見出し画像

びっくりのインド ● 40 ● ヨガ道場へ行く - Part 2

アメリカに住んでいたとき私は森で迷子になりかけたことがある。

中西部と言われる地域は、「これでよく川が流れるな」 と感心するくらい真っ平らだ。
その広大な土地に無数の木が茂っているところがあって、それが 
カリフォルニア州だけで日本とほぼ同じ面積だから、アメリカの 『広大な』 は、日本の 、場合によっては  くらいの広さである。
土地に凹凸がなく同じ種類の同じ年齢の木が高くそびえたつと、広大な森の中は昼間でも暗くて、前後左右どこを向いても全く同じ景色で自分がどこにいるか分からなくなる。
闇雲に歩くと森から抜け出せなくなるのは必至だ。
わたしは、森に入ってすぐそれに気付いて引き返した。

そんなことを思い出しながら私は、インドの森に向かってAさんの後を歩いていた。
「これじゃまるでヘンゼルとヘンゼルが森に入っていくようなものだ。パン屑はないし」 と考えていたら、急にこの景色が現れた。

画像1
まるで楽園に続くトンネル。

ほんの 5 分前まで 「殺されて、金を取られて...」 と想像していた私の心は一気に明るくなった。
そして暫く歩いて現れたのが、この建物。

079 ヨガ道場
巨大な塔だった。

さらに歩くと…

ここまで大きいと
道場 というレベルではない。

マヤ遺跡を発見した人の気分だ。
この施設が何処にあったかも分からないので、いま調べようがないのが悔やまれる。

敷地内には芝が張り巡らされていて、ざっと目に入るだけでも軽く百人を超える入門者が歩いていて、誰もが本当に幸せそうな顔をしている。
宿泊の準備をしてきてよかったと思った。

ヨガ道場は、日本で言うなら体育館の半分くらいの広さで、それが幾つも並んでいる。
いつの間にか現れた案内の人が、各道場でどんなことをするのかを説明してくれた。
朝早く起きて森の空気を胸いっぱいに吸い、朝日が昇るのを感じながらヨガをしたら、と想像するだけで期待がふくらんだ。

ところが、道場を一通り見終わって宿泊施設に案内された私は、一瞬にして奈落の底へ突き落された。
それは、好意的に表現しても、鉄の扉のない刑務所の部屋 にしか見えなかったからだ。
衛生とか防犯とか、そんなものは程遠い。
同じサイズの部屋が1フロアに何十も並んでいて収容所そのもの。

落胆した様子を見せないようにしながら 「一人部屋はありますか?」 と、かろうじてAさんに訊くと 「一人部屋はありません、すべて4人部屋です」 と答えが帰ってきた。
そこで 「私は物凄くイビキが大きいから同室の人に迷惑がかかるかも」と冗談っぽく言うと、Aさんは 「頼めば4人部屋を2人で使える場合があります」 と言う。

頼む? 誰に?

こうなると、それまでに見たすべてのものの負の部分が浮き上がってくる。

幸せそうに歩いていた人たちは誰もが笑顔だったけど何故か顔つきが同じ…
男女共に砂漠の国の男性が着るような服を着て...
途中、職員さん? がゾウを連れて歩いてた...
普通の服を着ている人たちはゾウを見て 「わーっ!」 と歓声を上げてた…
ゾウが物凄い悲しそうな目をしていたのに気付かなかったんだろうか…
そもそもヨガの施設なのになんでゾウ?
あれって一種のショー?

あーーーーっ!

わたしはなんと間抜けなんだろう。
森の中に現れた極楽のような場所にうっとりしてして舞い上がっていた。
ここは、ヨガ道場なんかじゃない。

宗教施設だ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?