税全体の1/2である4兆円を、上位たった5.5%の高所得者が納税した

私はその残りの94.5%に属するので、所属税全体の半分の、さらに所得者数にして約4500万人分の一しか納税していないことになる。※厳密にはその4500万人のなかでも累進課税による差がある

これが所属税納税シェアの内訳である。

< 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 26 年第2号(通巻第 118 号)2014 年3月発行>
日本の所得税負担の実態―高額所得者を中心に―

https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list6/r118/r118_04.pdf

つまり大半は「俺たち」の税金ではなく、全体の5.5%の高所得者の税金なのである。自分が収めた税金は、わずかな足しにしかなっていない。

であるにも関わらず、「俺たちの税金をそんなことに使うな」という横柄な物言いは如何なものだろうか、という違和感が西野さんの言うところ。


累進課税率と納税率の比較

所得税の累進課税率は、この表のとおり。

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年収が4000万円以上の高所得者は、約半分の45%を所得税として納めなければならない。実務上の計算は、所得額から控除額を差し引いた額に、税率を適用する。

計算すると、以下のようになる。

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高所得者
 所得が年間4000万円の場合の納税額 15,840,000円

一般的な所得者
 所得が年間500万円の場合の納税額   914,400円

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所得の桁が1桁違うと、納税額は桁が2桁違うわけである。

ちなみに、消費税をたくさん払っていると思われる方も多いだろう。これも簡単に見積もってみよう。

年収が手取り500万円で、全て課税対象の消費に全額あてていると仮定する。消費税率を10%ですべて収めたとする。

すると年間で納税する消費税は、手取りの10%であるから50万円だ。実際にはそこまで支払っていないだろう。預金や非課税投資に回す分もあるからだ。

年収500万円の人が所得税と消費税で収める額はこの二つを合計しても140万円程度で、高所得者は1500万円と、それでも1/10程度でしかない。

高速道路や公共事業に数十億円から数兆円投入されて日本は成り立っている。コロナ対策でも100兆円以上もの予算が補正された。

このように、「俺たちの税金」と一口に言われるその金額がどの程度の規模であるかをひとつ把握しておいて、そのうえで議論したほうがいいだろう事案はたくさんある。

なお、西野さんは「だから文句を言うな」と言いたいわけではない。そもそも我々庶民は高額納税者に助けられ、そして我々も少ないながら金額の面でも貢献し経済を回している。

そうやって現実にもお互いに助け合って生活している中で、冒頭の「ひとり親は自己責任」という価値観でのみ論じていいものだろうかという話である。

西野さんのvoicyでも語られていたので、気になる方はぜひ。


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