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びっくりのインド ● 25 ● 香辛料の思わぬ作用

この記事は、インドから日本に帰ってきた後のモロモロ話しの中に入れようと思っていたものだが、前回の びっくりのインド ● 24 ● リンゴの不思議 で カレーの香辛料が体に及ぼす影響 について触れたので、補足する意味で先に書こうと思う。

『 インド 』 『 カレー 』 『 食べる漢方薬 』 をキーワードに Google で検索すると、色々なサイトで香辛料のことや、漢方薬としての効果などが紹介されている。
日本では一般的に香辛料は 料理に辛みや香りを加えるもの と捉えられている。
インドに住んでいたときには色々なレストランで食事をしたものの、残念なことに、「 この店の香辛料の組み合わせ具合は絶妙! 」 と、微妙な味の違いに感激したことはなく、カレー味が濃いか薄いか くらいしか分からなかった。
私は日本でもほとんどカレーを食べないから単に カレー音痴 なだけかもしれない。
ひとつ言えるのは、南インドの料理は味が ぼやけている こと。
日本人が思う 辛いカレー は、北インドのものだと思う。
一度だけ北インド料理のレストランに行ったときは、どの料理も味がはっきりしていて美味しかった。

滞在中に 3 回、高級なレストランに連れていってもらった際に料理が  美味しい! と感じたのは、バナナの葉にカレーを乗せて食べたり、カレー以外の珍しい料理を食べたり、ほとんど飲む機会がなかった酒を飲んだりして (インドで唯一飲んだ酒はビール)、気分がハイになっていたからかもしれない。

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↑ バナナの葉の大きさに驚いた。

びっくりの国、インド! にカレーの記事が 1 つもないのは、

いまやカレーは日本のソウルフード! 
 毎日カレー食べれます!

な人からすると、「 えっ! アナタは何しにインドへ? 」 だろうが、こればかりはどうしようもない。食べ物の写真も、ほとんどない。

自信を持って断言できるのは、数か月インドでカレーを食べ続けると元気になる ということだ。
毎日、早寝、早起き、仕事の後は市場へ行くのに片道 30 分、行きは散歩しながら 1 時間歩いて、ジムではウォーキングマシーンで歩き、筋トレをして、帰りは食べ物が入った重いバックパックを背負っているので寄り道なしでひたすら歩いた... のが、健康の大きな理由であることは間違いない。
それを踏まえても、インドで一度も体調を崩すことなく、普段はのろのろとしか歩かない私が軽い足取りだったのは、たっぷりの香辛料が体内に入ったせいだ、と帰国してから気付いた。

というのは、日本に戻ってきて 1 ~ 2 週間で体が重く感じるようになったからだ。
バンガロールの気候があまりにも素晴らしくて ( びっくりのインド ● 15 ● 極楽の気候と洗濯 )、帰国したのが 2 月だったせいもあると思う。

インドにいたときの自分は、何故あんなに元気だったのか...
スキップしながら歩きそうな、あの感じは何処へ...

そのうち体がだるくなって、熱っぽくなり、病院へ行ったら インフルエンザ にかかっていることが分かった。

当時はちょうど抗ウィルス薬の タミフル が問題になっていて、特に子供が服用すると、8 階のベランダから飛び降りるなどの行動が報告されていたが、ドクターは 「大人は大丈夫でしょう... 」 と独り言のようにつぶやいて、私にもタミフルが処方された。
「早速、飲んでください」 ということで薬を服用してから帰宅した。
ここから どえらい ことが起こり始めた。

私は熱に弱くて、体温が 37 度 5 分を超えるとふらふらして頭がぼーっとする。
その日のことははっきりとした記憶がなくて、歩いて行ける病院を選ぶはずなのに、帰りに電車に乗ったことを覚えている。
座っていると、周りにいる人たちが全員ひそひそと私の悪口を言っていた。
中にはへらへらと笑いながらこっちを見ている人もいた。

感じの悪いやつらだな...

と思いながら電車を降りてコンビニに寄ると今度は、いつもの店員さんがニヤニヤしながら私の顔を見ている。

ったく、どいつもこいつも...

と怒りつつ家に辿り着いて、多分、すぐに寝たんだと思う。
起きたら体がかなり楽になって、ふと窓から京都の街を見たときのことだ。

あー、たくさん屋根が…
あんなに小さく見える!
飛べるかも!

