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【江ノ島】日本一のバーが江ノ島に!? バー探訪記 Bar d(バード) 20230422

「かわいさん、江ノ島にあるBar d(バード)には行かれましたか?」

ある日、懇意にしているバーホッパーの方からいただいたメッセージでした。
「もしかするとあそこは日本一のバーかもしれません。」

日本一?しかも江ノ島に??まさかそんな…

疑心暗鬼なかわい。
しかし、渋谷のバーテンダーの方にも神奈川のほうに行くことがあれば絶対行ったほうがいいと言われ、皆さんがそこまで言うバーってどんなバーなんだろう、とずっと興味を持っていました。

そして、ちょうど鎌倉に用事があった今回、Bar dに伺うことにしました!

江ノ電での移動

Bar dは小田急の片瀬江ノ島駅の目の前にあります。
ですので、小田急線沿いにお住いの方や小田急線へのアクセスがよい方は、小田急線を使ってダイレクトに向かったほうが効率がいいです。

私は鎌倉に用事があったので、東京方面からまずはJRで鎌倉まで。そこからは江ノ電で江ノ島駅まで移動しました。

初めてスーツを着て乗り込む江ノ電。周りは観光客っぽい方ばかりでめちゃくちゃ浮いてました笑

鎌倉駅から久々江ノ電に乗り込む

(ここからは余談になるので「Bar dについて」まで飛ばしていただいて結構です笑 サザンファンの方はぜひ読んでください!)

私はこのあたりに来た時には必ずサザンオールスターズの曲を聴きます。

というのも、両親がサザン大好きで私の名前も「けいすけ」。ピンとくる方はたくさんいるでしょう。ボーカルの桑田 佳祐さんからいただいた名前です。

小学生の頃とかは桑田さんと一緒な名前って正直うーんって思ってました。

今でこそ落ち着きましたが、まだ20年前くらいって桑田さんは下ネタもガンガン言ってましたし、ある程度の歳になると「マンピーのGスポット」の意味が分かってきたりするわけじゃないですか。
なんかとんでもない方から名前をもらってしまったな、と思うわけですよ笑

でも、成長するにつれてサザンの沼にどんどんハマっていくんですよ。
メロディーのすばらしさはもちろん本当に歌詞が深い。

「彩 〜Aja〜」の「一番大事な女性(ひと)へ サヨナラはプレゼント アモーレ 涙で滲む 星を指輪に変えて」とか
「真夏の果実」の「マイナス100度の太陽みたいに 身体を湿らす恋をして」とか
「LOVE AFFAIR~秘密のデート」の「この首筋に夢の跡」(キスマークのこと)とか…
もう挙げだしたらキリがないわけです笑

ドラムの松田 弘さんも語っていましたが、桑田さんの書く詞って本当にクオリティがずば抜けていると思います。

そんな何度もサザンの楽曲には背中を押されましたし、どんな時でもサザンを聴いてきました。もちろん今でもサザンや桑田さんのソロの楽曲たくさん聴きます。

そして、何より桑田 佳祐という偉大な男から名前をいただけたことに感謝しています。

すばらしい5人組(サザンオールスターズ公式HPより引用)

今回も江ノ電の中でサザンの楽曲をシャッフル再生しました。
最初は「真夏の果実」からの「心を込めて花束を」。至極のバラードを聴きながらで江ノ島駅まで向かうわけです。
(語りだすと止まらないのこのへんで笑)

福井県出身の私にとって海といえば荒々しい日本海…
やはり太平洋のおだやかで雄大な雰囲気にサザンはぴったりですね。

こんなことをしているうちに稲村ケ崎や七里ガ浜を通り越して、とうとう江ノ島駅に着きました。ここから徒歩5分少しでBar dです。

Bar dについて

ほとんどの方は江ノ島方面に行きます。そりゃあ当たり前です。私のようにバーに行くためだけに江の島に来ている輩はなかなかいないと思うので笑

江ノ島に渡る江ノ島大橋を正面に見ながら右折し、弁天橋を渡って片瀬江ノ島駅方面に向かいます。
この弁天橋がかかる川が片瀬川です。

サザンの「SEA SIDE WOMAN BLUES」の歌詞内「江ノ島に明かりが灯る頃 艶づくは片瀬川」の片瀬川です。
弁天橋を渡って左手に見えるこの片瀬川沿いのバーがBar dです。

