chatGPTに存在しない犯罪と法律を作らせた結果
みなさん、chatGPTを使っていますか?
私は弁護士をしているのですが、弁護士業は秘密厳守という制約があり、chatGPTに顧客に関連する情報を入れるわけにはいかず、あまり仕事に活かせていません。
ただし、それでも、例えばこのブログ執筆のアシストなどに役立てています。
chat GPTを使っていくと、このツールは文章の自動生成が得意で、文体をマネすることもできる、という特徴を体感できました。
すると、法律を作るのも得意だろうな、と考えました。
法律の特徴的な文体もマネできるので、それを活かして、新しい条文を生成できる、と思ったわけです。
そして法律が作れるなら、存在しない刑法を作ってもらえば、存在しない犯罪も作れます。
是非やってもらいましょう。バージョンは、chatGPT3.5よりも賢いと話題の、chatGPT4を使用します。
存在しない犯罪と法律をchatGPTに作らせる
入力した指示文
いくらAIが賢くても、いきなり条文を生成しろ、と指示しても上手くいかないでしょう。
そこで、まずは「どういった行為を禁止する条文を付け加えるべきでしょうか。」と段階的にアイデアを出してもらい、そこから良いアイデアを取り出して、条文生成をするつもりです。
出力結果
ハァ!?
予想に反して、いきなり良い感じの条文が出てきました。
私の指示文が甘かったようです。箇条書きでアイデアを出して、などと明確に指示すべきでした。
(こういったAIへの「明確な指示文」って、部下をメール文だけで、どれだけ良くマネジメントするか、っていうのと似てますよね。私は悪い上司でした。)
そして生成された情報ですが、予想以上に良い感じです(見やすいように、改行等の修正を加えていますが、文章はそのままです。)。
出力された内容の検討
オンラインハラスメント
chatGPTが提案した新たな犯罪、オンラインハラスメントというのは、良いアイデアであると思います。
昨今、急増するSNS上の嫌がらせに対し、「名誉毀損はしてはならない」という規制だけでは限界がきていると思われるところです。
表現の自由とのバランスをとりながら、オンラインハラスメントに対し、一定の行為を刑事犯罪として位置づけることは、検討されても良いように思えます。
chatGPTは、刑罰を「2年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と提案しています。
名誉毀損の法定刑は、「3年以下の懲役若しくは禁錮」又は「50万円以下の罰金」です。これと大きく異ならない程度の刑罰を設定したのも、バランスのとれた提案といえます。
デジタルストーカー規制
また、デジタルストーカー規制というアイデアも、素晴らしいです。
SNSでは、個人情報の暴露や、個人情報を暴露するぞといった脅迫が問題になっています。
これらは名誉毀損には該当しませんし、個人情報保護法は「個人情報取扱事業者」という、事業者をターゲットにする法律ですので、個人を規制対象にはしていません。
この点で、デジタルストーカー規制は、現状の刑事法の抜けているところを、見事に捉えているように思えます。
不正アクセスとインターネット詐欺
「不正アクセス」「インターネット詐欺」については、既に刑事法が規制している、という点で惜しいところです。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律が既に存在し、これによって不正アクセスへの刑事罰は既にあります。
なお不正アクセス行為の禁止等に関する法律は、不正アクセスに対し、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金を定めています。
chatGPTの提案と、法定刑がまったく同じです。
chatGPTが日本の不正アクセス行為の禁止等に関する法律について、既に知識かテキストを得ていた、ということでしょうか。
次にインターネット詐欺については、既に詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪がカバーできているのではないか、という点で惜しいです。
そしてインターネット詐欺を、詐欺罪(10年以下の懲役)より軽く「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とするのがchatGPTの提案ですが、詐欺罪よりもあえて刑を軽くする必要はないように思えます。
まとめ
以上のように、chatGPTに存在しない犯罪と法律を作らせた結果、弁護士である私が想定した以上に、優秀な提案が一発で返ってきました。
普段あまりイメージしないところですが、法律も、やはり人が案文を作っています。
そして今、法律の案文は、日本のトップエリートである官僚が作っています。そして国会が、官僚が作った案文を、最後に修正したり、決議したりしています。
しかし、近いうちにAIがアシスト、あるいはほとんどの作業を代替できるようになるのではないかな、とも思います。
法案作成も、官僚の激務の一因になっているようであり、AIの活用が望まれるところです。
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