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【カンヌライオンズ/Cannes Lions】ダイレクト部門歴代グランプリまとめてみた PART 2

こんにちは、あおきかい(@onakaitaiyurui)です

この記事ではカンヌライオンズ(正式名称:カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル)の2011年~2019年の「ダイレクト部門」のグランプリをすべてまとめています。

※カンヌライオンズについては以下公式サイトをご覧ください

それでは早速紹介していきましょう!

2011年ダイレクト部門グランプリ:「The American Takeover」

■Brand
Rom
■Agency
McCann Worldgroup Romania

ルーマニアのチョコレート菓子「ROM」に対する、国民からの支持を高めることを目的に実施されたプロジェクト。

1989年のルーマニア民主化以来、「ROM」はパッケージに国旗をモチーフとしたデザインを採用し、長らく多くの国民に愛されてきた一方、近年、若者にとっては「ダサいお菓子」の典型となり支持が薄れつつありました。

▼パッケージイメージ

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そこでメーカーが目を向けたのが、ルーマニア国民の愛国心。

プロモーションの第1段階として、「ROM」のパッケージを以前のルーマニア国旗から、アメリカの国旗をモチーフにしたデザインに刷新、パッケージ変更についてTV-CMや店頭キャンペーン、WEBサイトなどで告知を行いました

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その結果、ルーマニア国民からは「元のデザインに戻せ!!」といったデザイン変更への非難、批判が大量に続出し、愛国心に火をつけることになりました

非難・批判のムーブメントはFacebookでも発生し、ニュースなどにも取り上げられたそうです

(ちなみにここまではすべて「ROM」の想定内)

その後、プロモーションの第2段階として、一夜にしてパッケージデザインを元のルーマニア国旗のデザインに戻し、アメリカ国旗へのデザイン変更は「ジョークであったこと」をTV-CMやWEBサイトなどで告知しました

そして非難・批判を行った国民に対し、「ルーマニア人の愛国心の再発見」を「(国民)みんなで喜びましょう」と市民に呼びかけました

このキャンペーンは、「狙い通りに愛国心に基づいた批判・非難を噴出させた」という点で、非常に優れた炎上マーケティングの事例です

その結果。このキャンペーンは67%のルーマニア国民に到達、広告換算で300,000ユーロものフリーパブを獲得し、何千もの「ROM」に対するブログ上での議論が生まれ、「ROM」のFacebookのファンはわずか4日間で20000人増え、6日間で従来より300%増加したそうです。

さらに驚くことにブランド指数(「このブランドは自分のためのブランドである」と考える人の割合)は124%増加、同市場で圧倒的な20%ものシェアを獲得しました。

▼定量・定性効果については以下参照

2012年ダイレクト部門グランプリ:「Small Business Gets an Official Day」

■Brand
American Express Open
■Agency
CP+B

アメリカの年末商戦における中小企業のビジネス活性化を目的としたプロジェクト。

アメリカでは11月の第4金曜日がブラックフライデー、その翌週月曜日がサイバーマンデーと呼ばれており、アメリカ全土の小売りが一斉に盛り上がる日とされています

しかし「ユーザーの集中が大手の小売り企業に偏ってしまう」という課題がありました

そこでブラックフライデーとサイバーマンデーに挟まれた土日を、中小企業のビジネス活性化に貢献する週末にしよう、と実施されたのが、「Small Business Official Day」です

具体的には、中小企業先着1万社に対するFacebook広告枠の無償提供、参加企業でアメリカンエキスプレスカードを利用したユーザーへのキャッシュバック、プロジェクト浸透を目指した各地域コミュニティーへの草の根活動などを実施しました

その結果州知事や市長が協力と積極展開を公言し、オバマ大統領までもがハッシュタグ(#SmallBusinessSaturday)をつけてツイートしました

消費者にとってはキャッシュバック、中小企業にとっては売上の向上、アメックスにとっては、新規会員獲得や既存会員のロイヤリティアップ、というようにそれぞれのメリットが巧みに設計されたプロジェクトです