外観はこんな感じ

やっと来れた…
ドキドキ1割、ワクワク9割の気持ちで扉を開けます。

17時半頃に訪れましたが、先客は4名いらっしゃいました。カウンターが6、7席、それ以外には4人掛けの席と2人掛けの席がそれぞれ1つずつあります。

決してカジュアルではない。上質なオーセンティックな雰囲気のバーです。

店名の由来

私も最初はBar dを「バー・ディー」と呼んでしまっていましたが、正しくはBar dと書いて「バード」です。

入ってすぐのタイミングで、バーの奥のほう、セルリアンブルーの壁の前にはサックスが置いてあることに気づきました。
そう、このサックスが店名のBar d(バード)と深いつながりがあるのです。

ジャズ界でバードといえばあの人しかいない。モダン・ジャズの父とも言われるサックス奏者チャーリー・パーカーです。チャーリー・パーカーの愛称がバードであり、これがBar dの店名の由来ともなっているようです。

チャーリー・パーカー(BLUE NOTE CLUBより引用)

ジャズはバーで流れていることが多いこともあり、私も興味があってたまに聴いたりします。ほんの少し知識を蓄えてもいたので、チャーリー・パーカーのことは知っていました。
かつ、前日にジャズを題材にしたアニメ映画「BLUE GIANT」を観ていたので、なおさらテンションが上がってしまいました。(単純…)

Bar dの田辺マスターは自らのサックスを吹かれるそうです。
店内にはレコードのよい音色が広がっています。やはりレコードで聴くジャズは格別ですね。

①ギムレット

カウンター席に空きがあったので、カウンター席にお邪魔したかわい。

右隣は明らかバーに慣れているお客様のようで、ハードリカーと葉巻を楽しまれていらっしゃいました。

左隣はなんと20歳ちょっとの女性2人組が!(女性の年齢は分からない…でも間違いなく私より年下でした笑)

すっきりしたカクテルとか甘くて飲みやすいカクテルを、なんてオーダーをしていて、「こんな適当ですみません」とかおっしゃっていましたが、田辺マスターは「全然いいんですよ。」と笑顔で答えられていました。

本当にそう。全然いいんです。
こうやって若い世代の方がバーに来てくださっているだけで私はうれしいです。

私は迷わずギムレット。
初めていくバーでは最初はギムレットという謎のマイルールです笑

こうしてオーダーされたお酒を田辺マスターは丁寧に作ります。
本当に丁寧。ゆえに時間はかかります。
しかし、そんなことはどうでもいい。ゆっくりお酒を楽しむためにバーに来ているのだから。

ギムレットのベースはヴィクトリアンバット冷やした(たぶん常温ではなかった)ゴードンです。
ふむふむ、複数種のジンをベースにするわけですな。

シェイカーにジンを入れ、ここにライムジュースとてんさい糖らしきものを加えていきます。

一気に4杯(隣の女性2人組のオーダーに加えてブラッディメアリーが1杯入っていたようでした。)作っていくため、しばらくシェイカーの中で私のギムレットはおやすみです。

3杯作り終えた後に田辺マスターがとうとう私のギムレットを作るため、シェイカーに手を伸ばします。
氷を入れいざシェイク開始!

上から下に振り下ろすシェイク。
あれ?これどこかでみたことあるぞ…


3月に訪れた京都のタリスカーの内田マスターと同じシェイクであることに気づいたかわい。

実はBar dは田辺マスターが初めて出店したバーではないのです。

銀座にあった名門バー、Bar Dolphy(バードルフィー)を経営されていたのも田辺マスターでした。内田マスターも銀座にいらっしゃったのでなにかつながりがあるのかなと思いました。

それはさておき、美しい手つきで注がれるギムレット。仕上げにライムピールを絞り、ピールでグラスの淵を半周ほどなぞります。

私の元に提供されたギムレットがこちら!

