もう一度、作家・加藤シゲアキさんの産声が聞こえた

「ジャニーズだから出版出来る」

このコメントの隙間からは、血が滲んでいるように見えた。


自分自身ドライな一面がある上で言うと、まだそこまでファンではなかった当時の私もそれは思っていた。いや、本を全く読まない素人が何言ってんだって話なんですけども。加藤さんのおかげで読むようになったんですけども。

大きな事務所で、話題にもなるし、だからこそ世に出せる、と。

そして、恐らくそれは加藤さん本人が一番よく分かっているんだろうな、と。


でも加藤さんは、私が想像していたよりもずっと、ずっとそのことを理解していた。痛いくらいに、自分と自分のいる場所というものを客観視していた。

そして思っているだけではなく、言葉にしていた。まるで、言葉にすることで自分への戒めにするかのように。自惚れるな、とも、周りへの感謝を忘れるな、とも感じ取れた。


奥歯を噛み締めるようなそのコメントは、加藤さんの作品を目にするたびに心に浮かんできた。


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文学賞を取るということ。

それはもちろんとても素晴らしく名誉なことだと思う私の隣に、賞を取っていなくとも面白いものだってあるじゃんと捻くれた私も確かに存在している。

ただ、そんな捻くれた私が本を選ぶきっかけの一つに、文学賞が入っていることも確かだった。



先に言った通り、私は元々積極的に本を読むタイプではなく、苦手意識があった。

けどそれを変えてくれたのが加藤シゲアキさんだった。

本を読む楽しさと一緒に、全てを楽しむ必要もなく、読んでみて合わないという感想があったっていいということを教えてくれた。


そんな私が読みたい!と本を手に取る基準はだいぶシンプルだと思う。

加藤さんの本とか、好きな方がお勧めしてくれた本、あらすじや表紙から直感的に選ぶ本。

そして、文学賞。

賞を取っているということは面白いんじゃないか、という勝手な判断基準から作品を選ぶこともある。あと、話題になってるし知っておきたいというのもある。


その辺にいる一読者な私にとって、文学賞とはそういうものだった。


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加藤さんの作品、「オルタネート」が直木賞にノミネートされたと聞いた時。その凄さをどう表せば良いのか分からなかった。

とんでもなく頑丈で気品溢れる、狭くて小さな部屋へ入れたような感覚、で良いのかな(上手い表現方法が見つからない)


ただ、魂を込めて書いた加藤さんの作品が、色んな人に読まれても良いくらい素敵なものだって裏付けしてくれたみたいで、とにかく嬉しかった。

嬉しくて嬉しくて、こうして真夜中にまとまらない気持ちを書き殴るくらいに嬉しい。


捻くれた私のように、賞にノミネートされたから読んでみようという方がいるかもしれない。

ジャニーズで、NEWSの加藤シゲアキさんが書いた作品がもっと知れ渡るきっかけが、ここで生まれたのかもしれない。

つまりもう一回、作家としての加藤さんが生まれたということなのかもしれない。


作家として最初に生まれたのがデビュー(発売)した時だとしたら、これはもう一度産声が響いたんじゃないかなと、横になりながらそんなことを考えた。


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直木賞ノミネート、おめでとうございます。

オルタネート、本当に読みやすくて面白くて、大好きです(早く最終話の感想書きます)

コロナで療養中にこの知らせを受けて、それが少しでも加藤さんが元気になる薬になっていたらいいな。ちょっと痩せた姿に胸がキュッと痛んだけど、これから。ゆっくり取り戻せるはずだから。


あー、あー!とにかくすげぇ!嬉しい!加藤さんの作品がまた広まれば良いな!の気持ちだけで書き殴りました。なので今、着地点が見当たりません。どうしましょう。


とりあえず、生まれたってタイトルに因んで泣いておきます。おぎゃー!








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