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吹奏楽の名曲と言えばこれ

吹奏楽にも関わっているのですが、コンクール文化の盛り上がりもあって、毎年多くの作品が出版されています。オリジナル作品、アレンジ作品、ポップス作品…この国には多種多様な吹奏楽作品が、誰の手にも届くような環境で揃っています。さまざまな音楽への興味の入り口として、吹奏楽は素晴らしいポテンシャルを持っているのです。

今回は吹奏楽のために書かれたオリジナル作品で、最大の名曲として有名なものについて、2種の録音を紹介します。曲は、G.ホルスト作曲/吹奏楽のための第1組曲です。

1.簡単な作品紹介

ホルストはイギリスの作曲家、クラシック音楽の大家であり、代表作は組曲「惑星」です。

(↑レヴァインの惑星はハリハリしてて良い)

中でも「木星」が有名でしょうかね。

さて彼は軍楽隊のために2つの組曲を残しました。もともとイギリスは管楽器文化が盛んだったらしいですね、炭鉱夫の嗜みとして広がっていたという話を聞いたことがあります(今でも金管バンドが世界一盛り上がっている国ですね!)

そのうちの第1組曲。1楽章シャコンヌでは、冒頭の旋律が何度も繰り返されながら、壮大な展開を続けていくという典型的なシャコンヌ形式(=パッサカリア)をとっています。途中主題が反行形になったり、調性が変わったり、工夫されています。

2楽章はインテルメッツォ(間奏曲)。木管楽器の響きがたいへんな魅力です。中間部のクラリネットが、ソロで息の長い旋律を演奏します。

3楽章はマーチ(行進曲)。金管楽器と打楽器によって勇壮な音楽が展開します。中間部からは正に「英国式! ブリティッシュ!」と言えるような、気品あふれる旋律が演奏され、コーダでは2つの旋律が混ざり合って興奮の中に曲を閉じます。

この曲が吹奏楽にとって永遠の名曲たり得ているのは、特別な物語や背景を必要としない純音楽として、厳然たる音楽的価値を誇っているからです。そして(これは大変重要なことなのですが)演奏難易度がそこまで高くない。多くに人にとって取り組みやすく、しかも聴きやすい。だからこそ、これからの時代にも愛され続けていくだろう名作になっています。

2.おすすめ演奏その1

F.フェネル指揮/クリーブランド管弦楽団管楽セクション

ホルスト:吹奏楽のための組曲第1番&第2番 https://www.amazon.co.jp/dp/B0001ZX5BA/ref=cm_sw_r_cp_api_i_ieSKEbM0EE76B

アメリカの名門オーケストラの、管楽器セクションの人たちが、吹奏楽史上最重要な指揮者フェネルの指揮で演奏した録音です。
まぁこれは永遠の名盤ですね…。一聴しただけで、音色の違いに驚かされるし、「表現の積極性」が他の演奏と桁違い。特に打楽器…というかバスドラム!! どこにマイク置いてるのかな? っていうぐらい、大事な場面でズドンと来てくれます。分かってて聴いてもちょっと笑いそうになります。多くの人に聴き継がれてほしいですね。

3.おすすめ演奏その2

ティモシー・レイニッシュ指揮/ロイヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージック・ウインドオーケストラ

Holst Vaughan Williams British Wind Band Classics https://www.amazon.co.jp/dp/B00000I0TH/ref=cm_sw_r_cp_api_i_rkSKEbSDXWQ7E

イギリスの音楽大学による演奏ですが、素晴らしいです。
全編にわたって透明感のあるサウンド、流麗なフレージング。特に3楽章マーチの、2つの旋律が混在する部分が、ここまで美しくメロディアスに演奏された録音を私は他に知りません…。

新旧含めて数多くの録音を聴きましたが、正直ダントツで愛好しています。是非ともご一聴ください。

4.終わりに

というわけで今回はホルストの第1組曲について2種の録音を紹介しました。前述しましたが、吹奏楽作品は音楽的完成度と同時に「演奏のしやすさ」が存在価値に大きく影響します(してしまいます)。市場との影響関係が強いからですが、この作品はそのどちらもが高いレベルで満たされているので、未来永劫、評価され続けていくでしょう。

5.余談

ちなみにどちらの録音にも、「第2組曲」や、ヴォーン・ウィリアムズによる「イギリス民謡組曲」がカップリングされています! どれも名曲・名演奏ですので、是非合わせてお楽しみくださいませ。

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