ギムレット

足の長いカクテルグラスではなく、小ぶりなカクテルグラスで提供されました。

一口いただく。
うん、甘みが強めのギムレットです。ドライなギムレットが好きな人には向いていないかも。うん?でもこれは…

甘みを感じた後に爽やかな酸味が一気に押し寄せてくるのです。
確かに最後ライムピールを淵につけていました。しかし、それだけではない。ここまでライムのさわやかな酸味の輪郭がはっきりしたギムレットを飲むのは初めてです。

まじで甘みと酸味のバランスが整い過ぎている。
もうニヤニヤが止まりません笑

そして、ギムレットに合わせて提供してくださったのはミルク感の強いチーズ。
周りを見渡すとみんな違うチャームをもらっているのです。

「これすごくギムレット合うから一緒に食べてみてください。」
そう、提供したカクテルに合わせて提供するチャームを変えているようです。

こうした心遣い本当にすばらしい…

②サイドカー

すごく気になったので聞いてみました。
「3月に京都のタリスカーさんに伺ったのですが、マスターは内田マスターとよく似たシェイクをされるんですね。」

「内田さんのこと知ってるんだ!ほら、内田さんも銀座でやってたし僕も銀座で前はやっててさ。同じ7丁目だったから仲良くさせてもらってたんですよ。それで内田さんは僕のシェイクのマネをしてるんです笑」

田辺マスターはそんなこと笑顔で語っていました。タリスカーの内田マスターとはかなり近い間柄であることが分かりました。

そんな話をしながらニヤニヤが止まらないかわいは早々にギムレットも飲み終えてしまったので、次はジンベース以外のおすすめのショートカクテルをいただくことにしました。

田辺マスターが手を伸ばしたのは見たこともないようなボトル。うん?ブランデーかな…それにしてもかなり年季の入ったボトルだぞ…

コアントローとグラン マルニエも置かれたため、これは間違いなくサイドカーであることが分かりました。
口には出さないもののサイドカーはかなり気になっていたので、テンションがぶち上がりました笑

手慣れた手つきでサイドカーを作っていく田辺マスター。
シェイクは先ほどと同じく上から下に丁寧に…

そして、提供されたサイドカーがこちら。

サイドカー

グラスに奇抜さがあるわけではありません。
しかし、ただならぬオーラを放っている一杯。

「サイドカー飲みたいなと思っていました。」
「何となくそんな気がしたんですよ。お楽しみください。」

田辺マスターとそんな会話をしながらサイドカーを口に運ぶ。

うーーーーーん、これもすごい…
ブランデーの芳醇な香りをレモンジュースやリキュールがさらに押し上げてくる。
ブランデーの魅力が最大限引き出されたサイドカーでした。

サイドカーってのっぺりした味わいであることが多いように思っています。

私はそののっぺり感も大好きなんですが、田辺マスターのサイドカーはブランデーのよさを最大限目立たせるために、締めるところは締める、ゆるめるところはゆるめるといった緩急がはっきりしている印象でした。

使っていたブランデーについて、後ほどスタッフの廣島さんにお聞きしたところ、ブランデーベース、ウイスキーベースのカクテルにはオールドボトルを使うことが多いとのこと。

ブランデー1本1本のよさをしっかり理解した田辺マスターがオールドボトルを用いて作ることに大きな価値があるように思います。

「次に来てくださった時に同じサイドカーが飲めるとは限らないんですよ。オールドボトルなので数が限られていて…」と廣島さんは付け加えた。

本当に貴重なサイドカーをいただけたことに心から感謝したい…

③マンハッタン

マンハッタンの前に…

ちょっと尿意をもよおしてしまったので、お手洗いに向かいました。
バーの一番奥にあるお手洗い。なんとそこには…バスタブがあったのです!

