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びっくりのインド ● 06 ● トイレの試練

ようやくホテルにチェックインできた。
長い道のりだった。

フロントにはスタッフが一人いて、十分に理解できるインド訛りの英語を話すので 「これから1週間は大丈夫かな」 と安心した。
何せ急に具合が悪くなっても、どこの病院へどうやって行ってよいか分からないし、緊急な事が起こっても、警察官や救急車の呼び方も分からない。
海外ではまず安全の確保を考える。

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このフロントのサイズからすると日本ならビジネスホテルといったところだろう。

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インドでは家屋の床は基本的には大理石だ。その理由は住み始めて分かった。

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置いているものがカラフルなせいか豪華に見えるが、まあ普通な感じ。

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いわゆるハリウッドツイン、シーツはきれい、寝心地も良い。左のベッドは男性用なのか広いので、ずっと左で寝た。

部屋は、何の目的か、むかし日本でタンスに入れていた樟脳 (しょうのう) とかナフタリンの匂いで満ちていた。
まるで害虫になった気分だ。

さて、右側の狭いほうのベッドにスーツケースを広げて着替えを取り出し、熱いシャワーを浴びて寝れば、めでたしめでたし だが、その前に克服しないといけないのが、これ。

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洋風の便器があるということは、贅沢 の証し。
でもトイレットペーパーがない。
そもそもトイレットペーパーホルダーがない。

トイレは困るだろうと予想していたので、どうやってお尻を洗うのかをインドのスタッフに何となくだが教えてもらった。
下水のシステムが十分整ってないからティッシュペーパーなどは流せないことも分かっていた。
このホテルで自分以外の外人を見たことがなかったから、もし下水管が詰まれば第一容疑者になるのは必至だった。

飛行機の座席に長時間座っていたせいか急を要していないので、すっぽんぽんで練習してみることにした。
ホテルなら失敗してもシャワーを浴びれる。

小さいバケツを持って大きいバケツから水を汲むのは聞いていた通り。
右手にバケツを持って、ここからは未知のゾーンだ。

(1) 左手でお椀を作って、その中に水を注ぎ、スクワットの体勢から腰を下げて、お尻を便器に近づけ、水をこぼさないようにゆっくり、お椀を前から股の間を通して お菊さま の下に持っていこうとしたが、途中で全部こぼれて失敗。お椀を後ろから回してみたが、これも失敗。

(2) 右手でバケツを持ち、後ろから水を流しつつ、左手も後ろに回して、その手で水を受け取りながら、お菊さまを洗おうとしたが、そんなアクロバティックなことは無理。これも失敗。

(3) 右手でバケツを持ち、突起した部分を尾てい骨に当てて、表面張力を利用して水を谷間に流しつつ、前から股の間に左手を通してお菊さまへリーチして、流れてくる水を受け止めつつ洗う。これだ! と一瞬思ったが、水がお菊さまを通過して、お稲荷さん に雪崩混むので、これも失敗。

(4) は (3) の進化形で、谷を流れてくる水を手の平の付け根でせき止めつつ指でさわさわをお菊さまを洗う。これだ、これしかない!

さて、いよいよ本番。

うーん、これで合ってたのか、太ももがちょっと汚れてしまったが、初めてにしては上出来としておこう。
それよりも、自分の排泄物を手で洗ったときに湧き上がってきた感情が 屈辱 だったことに衝撃を受けた。
何故そんな風に思うのか自分でもよく分からなかった。

文明が発展すると人は ことの最後 を見なくなるからかもしれない。
排泄物は、なかったことのように地下へと流れていく。
ゴミ箱には蓋をして、ゴミ袋は外に置いておくと収集車が持っていってくれる。
死すら、これから安楽の地へ見送るものとされている。
ことの最後はきれいに 片をつける 文明に長くいると、あえて自分で最後を処理することが、まるで何かがダウングレードしたように感じたのだと思う。

しかし、そんな屈辱は 2 日で慣れた。
人は案外サバイバーな生きものだ。

とにもかくにも、これでシャワーを浴びたら長い 1 日がやっと終わる。

●●●●● 後日談 ●●●●●

去年 (2019)、ひょっとして... と思い YouTue を検索してみると、何と、お尻の洗い方を実演している動画 を見つけた。

これがインドに行く前に公開されていれば苦労しなかったのに ...。
しかも、和風っぽいタイプのトイレはどっちを向いてしゃがむのかも分かったのに ......。

が、いや、この人は右手も左手も後ろに回している?
では、失敗だと思った (2) が正しかったわけだ。
いやいやいや、こんなのは初心者には無理。
彼が水を流すところは熟練の技がうかがえる。
あんなにバケツを近づけていてもズボンを濡らさずトイレに水が注がれている。
水とお尻との距離感がしっかり身についていて感心するばかりだ。


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