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2023年スタートアップ採用の展望(アマテラス版)

2023年のスタートアップ採用の展望について書きたいと思います。
主なポイントは以下です。

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・2023年は引き続きスタートアップ冬の時代
・スタートアップ採用3つのキーワード
 ①絞る
 ②慎重に
 ③即戦力
・アーリースタートアップの採用にとってはボーナスステージ到来
・大企業人材への注目度アップ
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2023年は引き続きスタートアップ冬の時代

2022年の国内資金調達額は約8,000億円。
2021年からほぼ横這いの状況ですが、2022年後半にかけてダウンラウンド上場、ダウンラウンド調達が目立ったことからも、スタートアップにとっては「逆風」トレンドで迎える2023年と言えるでしょう。

「IPOが再び増えるのは早くても2023年後半以降。IPOしても資金を得づらい」
「新規投資は3年程度は抑える」

日本国内の大手VC、独立系VCのトップはインタビューでこのようなコメントをしています。

また、アメリカでは2022年のスタートアップ投資が約4割減少し、GAFAなどのテックカンパニーが大規模なレイオフをしましたが、歴史をみると、シリコンバレーは不況時に大胆に事業縮小する半面、V字回復が早いのも特徴です。
一方、日本国内のスタートアップ環境は大胆なレイオフなどの取組をしない分、回復も遅く「ゆるやか」にシリコンバレーのトレンドを追いかける傾向があります。

実際に日本国内スタートアップの様子を見ていても、業績が悪化しているメガベンチャーでも大規模なレイオフの話はほとんど聞きません。社員の自然減と新規採用を絞ることで「ゆるやか」に「冬」への対処をしているように見えます。

岸田政権の「スタートアップ育成5か年計画」という追い風はありますが、日本スタートアップが「冬」を乗り越えるのにはまだ時間がかかりそうで、その出口は現時点では見えていないように思います。

2023年スタートアップ採用3つのキーワード

 ①絞る
 ②慎重
 ③即戦力

この「冬」の2023年にスタートアップ採用を表わすキーワードは上記3つです。
まず、①絞る、について。2022年に調達成功した会社はそれなりにキャッシュを持っているため、「備える」時期と捉えています。
来たる春に備えて、開発をする、組織を筋肉質にする、という話をスタートアップから良く聞きます。具体的には、採用ポジションをエンジニアや、プロダクト開発に関わるポジションに「絞る」スタートアップが増えています。

ITエンジニアの求人倍率は右肩あがりとなっており、1人のエンジニアに10社以上がアプローチしている状態です。2年ほど前の2020年頃には1人のエンジニアに7社、という認識でした。正社員のITエンジニア採用は困難になっており、SES、副業や業務委託での採用が増えていますが、このトレンドはしばらく続くでしょう。

②慎重、③即戦力、についてはセットで記述します。
直近の資金調達環境から固定費抑制の動きがあり、人件費増に繋がる新規採用は慎重な対応になっています。
そこで、正社員のミスマッチ採用を防ぎ、即戦力人材をピンポイントでリーズナブルに採用したいというニーズが高まっており、そのニーズに対して「即戦力の副業人材」で対応するスタートアップが急増しています。

そして、「副業として参画後、正社員転換する」という流れも増えています。
まず副業で採用して、双方に評価することができれば正社員転換へ、という流れがアマテラス内でも増加したのは2022年のポジティブで新しいトレンドでした。これはとても合理的なアクションだと思います。スタートアップはまず副業での参画人材を採用することで試用ができ、ミスマッチであれば契約満了という形でスムーズに終えることができます。正社員採用の場合、退職のペインは大きく心理的負担も重くなります。

プロ人材の副業の活用は今後も増えていくでしょう。

一方で、副業採用でミスマッチも増大していることにも触れたいと思います。
スタートアップに副業で採用されるということは、「即戦力の助っ人プロ採用」ということですが、スタートアップを学校のように勘違いしている人を2022年には高頻度で目にしました。スキルが曖昧なサラリーマンの方がスタートアップで働けば市場価値が高まるのではないかと思い、「経験を積み」に副業するケースです。