と思ったのだ。

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部屋はビルの 10 階だ。
高いところから飛ぶ ⇒ 落下する ⇒ 死ぬ、という簡単な理論の、落下 と 死ぬ が完全に欠落していて、単純に 「 ここから飛んだら、どんなに気持ち良いだろう 」しか頭になかった。

そのときに、電車の中でコソコソと私の悪口を言っていた人の顔が次々と、浮かんでは消え、浮かんでは消え、を繰り返して、ボソボソとつぶやく声も聞こえて、自分が狂っている ことに気付いた。

何かがおかしい、おかしい、飛べるはずない、飛べるはずない、と自分に何度も言い聞かせて、そのうちにまた眠ってしまった。
そもそも目覚めてなかったのかもしれない。

薬物の依存症になった人が 「うわーっ、天井いっぱいにクモが!」 などと叫ぶ話しを聞いたことがある。
彼らには本当にクモが見えているのだと思う。
私が初めてアメリカでカラーコンタクトをしたとき (2000 年代前半)、最初は視界の淵に色が付いていて、2 ~ 3 日すると徐々にその色が消えたのを思い出す。
それは、視界に入っている色を脳が 必要がない情報と判断して消した にほかならない。
そのくらい脳はいい加減で、見せたいものしか見せてないということだ。
逆に、天井にクモが見えたり、窓から飛べそうな感じに思えたりするなんてことは、脳なら簡単にやってのけるだろう。

しかし、タミフルの服用で異常な行動をするのは子供のはず。
当時 40 代だった私が幻聴や幻想を起こしたのは何故かと考えて、「あっ、カレー!」 だと思った。

西洋医学のドクターは漢方薬の効果を信じない人も多い。
でも例えば、10 種類の漢方薬の組み合わせは、私の計算が正しければ 800 通り以上あり、それをすべて実験するのは非現実的で、ましてや人によって効果が現れたり現れなかったりすると、検証するのは不可能だ。
インドで何か月もカレーを食べ続けて、その中に数種類の漢方薬が入っており、そのあとに 西洋の薬 を服用したら、どんな効果が出るかなんて分からない。

幻覚や幻聴だけではない。
帰国後には色々な とんでもない ことが続いた。
まず、数か月ぶりに牛肉を食べたらひどい下痢をした。
解熱剤が驚くほど効いたり、頻繁に不整脈が起こるようになったりした。
男性は 40 代でやたら体調を崩す、という話しを考慮しても、偶然にしてはタイミングが良すぎる。
わたしの体は インド仕様 になっていたとしか考えられない。

それ以来、香辛料だけでなく、口に入れるもので自分の体がどう反応するか、気を付けるようになった。
意外なところでは、空きっ腹にコーヒーを飲むと微熱が出て体がだるくなることに気付いた。
しかし、何も起こらないことがあるので色々と調べてみると、地域によってはコーヒー豆を屋外で自然に乾燥させるらしく、それによって花粉が付着したりカビが生えたりするため、アレルギーを起こす原因になることが分かった。

食べ物や飲み物は、美味しいとか美味しくないかとか、健康的だとか体に悪いとか、そんな基準でしか評価しないことが多い。

よくよく考えてみるとヒトは他の動物と違って、害のある食べ物を本能的に見分ける能力はかなり退化している。
また、『 美味しい 』 の基準も、世間がそう評価しているから美味しいはず と思い込まされていたり、食品会社や業界全体に いま流行りの美味しいもの を刷り込まれていたりで、自分が感じる美味しいものではない可能性 も大いにあって、かなり疑わしい。
特に日本は『 他の人と同じように感じること 』 を大切にする国だから、突然 (というより恐らく業界の仕込みによって)、タピオカが爆発的に流行ったり、何でもかんでもパクチーになったり、世間を動かしやすい
これは他の国ではあまり見られない特徴だ。

食べることを楽しむ、のは大切なことだと思う。
でも同時に、食材だけでなく、調味料や香辛料などについても、

これが体内に入ったら自分の体はどう反応するか?

を少し考えてみても損はない。

インド料理の香辛料は本来、諸説はあるが、ある料理に同じ組み合わせで同じ量を使うのではなく、その日の 体調によって調整 していたようだ。
そうなると、私としてはインドの香辛料は漢方薬以外の何ものでもなく、何かの治療のためというより予防薬である。

この記事を書いていたこともあって、昨日スーパーに行ったときに、レトルトカレーが並んでいる棚を見てみた。
種類の多さにまずは驚いた。
中には 500 円を超えるものもあって、思わず 「え!」 と声が出た。

でも
これってカレー...
じゃないよね


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