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笹沼樹チェロ・リサイタル「叙情の森」福岡公演のご案内

 皆さま、こんにちは。今日は今年2021年11月1日(月)に九州キリスト教会館にて開催の笹沼樹チェロ・リサイタル「叙情の森」福岡公演のご案内をさせていただきます。
 昨年来のコロナ禍のパンデミックによって世界中で多くの命が失われました。予定されていたクラシックの演奏会のみならず、多くの舞台やスポーツの機会も失われ、なんとか東京オリンピックは一年遅れで開催されましたが、無観客。もしも昨年予定通りの開催であれば、メダルを取って祝福されたであろう多くの選手も出場が叶わなかったり、結果を出せずに涙をのみました。一方で研鑽努力の甲斐あってメダルに輝き、私達を喜ばせてくれた素晴らしい選手たちには心からの拍手を贈りたいと思います。しかし開催にも賛否両論が渦巻く中で、人生をかけてきた選手たちには、運不運では片付けられない時間であった事を思うと、傍観者である自分が言葉にすることは難しいと言うのが正直なところです。感染者も増え、重症者や死者の比率はずいぶんと下がったとはいえ、まだまだ油断できない日々が続く中ですが、だからこそ生の良い音楽をお届けするのが一番の仕事だと思い、改めて「叙情の森」福岡公演についてお知らせします。
 この企画は、チェリスト笹沼樹が昨年(2020年)最初の緊急事態宣言下で自宅からSNSを通じて、バッハの無伴奏チェロ組曲を毎晩1曲づつ聴かせてくれたことから始まりました。新型コロナウィルスの脅威がどのくらいのものか、治療法も分からずワクチンも無い中、私たちは次々と入ってくる悲しい情報に打ちのめされ、ただただ自宅にいて息をひそめる生活を余儀なくされておりました。その中で笹沼樹のバッハは、ネットを通じての精神安定剤として、聴いている私たちの心を癒してくれました。彼のバッハ演奏への感謝の印として、昨年7月にヴァイオリンの三上亮と共にDVDを作成し、一部ですが記録を残すことが出来たのは私にとっても大変うれしいことでした。

2人の名手2020ジャケット0720

 そしてバッハを弾き終えた笹沼樹は、次に5月7日のブラームスの誕生日から6月8日のシューマンの誕生日までの1ヶ月を自ら「歌曲の月」と題して、シューマンの「詩人の恋」、シューベルトの「水車小屋の少女」を中心に、ドイツ在住の友人のピアニストと共にリモート演奏でSNSを通じて毎晩1曲づつ聴かせてくれました。笹沼樹が弾く歌曲は、チェロとピアノでの演奏ですから歌詞は歌われていないにも関わらず、ハイネの詩の言葉一つ一つがそのつらい時期の自分自身の感情とも重なり、なお一層心に響くものとなりました。笹沼樹自身も「詩人の恋」は、特に心に訴えるものがあったらしく、ハイネの書いた「歌の本」からとられた原曲の歌詞は失恋の詩ですが、そこにさらにゲーテの「若きウェルテルの悩み」のウェルテルの感情に共鳴して、不安や恐怖と戦っているかのようでした。今回、その孤独の日々の苦闘の中から生み出された企画として「叙情の森」は誕生することとなりました。
笹沼樹は今回さらに趣向を凝らして、「詩人の恋」全16曲に加え、もともとハイネが書いた20曲からシューマンが校正時に削除した4曲を加えた形で今回演奏をいたします。さらに歌詞も笹沼樹自身が新しく翻訳し、テキストを再構成して音楽劇の共演で親交のある大和田美帆さんが朗読を務めて下さいます。ピアノはベートーヴェンのソナタ等で笹沼樹とたびたび共演している實川風さんにお願いしております。
 この一年半にわたる厳しいコロナウィルスとの戦いの日々をバネにして、音楽家は音楽を通して、そして俳優は演技と言葉を通してお客様に何かしらを伝え、またさらにそれを未来への希望の光として届ける事が生きて芸術に携わるものの使命なのだろうと思います。ですから、笹沼樹がじっくりと時間をかけて練り上げた「叙情の森」を、福岡のお客様に心を込めてお届けします。
 会場となります九州キリスト教会館のステージには、ラテン語でEGO SUM RESURRECTIO ET VITAという言葉が書かれています。「私は復活であり、命である」という聖書の言葉です。音楽を愛するものとして、今回の公演にふさわしい空間であろうと思っています。皆さまと共に「叙情の森」福岡公演を、記憶にとどめおくべき音楽の時間として共有出来る事を願っております。

九州キリスト教会館


 現状、残念ながら感染者の増加も続いており、会場の九州キリスト教会館は70席限定の公演となります。状況が改善するようでしたら、追加のお席もご案内したいと考えていますが、チケットぴあ、およびイズタバイオリンにて販売を開始しましたので、どうぞお早目にチケットをお求めください。

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 なお東京公演につきましては、11月16日(火)サントリーホールブルーローズにて開催予定です。

叙情の森東京1

叙情の森東京2


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