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帰国生の中学生活 #2 入学後の親の役割

娘が中学に入学してから1年が経とうとしている。学校生活に慣れ、日々、部活や友人との時間を楽しんでいる様子だ。娘はイマージョン教育を行うクラスに在籍しており、ほとんどの科目を英語で学んでいる。宿題や試験が多く大変そうではあるが、クラスメートに聞いたり、教えたりしながら学んでいる。勉強に関して自分がとやかく言う場面はほとんどなくなった。

中学受験を終えた後の親の役割は何か。娘の自主性を尊重し、親は余計なことをしないのが肝要だと思いつつも、自分が体験してきた教育環境とは大きく異なるため、ある程度の道案内は必要だろうと思っている。特に大学に向けては、海外大も視野に入れており、国内大に行く場合ではAO入試となる可能性が高い。自分自身が歩んできた道とは異なるため、情報不足にならないようにしたい。

最近、大学入試をはじめとした日本の高等教育に関する情報に目を通すようになったが、日本の教育システムに対して、悲観的な見方がかなり多く、暗澹たる気分になる。例えば、松田悠介氏(海外進学塾であるCrimson Educationの代表。教育者としてハーバードとスタンフォードで学ぶ)のセミナーを視聴したところ、日本の大学入試について、次のように述べていた。

・いまだに工業化教育の名残が強く残った、高偏差値大学、有名企業に合格するための受験勉強ウォーリアーたちを育てている。「有名私立中高や東大に入りさえすれば、いいキャリアを歩める」と思い込んでいる人があまりに多い。
・「あなた本当は何をやりたいの」「あなたは一体何者なの」とリフレクションする機会もないまま、受験、受験、受験、受験に追われていく。そのうち、文系と理系に分けられ、文系ならこういう学部、理系ならこういう学部、と与えられた選択肢から大学に入っていく。
・大学に受かったとしても、何がやりたいのか全く分からず、志もないまま4年間の大学生活をモラトリアムとして過ごしている。

上述の内容を、私は共感せざるを得ない。なぜなら自分自身もそうであったからだ。松田氏は日本の教育システムの変革に尽力したものの、限界を感じ、今は海外大学の進学をサポートしている人物だ。

松田氏は、一人ひとりの個性に目を向け、可能性を最大限引き出すこと、グローバルな環境で人生やキャリアを切り開いていくことが重要であり、圧倒的に成長できる環境、チャレンジできる環境として、海外大への進学には大きな魅力があると述べている。そのうえで、幅広い選択肢を子供に提供するには親の役割が大きいと言う。

・人は、教育を語るときに自分の経験をベースに語る。自分が成功したパターンを、アドバイスとして与えていく。しかし、それは20年前に受けていた教育の成功パターンにすぎない。それを子どもに当てはめると、時代錯誤なアドバイスになりかねない。
・子どもが広い選択肢を得られるように、親はどのように教育をリードしていけばいいのか。まず変わるべきは、子どもではなく、親である。

海外大での学びに対しては、私自身も期待する部分が強い。但し、海外大への進学、特に有名大学を目指すならば、日本の大学受験以上の激しい競争があることを覚悟しなければならない。

中学生の娘に対して、自分は何を期待しているのだろうか。海外大学も含め、有名大学に行ってもらいたいという願望は否定できないが、「過干渉」になって、結果、娘の個性や主体性を損ねるようなことはしたくない。現在、娘に期待するのは、「自分の価値観に基づいて、自分で人生を切り開ける人間になって欲しい」ということだ。

自分自身は、日本の教育システムのもとで育ってきた。地方の公立校を出た後、東京の私大に進学し、日本の企業に就職して現在に至る。節目節目で自分なりに考え、決断してきた歩みであり、後悔はない。ただし、「他人の評価」や「世間の常識」といった外部要因に苦しめられてきたと感じている。本当に自分がやりたかったことや正しいと思うことといった内部要因で動くことができたら、また違う歩みがあったのではないかと思っている。

「自分の価値観に基づいて、自分で人生を切り開ける人間」になるために、大学に進学するということであれば、国内・海外問わず、親として全力でサポートしたい。一方で、何の目的意識もなく、高い学歴を必須なものとして強制するような過干渉な親にはなりたくない。これからは娘自身の主体性が重要となるなかで、親としてできることは以下2点だと考えている。

(1)学ぶ姿勢を見せる、ビジョンを語る

  • 学ぶ内容や目標を親が勝手に定義して押し付けるのではなく、目標に向かって学び続ける姿勢を見せること。これから親が子どもに教えてあげられるのは勉強の中身ではなく、学び方とその重要性。

  • 食卓等でビジョンを語る。内容はなんでもいい。壮大なビジョンでなくても、自分が仕事の中で感じているワクワク感やチャレンジを日常の場面で話すと、「目標に対して頑張ることへの魅力」を感じてもらえるはず。

(2)親として幸せな姿を見せる

  • 職業に貴賤はなく、資産の多寡で人の価値は決まらない。最終的には幸せを感じる時間をどれだけ持てるかが重要。幸福とはどういうものか、1つの形を子供に示す。

  • 自分自身が「どうロールモデルになっていくか、どういう存在であり続けたいか」を考え、実践する。

中学受験は壮絶な体験であったが、入学すればおしまいという訳ではない。入学後に娘が学園生活に馴染んで、伸びやかに過ごしていけるかが更に大事となる。入学後の6年間を充実したものにできるよう、基本的には娘の主体性を尊重しつつも、親として自分自身のアップデートに取組みつつ、サポートしていきたいと考えている。

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