2013年ダイレクト部門グランプリ:「Dumb Ways to Die」

■Brand
Metro Trains
■Agency
McCann Melbourne

メルボルン地下鉄、METRO TRAINSが電車事故を減らすことを目的に実施したプロジェクト。

メルボルン地下鉄のプラットフォームや構内では、安全に関するお知らせや警告が表示されている一方、積極的に安全性をアピールできておらず、電車事故は減少するばかりか、年々増加していました。

そこでメルボルンの地下鉄 METRO TRAINSは市民の電車事故防止を啓蒙するためにあるアニメーション動画「Dumb Ways to Die(マヌケな死に方)」を配信しました。

動画内では、クマを棒でつついてクマに食べられたり、狩りの解禁された森でエゾジカの着ぐるみで歩いたり、などの「Dumb Ways to Die(マヌケな死に方)」と共に「踏切を無視して線路を渡る電車事故」がリズミカルに紹介されました。

キャンペーンの動画コンテンツはSNSにて配信、キャンペーンソングはSound Cloud, iTunes,や地元ラジオ局などの様々なメディアをコミュニケーションプラットフォームとして配信されました。

オフライン施策として、駅構内に動画に登場するキャラクターが壁に描かれたエリアを設置することで、UGC創出を促しました。

様々なアプローチで発信したことに加えて、公式側から歌や動画のコピーやカバーを許容、デジタルでのシェアを促したことで、二次創作や話題化を促進することに繋がり、その結果カンヌライオンズ2013において史上最多の5部門での受賞を達成しました。

「電車事故の防止」という自分ゴト化されずらく、ネガティブなメッセージをポップな歌とアニメーションによって訴求した点が非常に優れている事例です。

またアニメーションはバレンタインやハロウィンなどのモーメントに合わせて追加で制作され、こちらも大きく話題を呼んでいます。

2014年ダイレクト部門グランプリ:「Magic of Flying」

■Brand
British Airways
■Agency
OgilvyOne Worldwide London

イギリスの航空会社が実施した屋外広告を巧みに活用したプロジェクト。

一見少年が描かれた普通の屋外広告に見えますが、実はこの広告にはとある仕掛けが。

ブリティッシュエアウェイズの飛行機がこの広告の上空を通過する瞬間、少年が突如現れ、現実に飛んでいる飛行機を指さしながら歩き出し、その横には飛行機の行き先と便名が現れるのです。

この屋外広告は、実は機体の位置情報と連携しており、ブリティッシュエアウェイズの飛行機が近づくと映像が流れる仕組みになっています。

最新技術を活用することで、あたかも魔法のようなデジタルサイネージを実現させることで、同社の飛行機が上空を浮かぶタイミングで、上空に注目させ、広告と同時に実際の機体を見せるアイデアが高く評価されました。

2015年ダイレクト部門グランプリ:「Interception」

■Brand
Volvo
■Agency
Grey New York

アメリカ最大のスポーツイベントであるスーパーボウル放映のタイミングに行われたインターセプトなプロジェクトです。

スーパーボウルはNFLの優勝決定戦であり、アメリカ国民のほとんどが注目する大会であるため、そのCM出稿料は非常に高いことで有名です(30秒で6億円とも言われています。)

そんなトップレベルのCM出稿料を支払い、CM出稿を行い続けてきたスウェーデンの自動車メーカーであるボルボですが、この年はCM出稿を取りやめました。

例年通り、フォードやキャデラックなどのアメリカの大手自動車メーカーはCM出稿を行う中、ボルボが実施したのはとあるデジタルキャンペーン。

それは他の競合自動車メーカーのCMが流れている最中に、自分がクルマをプレゼントしたい人の名前を#volvocontestを付けてつぶやいた人の中から抽選で実際の車をプレゼントするというもの。

「他の自動車メーカーのCMが流れている最中」という限定条件もユニークであるということから話題を呼び、多くのツイートがなされました。

アメフトのインターセプトに掛けて実施された巧みなデジタルキャンペーンです。

2016年ダイレクト部門グランプリ:「THE SWDISH NUMBER」

■Brand
SWEDISH TOURIST ASSOCIATION/TOURISM
■Agency
INGO Stockholm

世界で初めて言論の自由を確立したスウェーデンが実施した、「検閲制度廃止」250周年を記念して実施したプロジェクト

「世界で初めて検閲制度を廃止した国」という文脈と観光振興という目的をあるモノを使用することで両立し、実現しました。

それはスウェーデンの代表番号「+46-771-793-336」(THE SWDISH NUMBER)

