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「能力が高い≠採用される」

PdMという仕事の特性

私はこれまで3社でIT/SaaS企業においてPdMという職種を継続しています。経験としては12年程度です。
一言にPdMといっても、会社によってその職種の期待領域はバラバラで、もっというと同じ会社の中でも製品が違ったり、事業が違えば求められるスキルセットが変わったりします。
1社目はグローバルでサービスを展開する会社。会社の規模は8000人くらい。1つのプロダクトでグローバルに展開をするわけなので、各国におけるユーザのニーズの変化、各国との利害関係者との優先度の調整や、そのための各国の市況前提の理解、それらをもとにしたエンジニアへのディレクションといったことが生じます。プロダクト関係チームも、UXデザイナー、UIデザイナー、開発エンジニアだけでなく、テストを行うQA、翻訳エンジニア、サポートエンジニアなど大規模なチーム構成でした。
2社目は国内だけで展開するWeb基幹システムを提供する会社。会社の規模は600人程度。プロダクトの規模も大きかったですが、機能ごとにPdMとエンジニアが分業されており、各小隊が作り上げたもので大きなプロダクトが構成されているという感じでした。開発チームはUX/UIデザイナー、エンジニア、QAといったコンパクトなものです。
3社目も国内だけで展開するWebサービスの会社。会社の規模は50人程度で、PMFとスケールの境目にいる段階の会社です。アウトソースで開発を行なってきたところ、将来的な発展を見据えて内部での研究開発や、内製の製品開発にも力を入れ始めたところです。

採用をしていて感じること

そんな中、よくPdMの採用を行なうことがあります。PdMという職種自体が各社に何人もいませんから、外部からの採用は結構大変です。そもそも狭い人材市場の中から見つけてくる必要があります。
そしてお会いすれば、よく勉強されたり、人となりも良いような方と出会う確率が高いように感じます。これは職種そのものの特性と思います。いろんな人と関わるからそれだけ会話の幅を持てるように勉強をする必要がありますし、それだけコミュニケーションをしなければならないわけなので、対話能力もそれなりです。そう、絶対的な能力がそれなりに高い方が結構多い職種なのではないかと思います。

大切なのはハマるかどうか

しかしながら、能力が高いからといって採用かというとそういうわけにはいきません。いろんな人とコミュニケーションをする職種ということは、それだけいろんな人とチームワークを発揮しなければいけないということです。
中途採用は空いているポジションを埋める場合と、これから新しくポジションを作る場合と大きく2種類あると思います。後者の場合で、かつ関係する人たちも新しく採用をする場合を除き、その人が採用をされた時に周辺でどういうった人と仕事をすることになるかはあらかじめ決まっています。そういった人たちとチームワークを発揮できるかどうか、一言で言うと「ピースとしてハマるかどうか」が大切な観点です。いかに能力が高くても、関係者とぶつかってばかりでは進む仕事も進みません。

ハマるハマらないをどう見極めるか

面接の手法の王道としてSTARという概念があります。Situation、Task、Action,Resultの略で、要するに、「どんな状況で、どんな課題に対して、どんな行動を起こして、どんな結果を出したか」という観点で根掘り葉掘り仕事っぷりを聞いていくというものです。
私はこの手法を基本の型として面接を行うわけですが、これを行うことによって、その人の仕事の癖や、その人が他の人とどのようにコミュニケーションをとっているのかが炙り出されてきます。
具体的な開発手法、例えばアジャイルが得意な人、崩した独自のアジャイルでやってきた人、ウォーターフォールが長い人などそういったスキルセットも垣間見えます。
自社の開発規模で活躍できそうか、大規模でないと活躍できなさそうか、、なども見えるでしょう。スタートアップのようなところでは、PdMといえど自分で手を動かしてリサーチやUIデザイン、技術的な仕様設計まで突っ込む必要があります。一方大企業においては、それぞれ専門家がいるので、専門家を動かしてプロジェクトマネジメントをするようなスタイルの人もいます。でも職種としては「PdM」を皆さん名乗っていたりします。このあたりもSTARによる見極めポイントです。
また、ドメイン知識やドメインへの関心も非常に重要です。プロダクトを担当するということは、それを使っているお客さんのニーズや価値を探求することになります。それそのものにどこまで入れ込むことができるかは長く仕事をするにあたってはとても重要です。これについては「なぜ現職を選び、今のプロダクトを担当しているのか」あたりを尋ねることが重要です。これを尋ねると、自社プロダクトにどれだけ思い入れを持って取り組めそうかどうかの肌感が得られます。
こういったことを通じて、「その人が本当に自社にハマるかどうか」を見極めます。その人が絶対的に能力が高いかどうかは初めは重要ではなく、「ハマるかどうか」→「ハマりそうだとした時に、自社で活躍するにあたって十分な能力を持っているかどうか」の順番で思考します。
その人がたくさんの資格を持っていたり、稀な経験をされていたりしても、それらが自社で仕事をするにあたって活用できなければ意味がありません。そういった面を問う前に、まずは「ハマりそうかどうか」をSTARによって見極めましょう。結果、お互いのためになります。

100%ハマらない際でも本人がどれだけ自己変革ができそうか

とはいえ、前述の通りPdMは市場に人材がそれほどいません。全ての条件に当てはまる人が存在するかというと、確率的には低いかもしれません。
100%ハマるというわけではないのだが能力的には十分、あるいはかなりチームワークで動けるイメージが湧くが能力がもう少し高い必要があるかも、、など実際には生じます。要するに、ポテンシャルがある人です。
それに備え、どこを最低ラインとしておくか(=どこからをポテンシャルとしていいか)をあらかじめ考えておくことは重要です。
また、より活躍をしてもらうために「現職を始めた時にどういった苦労をして、どのように乗り越えてきたか」あたりを尋ねると、自分のやり方と周囲のそれにGapが生じた際にどんな対応をしてきたかが見えたりもします。
中には自分のやり方を押し通してきたと言う人もいます。それでうまくいった人もいるでしょう。例えば自分が年長で、周囲のメンバーが若いときなどです。
逆に、周囲のやり方に完全に合わせてきたという人もいるかもしれません。間をとってきた人もいるでしょう。
面接で自社にハマるかどうかを見極め、何らかのGapをその人に対して感じたときに、そのGapをどう埋めにかかりそうかはしっかり訪ねておきましょう。つまり自己変革ができそうかどうか、、です。ここで納得できる回答が得られるかどうかはひとつの分かれ目です。

日頃から採用対象の人脈を広げておくこと

採用は本当に難しくて、一言で言ってしまえば巡り合わせです。採用したいタイミングに採用したい人材が人材市場に泳いでいるということはなかなかないと思います。特にこの職種は。
だからこそ、日頃から細くもカジュアル面談などを行い、採用市場と触れておくことと、採用するための対象となるプールを増やしておくことが重要です。「今は難しいけど、次転職を考えるときには受けたいです」という人も中にはいます。実際、最初にお会いしたときには難しかったけども、後で検討をしてくれたという人も何回か経験があります。
採用にショートカットはなく、地道なアクションを日々積み重ねていくことが結果的に近道になるのかもしれないですね。

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