妄想:内が痛めば外に火を噴く孤独な竜

***** 竜はおなかを毀してぬたうち回っています。原因は、やたらに「こうあるべき」で食べ物をむやみに選別したせいです。食べ物の栄養が偏っているところによからぬウィルスが入り込んでしまったので、竜は絶食を選びました。

けれども、栄養失調に耐えられなくなり一気に爆食を始めて消化不良を起こしたのです。そのうちに少し栄養が行き届くようになり血色もよくなりかけましたが、体が思うように動きません。

偏食を繰り返すうち、動かなければならない筋肉が衰えていたのです。動かない筋肉をかばえば、動いている筋肉の負担が増します。こんどは、元気だった筋肉が痛み始め、どうにも動けないのです。

「こんなんじゃいけない。元気を出さなければ」と、竜は気を吐きます。竜が気を吐けば炎が出てしまいます。いままでは、皆に嫌われてしまうので静かに息を吐いていたのですが、元気を出さなければならないときは、ぼぉぅぼぉうと勢いよく吐き出さねばなりません。その炎の熱さと言ったら、こらえきれるものではありません。

皆はとても迷惑そうです。ちょっとしたところでは、火が燃え移ったりしています。皆は、必死に火を消していきます。竜に「もうすこし、ゆっくり息を吐いてくれないか」とそれとなく話しかけるのですが、竜は元気を取り戻すためにはどうしても勢いよく吐き出さねばならないのです。だからすごく怒っている形相で「おれにはできない!。きみらがよけてくれ!」と叫ぶのです。叫べば、また、炎が盛ります。

しばらく、みんなは遠巻きに竜を見守ることにしました。爆食で得た栄養が減っていくのを待っているのかもしれません。弱った竜を今度はいたわるように介抱していきます。

「こんどは、食べ方を変えないか?おんなじ病気になっちゃいけないよ。少しづつでも、あれもこれも食べてみようよ。思ったより好きになれるかもしれないよ。」と、みんなは話しかけるのでしょう。火を噴くことをこらえられるようになった竜を想像しながら。

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おとぎ話風にしかできませんでした。台湾に向けて火を噴く竜など見たくはないのですけれど・・・。

#日経COMEMO #NIKKEI

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