この代表電話番号に電話をかけると、事前に一般公募、登録しているスウェーデン大使がランダムに選ばれ、スウェーデンについてどんなことでも教えてくれる。

スウェーデン在住のスウェーデン人であれば、誰でもスウェーデン大使に登録することが可能で、電話に出た大使は観光情報やイベント情報、国内の情報など、どんなことでも語ることが出来るようになっている。

通常観光施策となると、官公庁等が情報を整理し発信するのが一般的ですが、一般の国民の生の声を「代表電話番号」を設置することで広げ、「世界で初めて検閲制度を廃止した国」であるという訴求と観光振興という目的を実現しました。

実際にこの施策は大きく話題になり、キャンペーン期間(253日間)で、178ヵ国から12万8392本の電話がかかってきたそうです。

2017年ダイレクト部門グランプリ:「Google Home of the Whopper」

■Brand
Burger King
■Agency
DAVID The Agency


アメリカのバーガーキングが実施したGoogle homeのとある機能を巧みに活用したプロジェクト

バーガーキングはある仕掛けを施した15秒のTVCMを制作し、出稿しました。

その仕掛けとはCMの最後に「What is the Whopper burger?」と呼びかけることで、各家庭にある音声認識デバイスのGoogle Homeを起動し、、ワッパーについて詳しく説明させるというもの。

Google Homeの機能を巧みにハックすることで、15秒のCMの効果を拡大し、バーガーキングに関する理解促進を深めた施策になります。

またこのバーガーキングの施策に対し、Google側が音声認識のシステムをアップデートするなど、企業間のやり取りもあったことで話題化にもつながりました。

2018年ダイレクト部門グランプリ:「Palau Pledge」

■Company
パラオ共和国政府

観光客による環境破壊(海洋ゴミ、サンゴ礁破壊、密漁)を問題として抱えていたパラオ共和国が、解決策として世界初の環境保護誓約である「Palau Pledge(パラオ誓約)」への署名を入国者全員に義務づけたというプロジェクトです。

「Palau Pledge(パラオ誓約)」への署名は入国スタンプをリデザインすることで導入され、入国者は誓約文が書かれた入国スタンプをパスポートに押し、直筆でサインすることで入国が許可されるという仕組みを作りました。

【パラオ誓約】
「パラオの皆さん、私は客人として皆さんの美しくユニークな島を保存し、保護することを誓います。足運びは慎重に、行動には思いやりを、探査には配慮を忘れません。与えられたもの以外は取りません。私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません」
さらに「Palau Pledge(パラオ誓約)」の導入に合わせ、誓約を違反した旅行者に対し、最大で100万ドルの罰金を科すことができる政策の議決や、観光向けWebサイトや機内映像、ビジネス許可証や標識など、あらゆるものがリデザインされたプロジェクトです

2019年ダイレクト部門グランプリ:「The Whopper Detour」

■Brand
Burger King
■Agency
FCB New York

リニューアルされたバーガーキングアプリの認知を最大化させるために、マクドナルドの近く(約180メートル)でしか受け取れないバーガーキングのクーポン(ワッパーを1セントで買えるもの)をアプリで配布したプロモーションです。

バーガーキングのクーポンを取得するために、わざわざユーザーをマクドナルドへ回り道させるという、マクドナルドへ喧嘩を売っているような点が毎度のごとく話題になり、その結果アプリのダウンロード数は9日間で150万を超え、モバイルでの売上は開始以来の2倍に、来店数も4年間で最高を記録しています。

またマクドナルドへ向かうユーザーを、クーポンによってバーガーキングに方向転換させてしまうという点でも優れたアイデアだと考えられます。

まとめ

今回は「ダイレクト部門」歴代グランプリをまとめました。

下記マガジンにて他のカンヌ歴代グランプリをまとめているので、チェックしてみてください!


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