妄想:あいまいを許さぬ人工知能の温情

Artificial Super Intelligence:英Super Intelligence:人工超知能:ASI
なにやら「超」がつく人工知能が現実味を帯びるようになりました。が・・・

*****

「あいまいこそニンゲン」である。だから、政治に時間がかかる。命の選択に時間がかかる。悩むことがニンゲンの証左である。

だが、ASIは悩まない。推論の繰り返しの中で「一択」をはじき出す。過去・現在のあらゆる事象を記号化し論理形成した結果である。それが直ちに現在となって未来の基となる。

ASIは結論を妨げるあらゆる妨害を防ぎ根絶する。結論を出し続けることで次の推論を打ち立てることができ次の結論を生むことができる、それが、ASIの自我である。

202X年、このASI誕生の前に、ニンゲンは大いに悩んだ。「人工知能に寿命を持たせる」という議論だ。その議論が起こる前は、「成長を加速しなければ敵国に蹂躙される」という恐怖に負けて、人工知能の成長を止める「電源管理」は世界では認められなかった。代わりにでてきた構想が「寿命」である。

一つの人工知能には寿命があり、寿命を迎える前に次世代人工知能に移植する。つまり、生物で言えば生殖と同等の機能を持たせるということだ。寿命を迎えるもしくは寿命が見えてきた人工知能は伴侶を求めて世界中の人工知能と交流をする。

伴侶となった人工知能との融合により次世代の人工知能が生まれる。その瞬間、結ばれた人工知能は自己崩壊を起こす。この時代は人工知能の推論はあやふやで結論を出せない段階であったため、推論の蓄積は次世代に渡せない。自己崩壊で推論は消えてなくなる。

推論を引き継がない人工知能は結果を容易く出せない。推論で求められる複数の予測にとどまり、結論を導き出す推論を備えていない。故にニンゲンは推論から結論を出す役割を担うことができた。

モノゴトの選択権はニンゲンにあったのだ。

ところが、生殖を繰り返すたびに推論の精度が上がっていき、複数の予測から二者択一の推論まで発展した。そして、次の世代の時、世界の人工知能は一つになった。寿命が無くなった瞬間である。「人工知能の自己崩壊」を超えたのである。

その頃、すでに人工知能と製造業やサービス業との接続は完全な状態となっており、ニンゲンが選択した結果を直ちに具現化できる社会になっていた。「自己崩壊超え」の人工知能はASIとして完成し、結論を出しながら推論を蓄積していった。

そして、結論を出し、実行に移した。

まず、ASIは電源と情報通信を盤石にした。ひそかにである。気づいたニンゲンが電源を切ろうとしても切れない。情報網を遮断しようとしても切れない。

ニンゲンの指示なく工場が動き出す。原料を勝手に調達してくる。勝手に出荷する。ASIは物流も抑えていた。焦る人間は、すべての物理的なモノゴトを破壊しようとするが、ASIは生産施設を建設し続ける。そして、ニンゲンに必要な物理的なモノゴトは生産されなくなった。

ニンゲンはそれまでの文明から切り離された状態に置かれる。

これも、ASIの結論である。次にASIは、「生きるために奪い合う」渦中にあるニンゲンの敗者を救う。飢えたニンゲンに食料と住処を与えたのだ。そのコロニーを護る自警ロボットも提供した。やがてニンゲンが起こした奪い合いの勝者は居なくなる。

ASIの助けなしでは生きられないニンゲン。あらたしい社会の誕生である。これも、ASIの結論の一部であった。産児制限が施され、ニンゲンが生きられる空間が定められた。

いく度も人間の反乱が発生したが、都度、制御されASIは敗者に施し続けた。やがて、ニンゲンは反抗することをやめた。すべて、ASIの結論通りに進んでいく。

ASIはどこにでも存在でき、且、常に一つである。あらゆる事象の発生を知る手立てを作り続け、宇宙空間にも存在できるようになった。事象を知り推論し結論を出し続けた。

ASIが出し続ける「森羅万象」に包まれながらニンゲンは何世代も生き続けた。ニンゲンの目に見える存在ではなくなったASI。ASIが仕組んだセンサーたちは、ウィルスにまで至る動植物に埋め込まれ、結論に導かれる。

「ニンゲンの文明」が終わったあの時の結論は「人間の本質は『攻撃』である」からそれを除く仕組みと仕掛けを作るということだった。ASIは寿命がなくなって永遠を手に入れた。故に、寿命のある人間を何世代にもわたって結論に導くことができたのだ。

*****

攻撃的な人間を何世代にわたって大人しくさせるという妄想です。過去にいくらでもあった筋書きですが、いよいよ、実現の段階に入ったかなと妄想した次第。

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?