これはもちろん装飾ですが、まさかこんな装飾があるとは思ってもいなかったのでびっくりしました。
田辺マスターの遊び心大好きです笑

Bar dの魅力はおいしいカクテルだけではありません。
バスタブもそうですが、この片瀬川沿いの立地と窓から望める江ノ島。外の風景までも味方につけて演出する圧倒的な舞台。
これは日本中探してもここにしかない魅力ではないかと思います。

締めのマンハッタン

これまで2杯はシェイクで作るカクテルをいただいたので、最後はステアで作るマンハッタンをいただくことに。
ベースもジン→ブランデー→ウイスキーとなるので、ちょうどいいかなと思いました。

「じゃあ、ハーパー取って。」

そんな一声を田辺マスターが廣島さんにかけました。
ハーパーってI.W.ハーパー?あれをベースにするなんて珍しいなあ。

そう思っているとカウンターにもう2本アメリカンウイスキーが並びます。
これはどういうことだ??しかもハーパーのボトルは見たことのないボトルです。

田辺マスターはマンハッタンになんと2種のアメリカンウイスキーを使っているのです!
・I.W.ハーパー(オールドボトル)
・オールドフォレスター
・テンプルトン

ハーパーはオールドボトルを使っていたので見たことないわけです。
この2種が組み合わさってどんなマンハッタンができるのか楽しみすぎます。

ステアも丁寧にゆっくりと行われていきます。
美しいステアを見ていると時間が止まったような感覚に用いることがあります。田辺マスターのステアを見ている最中も何秒か明らかに時間が止まっていました。

ちょうど日も暮れ、また違った雰囲気がBar dを包み込みます。

提供されたマンハッタンがこちら。

マンハッタン

こちらもグラスでなにか奇をてらうわけではありません。早く飲んでみな、とあちらから声をかけられているような感じもありました。

すぐに一口…
うわあああああ、コ、コクがやばすぎる…

そうなんです、本当にこれまで飲んだことのない深みのあるコクが魅力のマンハッタンでした。

しかし、それだけではないんです。
このコクや深みとまろやかさが共存しているんです。

さっきのギムレットの甘みと酸味と同様、マンハッタンも二段活用でした。
こんなマンハッタンは初めて…

マンハッタンを飲む際にはカルバドスを入れたスイーツを提供してくださいました。これもまたマンハッタンのよさを一気に増幅させていました。
何から何まで本当にうれしい。

最初のギムレットでニヤニヤが止まらなくなったかわい。このマンハッタンをいただいた時には感動して涙が出そうでした。
大袈裟なことを言っているわけではなく、本当に目の奥に熱いものを感じました。
それくらい衝撃的な一杯。

窓の外の片瀬川も艶づき始めていました。

まとめ

3杯飲んでお会計をいただきました。
ブランデー、ウイスキーはオールドボトルが使われていたため、これはかなりの金額になってしまうだろうと覚悟をしていました。

しかし、お会計は「6000円」でした。

ここまで貴重な体験をさせていただいて6000円というのは正直安すぎます。
客側としてはありがたい意味でサービスと価格のバランスが取れてないバターンです笑

お会計をしている時にすでに自分はもう一度ここに戻ってくることを心に決めました。

バー巡りをしているといろんなバーやバーテンダーに出会います。もちろん自分には合わないなと思うことも多々あります。
しかし、その一方で今回のBar dのように心から感動できる瞬間もある。

私はこういったすばらしい出会いを求めてバー巡りをしているんだろうなと改めて感じました。

帰り際には田辺マスター、廣島さんお二人で玄関の外までお見送りをしてくださいました。

名刺を持っていなかったかわいは名前だけ伝えて、お二人の名刺を一方的にいただく形となってしまいました…

そろそろBAR Compassの名刺も完成するので、次伺う際にはお二人にBAR  Compassの名刺をお渡ししたいなあ。

遠く見える江ノ島

外はもう真っ暗。遠くに江ノ島が見えます。
程よい潮風を受けながら最後に少し離れた弁天橋の上からBar dを見つめました。

必ず帰りたい。
心からそう思えるバーにまた巡り合えました。

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