【書評】【ファシリテーションの教科書】

せっかく会議の場を設けたのに「伝えたつもり」「わかったつもり」「合意したつもり」になっていて理解しあえていない、合意形成がきちんとできない。そんな課題の解決を図るための具体的な方法論をまとめた一冊です。

例えば、問題が出た時は何かと「なぜそうなったんだ!」と叫ばれがちですが、いきなりそこを論じても話がかみ合わず進まない、というのは多くの人が経験してきたと思います。
実は、このなぜ(Why)の話というのは、その前提として目指す姿(What)は何か、理想と現実の差・問題はどこにあるのか(Where)を順番に整理し、認識を合わせてこそ有意義な会話が出来るんですね。

こういった感じで、本書では問題を分析し、合意形成に至るための道筋を体系的に整理した上で実践的なノウハウに落とし込んでいるのが魅力です。
ベテランの方々にとっては既に理解・実践している要素も多く含まれていると思いますが、様々な内容をきちんと体系立てているので、今までの自分の考え方や実践方法と照らし合わせながら読んでも参考になるかと思います。

使用頻度が高い割に定義が不明瞭になりがちな「論点」等の言葉の定義もしっかりなされているので、そういった部分でも基本に立ち返れるので便利です。

また、本書の内容の中でも重要な前提となって出てくるのが「リアルタイムでの議論は発言者自身が主旨をはっきり出来てない事も多く、参加者がその場で考えられるだけの頭のリソースにも限りがある」という点です。
限界があるからこそ、事前の準備としての「仕込み」と当日の動き方の「さばき」に分けることで、天才的な人でなくともファシリーテションがこなせるように、技術として身に着けることができるわけですね。

読んでいて気づくのですが、実はこれらの技術はファシリーテションをする側の人に限らず、会議に参加し発言する側の人にとっても、今の議論の状況や参加者の発言内容を理解する手引きになるノウハウなんですね。

新人・ベテラン問わず広く読んでもらうことをお勧めしたい一冊です。なんなら社内研修の教科書に使っても良いくらいでしょう。

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