見出し画像

スイング案件

「積極的にいけよ、振らないと分からんだろ!」

高校までやってた野球で、指導者からよく言われた。

「いやいや、俺の狙いとかリズムがあるから」「好きな球を打たせてよ」。

1球目のストライクを見逃した時にかけられる、ベンチからの声は、本来MAXであるべき打席での集中を逸らす。

ベンチからの声にちょっとでもムカッとなる自分は、たいてい次の緩いカーブを引っ掛けて緩いサードゴロに倒れる。

ベンチまでのっそり帰ってヘルメットを脱ぐと少し冷静になって「空振りでもいいから初球の真っ直ぐ振ればよかったな」っていつも思う。

「真っ直ぐが得意なのにな」

でも試合が終わってみんなと人狼ゲームやってる時にはそんなん忘れてる。


今なら当時の自分に言える。というか言いたい。

「そんなんだから、ベンチなんだよ。課題出たなら試合後に反省するなり練習するなりしろよ。中学でバリバリ正捕手だったっていう、そのダサいプライド捨てて泥臭く練習しろよ。何バイプレイヤー気取ってんだよ、お前は滝藤賢一じゃねえんだよ、控え部員Dだよ。ちなみにDは童貞のD。クラスでは硬派感出して、部室ではペラペラ喋るの内弁慶なネットgあisfwhf%ytfnえgsfg!!!!!!!!!!」


要するに

トライしていないと

①絶対失敗しないけど、成功も絶対しない 

②失敗しないから、自分の実力と目標との距離が分からない

③目標に近づけないから、成功のイメージができずトライするハードルが上がる

ってこと。伝わります?


高校球児を引退して6年経つのに、テレビADになった今でも隔週で打席が回ってくる。

「ネタ出し会議」と呼ばれるその打席は、ADが自分のバッティングを見せる数少ないチャンス。ましてや作家に興味ある自分としては、鼻息荒くしきゃいけない場面。「見ろ!これが俺のバッティングだ!」って演出という名の監督に見せなきゃいけない。

ところがどっこい、この打席で最近結果が出せない。というかバットを振れない。

「情報番組だから自分の得意な感じのネタが出せないなあ...。」

「作家志望っていう体で入ってきてるから変にハードル上がってる気がする...。」

「変なネタでスベったら怖い、変なやつって思われないかな...。」

ここで気づく。

「...あれ?いろいろ言い訳してたけど、結局高校球児の時も同じような理由で積極的に振れなかっただけじゃない?」

「代打で出るの慣れてないから自分の得意な感じで振れないなあ...。」

「こんな場面で代打ってなんかハードル上がってる気がする...。」

「変なバッティングしてしまうのが怖い、ヘタクソって思われないかな...。」

なんも成長してない。23歳なのに17の時と変わらない。


振らないから何も起きないし、自分の現状もわからない。振ったら何か起きるかもしれないし、失敗しても現状の自分と目標との距離がわかる。

振らないと。

ボツにされても空振りしても、スベっても笑われても空振っても振らないと。


監督、いや演出。精一杯振るので僕のバッティング見てください。

カーブは苦手ですが。


(ヘッダーの画像は僕ではありません。他のnoteユーザーの方が投稿されている画像を公式の方からお借り致しました。素敵なお写真をありがとうございます。)