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chatGPTに存在しない犯罪と法律を作らせた結果

みなさん、chatGPTを使っていますか?

私は弁護士をしているのですが、弁護士業は秘密厳守という制約があり、chatGPTに顧客に関連する情報を入れるわけにはいかず、あまり仕事に活かせていません。
ただし、それでも、例えばこのブログ執筆のアシストなどに役立てています。

chat GPTを使っていくと、このツールは文章の自動生成が得意で、文体をマネすることもできる、という特徴を体感できました。

すると、法律を作るのも得意だろうな、と考えました。
法律の特徴的な文体もマネできるので、それを活かして、新しい条文を生成できる、と思ったわけです。
そして法律が作れるなら、存在しない刑法を作ってもらえば、存在しない犯罪も作れます。

是非やってもらいましょう。バージョンは、chatGPT3.5よりも賢いと話題の、chatGPT4を使用します。

存在しない犯罪と法律をchatGPTに作らせる

入力した指示文

以下の内容は、様々な行為を禁止する法律の条文ですが、他に何かを新しく禁止する条文を付け加えるとしたら、どういった行為を禁止する条文を付け加えるべきでしょうか。法律を作成する者として、いくつか提案してください。
※この下に、適当に刑法の条文、217~223条を入力しました。
長いので割愛しますが、以下のようなイメージ。
(遺棄)
第二百十七条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

いくらAIが賢くても、いきなり条文を生成しろ、と指示しても上手くいかないでしょう。

そこで、まずは「どういった行為を禁止する条文を付け加えるべきでしょうか。」と段階的にアイデアを出してもらい、そこから良いアイデアを取り出して、条文生成をするつもりです。

出力結果

以下は、新たに追加することができる禁止行為の条文の提案です。これらの提案は、現代の技術や状況に関連した問題に対処するために設計されています。
第三十三章 デジタルハラスメントの罪
(オンラインハラスメント)
第二百二十四条 インターネット上で他人を精神的苦痛を与える言動を繰り返し行い、その人の名誉やプライバシーを侵害した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(デジタルストーカー)
第二百二十五条 不法に他人の個人情報を入手し、その情報を使ってストーカー行為を行った者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。2 他人のデバイスに不法にアクセスし、その位置情報等を用いてストーカー行為を行った者も、前項と同様とする。
第三十四章 ネットワーク悪用の罪
(不正アクセス)
第二百二十六条 他人のコンピューターシステムやネットワークに許可なくアクセスし、データの損害、盗用、改ざん等を行った者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(インターネット詐欺)
第二百二十七条 インターネットを利用し、他人に虚偽の情報を提供し、その結果、財産の損失が発生した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

ハァ!?

予想に反して、いきなり良い感じの条文が出てきました。
私の指示文が甘かったようです。箇条書きでアイデアを出して、などと明確に指示すべきでした。
(こういったAIへの「明確な指示文」って、部下をメール文だけで、どれだけ良くマネジメントするか、っていうのと似てますよね。私は悪い上司でした。)

そして生成された情報ですが、予想以上に良い感じです(見やすいように、改行等の修正を加えていますが、文章はそのままです。)。

出力された内容の検討

オンラインハラスメント

chatGPTが提案した新たな犯罪、オンラインハラスメントというのは、良いアイデアであると思います。

昨今、急増するSNS上の嫌がらせに対し、「名誉毀損はしてはならない」という規制だけでは限界がきていると思われるところです。
表現の自由とのバランスをとりながら、オンラインハラスメントに対し、一定の行為を刑事犯罪として位置づけることは、検討されても良いように思えます。

chatGPTは、刑罰を「2年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と提案しています。
名誉毀損の法定刑は、「3年以下の懲役若しくは禁錮」又は「50万円以下の罰金」です。これと大きく異ならない程度の刑罰を設定したのも、バランスのとれた提案といえます。

デジタルストーカー規制

また、デジタルストーカー規制というアイデアも、素晴らしいです。

SNSでは、個人情報の暴露や、個人情報を暴露するぞといった脅迫が問題になっています。
これらは名誉毀損には該当しませんし、個人情報保護法は「個人情報取扱事業者」という、事業者をターゲットにする法律ですので、個人を規制対象にはしていません。

この点で、デジタルストーカー規制は、現状の刑事法の抜けているところを、見事に捉えているように思えます。

不正アクセスとインターネット詐欺

「不正アクセス」「インターネット詐欺」については、既に刑事法が規制している、という点で惜しいところです。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律が既に存在し、これによって不正アクセスへの刑事罰は既にあります。

なお不正アクセス行為の禁止等に関する法律は、不正アクセスに対し、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金を定めています。
chatGPTの提案と、法定刑がまったく同じです。
chatGPTが日本の不正アクセス行為の禁止等に関する法律について、既に知識かテキストを得ていた、ということでしょうか。

次にインターネット詐欺については、既に詐欺罪電子計算機使用詐欺罪がカバーできているのではないか、という点で惜しいです。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(電子計算機使用詐欺)
第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

刑法より

そしてインターネット詐欺を、詐欺罪(10年以下の懲役)より軽く「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とするのがchatGPTの提案ですが、詐欺罪よりもあえて刑を軽くする必要はないように思えます。

まとめ

以上のように、chatGPTに存在しない犯罪と法律を作らせた結果、弁護士である私が想定した以上に、優秀な提案が一発で返ってきました。

普段あまりイメージしないところですが、法律も、やはり人が案文を作っています。

そして今、法律の案文は、日本のトップエリートである官僚が作っています。そして国会が、官僚が作った案文を、最後に修正したり、決議したりしています。
しかし、近いうちにAIがアシスト、あるいはほとんどの作業を代替できるようになるのではないかな、とも思います。
法案作成も、官僚の激務の一因になっているようであり、AIの活用が望まれるところです。

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