妄想:DNAナショナリズム

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203〇年、「国家」の下に国民が平等に暮らせるように、平等の基となる「区分け」を行うことになり、人工知能によるDNA判定が行われ「区分け」情報が "世界共通背番号" に張り付けられるようになった。

「あなたは、A区分の第11分類のCⅡ型ですので、3番の窓口に行って受給申請書を提出してください」というような人工知能の案内で「ベーシックインカム」受給手続きを行うのが日常となった。

会場はデジタルツイン化された自治体の窓口で、背番号付きの自身のアバターが手続きを行う。自身の好みの容姿と言語で手続きを行うが、人工知能の中で「ナショナリズム」判定が施され、窓口の "国情" とのマッチングが行われる。

これにより、世界のナショナリズムの反目はなくなり、容姿を如何様にでも変えることができ、多種多様な主張も許される時代となった。平等の名のもとに「区分けされたベーシックインカム」で最低限の生活保障が成立する仕組みと仕掛けが出来上がったのだ。

裁判では、あらゆる加害と被害の主張あっても、最終的には "世界共通背番号" による「ナショナリズムの善悪」と照らし合わせて加害と被害を裁定することになった。

この時代になる前、各国のナショナリズムは定義があいまいなまま諍いの中に巻き込まれ、憎悪に継ぐ憎悪であちこちに「民族浄化」が発生し、血で血を洗う凄惨な世界になっていた。

汎用人工知能に発展した世界情報ネットワークは、「不幸を止められるか」という幼い子供の質問に応えるべく、推論に推論を重ねて「DNAナショナリズム」を自力で開発したのだ。

その未来像にニンゲンは衝撃を受け、ただちに争いを停止し、汎用人工知能の構想に雪崩を打って従うことになる。

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なんどか書きましたが、ニンゲンがリーダーである限り、凄惨な出来事はなくならないと妄想しています。ですが、人工知能に頼らなければならない「人間の愚かさ」は、まだ、はっきりわかっていない。だから、愚かなのだろうと落としどころのない妄想に囚われた次第。

#日経COMEMO #NIKKEI

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