「修行希望のアマチュア」と面談したスタートアップから、「スタートアップは学校ではない。勘弁してほしい」というお声を多くいただきました。

ジョブ型へ社会が移行する過程で、このようなミスマッチはしばらく続くと思いますが、個人は会社と契約するのではなく、仕事(ジョブ)と契約するというポジティブな社会変化の渦中と受け止め、アマテラスはスタートアップ副業のトレンドを後押ししていきたいと思います。

アーリースタートアップの採用にとってはボーナスステージ到来

『ピンチはチャンス』、『不況もまた良し(松下幸之助)』という言葉がありますが、危機は決して悪いことではありません。むしろ採用アクティブ企業にとってはチャンスになります。
普段なかなか採用出来ないような優秀人材と出会えるチャンスが増えるからです。

リーマンショック時に採用市場に出てきた優秀人材を採用してAirbnb、Square、Uber等は急成長しました。

2023年前半にかけて日本で起こることとしては、
・B2B、SaaSのメガベンチャーを中心に社員が流出
・外資IT、外資金融からも社員流出
が予想されます。

2022年末にはツィッターのレイオフは日本支社でも起こっており、同社人材がマーケットで採用できる状況になりました。

アーリーステージのスタートアップや不況の影響をあまり受けないディープテック企業にとっては採用のボーナスステージが到来すると考えてよいでしょう。

2022年前後に大型の資金調達をし、積極的に人材採用をしたSaaSのレーターステージ、メガベンチャーの多くは株価を下げている状況で、GAFAのような大規模レイオフが難しく、積極採用に打って出られない状況です。

求職者(キャンディデート)の視点で言えば、勢いがあり成長機会が多そうなメガベンチャーに入社したものの、想定していたような仕事が出来ない状況になっており、裁量が大きなアーリーステージのスタートアップが視野に入ってきます。転職をしない方でも、成長機会を求めて副業先を探す方が増加するでしょう。アマテラスサイト内でも副業希望者の増加傾向は顕著です。

ただし、先程述べたように、エンジニアについては採用慎重企業であっても採用継続することが多く、採用難度はさほど変わらないでしょう。採用しやすくなるポジションとしてはビジネスサイド(事業開発、マーケ、営業)が主になるでしょう。

大企業人材への注目度アップ

2023年はスタートアップ転職において大企業人材のプレゼンスが上がるとアマテラスは考えています。

・大企業がスタートアップの製品(プロダクト)、サービスを買う
・大企業がスタートアップの技術を活用する

という流れが2022年が目立つようになり、「オープンプラットフォーム」という言葉が定着しました。2023年はこの流れがさらに加速するでしょう。スタートアップは「冬」の時代が続く一方で、日系大手企業は円安を受けて業績順調な会社が増加しています。

スタートアップは元気な大企業と手を携えて事業推進を加速させていくと考えますし、その方が日本にとっては良いことだと思います。
アメリカでは大企業がスタートアップのプロダクト・サービスを活用し、スタートアップを買うこと(M&A)にも積極的です。市場が小さい日本でスタートアップと大企業が溝を作っている場合ではありません。

そういった背景からすると、スタートアップ側が求める人材は、大企業の組織構造を理解する、オトナのビジネスパーソンになります。大企業の内部に詳しい40代の(大企業の中での)若手層はスタートアップからすれば経営幹部候補として迎えられそうです。

2023年はスタートアップにとって「冬」の時代になりそうではありますが、不況もまたよし、です。

2022年、旅行で訪れた比叡山延暦寺の石碑にこう書かれていました。
「そなえよつねに」

比叡山延暦寺にあるボーイスカウト石碑

2023年はこの言葉とともにアマテラスも歩んでいこうと思います。
今年もよろしくお願いいたします。


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