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新卒採用は、「未来からの使者」との出会い

最近「新卒社員はなぜ採用するんですか?」と聞かれることが増えているので、当時のことも振り返りつつ、私なりの考え方をここに残しておきたい。

今だから言うと、リブ・コンサルティングも実は3年間くらい前に新卒採用の是非が議論されており、当時人事担当役員になったばかりの私は最初の大きな議題に頭を悩ませていた。

「新卒採用って、なんで必要なんだろうか…」

リブ・コンサルティングは2012年の創業時から積極的に新卒採用を行なうことを決めて、毎年5名強の優秀な新人を迎え入れていた。手前味噌ではあるが、おそらくスタートアップの新卒採用としては、それなりにうまくやっていたと思う。

それでも経営コンサルティング業というプロフェッショナル職を新卒から育てることは難易度が高く、早期戦力化にはなかなか苦戦し、定着率もお世辞にも高いとは言えなかった。一方、創業から5年経つ頃にはキャリア採用におけるブランド認知は上がってきており、どんどんキャリアの優秀層が入ってくるようになった。当然、コンサルタントとしての立ち上がりもキャリア社員の方が早く、両者の間にコントラストが生まれてきていた。

スタートアップとして業績を上げなければいけない。弊社は人財育成への情熱を持っているメンバーが多い方だと思うが、それでも事業部の売上を上げるために、ラインの要請としては必然的に「早期に活躍できるキャリアメンバー」となってくる。

はてさて、どうしたものか…

そんな中で出した結論としては、「新卒採用をやはり継続しよう」である。いや正確には「新卒採用にもっともっと重心を掛けていこう!」である。中途半端にやるのではなく、「最高の学生たちを全力で採用し、とことん育成していこう」である。

「絶対に成功させるんで!」

他の経営陣にその意志を伝えると、「分かった」と二つ返事だった。そういう「人」に関するイシューにおいて経営陣で意見が一致するのは正直とても有り難い。きっとその時にROIでカウンターをされたら返す言葉はなかっただろうと思う。ROIは正直、「分からない」としか言えない。それは新卒採用が成功の方向に振れた今となっても、やはり「分からない」としか言えない。なぜならば、新卒採用はどこまでいっても「意志」としか言えないからである。

では、どのような意志なのか。それは「10年後の未来への意志」である。リンクアンドモチベーションの小笹社長の言葉を借りるのならば、

「企業の1年後を見たければ営業力を見よ、3年後を見たければ商品力を見よ、10年後を見たければ新卒採用力を見よ」

ということなのだと思う。10年越しの投資に対するROIを測るのは難しいけれど、私はそれでも新卒採用は会社の10年後を創るモノサシだと考える。

なぜならば、新卒採用はその組織における「未来からの使者」だからである。

それは家族でいうところの「子供」に近い存在である。子供が生まれると夫婦の間において未来への共同作業度合いが増してくる。互いを見つめ合う「今」から、徐々に互いに目線を「未来」に移していくようになる。

子供は夫婦にとって未来からの使者で、「どういう子供に育てたいか」「どんな教育を受けさせたいか」「どんな家族でありたいか」「この子が大人になる頃には…」と家族の未来に関する命題が一気に突きつけられる。家族が未来へと向かっていく共同活動に向かっていく。

組織における「未来からの使者」というのは、新卒社員だと思う。次世代が入ってくることで、組織における未来への共同作業が生まれてくる。ベテランも若手も、一般社員も管理職も経営陣にも、未来における共通の対象が示される。

そもそも組織活動というのはある一面においては、「未来に向かっていくバトン渡し」なのではないかなと思う。ミッションやビジョンを実現するために、それぞれが役割や責任を果たしながら、次世代に繋いでいく活動なのだと思う。いい組織というのは、組織のよりよい未来創りにコミットしている社員が多い。

新卒社員は、組織活動を未来に向けさせる最も具体的な方法論だと私は思う。そして、そうであるならばより多くの社員にその採用活動に関与させることで、「未来創り」の担い手を増やすことが最も大切なことだと思う。

当時そこまで分かっていたわけではないのだけれど、なんとなく新卒採用を辞めたら将来のベストシナリオを諦めることになるような気がした。むしろそのような議論になっている近視眼的な捉え方こそが根本的な課題なんじゃないかと考えた。だから逆に思いっきりアクセルを踏むことにした。

「組織の未来にもっとコミットする人を増やそう」

それまで採用活動に関与していたのは面説官を除けば人事部1名だけだったが、内定者から若手、中堅、ベテランまで総勢30人以上がかかわる大イベントとなった。一人ひとりの学生さんとかなり深いところまでかかわり、学生の就職活動における師匠のような役割である“リクルーター”という仕事は、若手の花形ポジションとなった。それ以外にもプロモーターやインパクターという役割もあるが、それらすべての採用活動は、リブの未来を担っていく若手社員たちが中心となって押し進められていった。

採用活動の方針転換に確かな手応えを掴んだ翌年は採用人数を3倍に増やし、この春には15人のとてもとても優秀な学生が弊社の仲間に加わる予定となっている。現在、新卒採用の応募数は4,000人を超え、内定承諾率も90%を超えるようになっている。人事メンバーおよび若手社員の尽力により、あらゆるベンチャー企業にもコンサルティング会社にも負けない採用力まで高めることができている。

組織はこの3年間で大きく変わった。その最も大きな要因の一つは、確実に新卒採用に重心を大きく掛けたことである。それによって組織が10年後の未来に覚悟を持つきっかけとなったからである。費用対効果とか目先に囚われた議論になっているうちは新卒採用はうまくいかないと思った方がいい。

新卒採用は、「未来からの使者」と向き合う活動であり、組織における未来へのバトン渡しを健全化する最も具体的な方法論だと思う。

それは採用活動に留まる話ではない。夫婦が子供たちの未来を願うように、社内では若手メンバー発進で、新卒社員がリブ・コンサルティングでしっかりと育ち、生き生きと働ける組織にするためにどうするか、という議論が熱を帯びるようになっていった。

「20年卒を迎え入れるまでに、事業可能性をもっと伸ばしておかないと…」「もっとこういう教育体制にした方がいいと思うんですよね…」「一人ひとりのオーナーシップをもっと上げるためにはどうするか…」

「未来からの使者たち」は人財育成や、評価の仕方、人財配置、組織活性化含むあらゆる組織のあり方について未来志向をもたらしてくれる存在となっている。

実際のところは、受け入れ体制含めまだまだやるべきことは山のようにある。でも、3年前にベストシナリオから一歩退かなくてほんとうによかった。もちろん発展途上ではあるものの、あるべき道には乗っかることができたように思う。

具体的にどのように採用活動を成功させたのかについては、また機会があればnoteに残しておこうと思うが、だいぶ長くなったので今回のところはここまで。

「10年後を見たければ新卒採用力を見よ!」
ほんとうにその通りだと思う😃







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