悪魔憑きは殺さなければいけない (プロト1
この荒野に何種類もの死体が転がり、散らばっている。自分はそれらを無視して目的の場所に向かって歩を進める。この災害の中心から外れ、破壊された馬車に向かって。
悪魔憑きは殺さなければいけない。
左手に長剣、右手にナイフを構え、馬車まで残り50歩のところで
「それ」が現れた。壊れた馬車の戸を難儀そうに細い腕で押しのけて、周囲の状況を用心深く観察し、豪奢な衣装に気をかけながら、こちらに鋭い視線を送る若い女の姿をした「それ」が現れた。
自分は駆け出した。「それ」を殺すために。
それが悪魔憑きなのか確信はまだない。だけど、今殺さなければ、二度と殺せない。それは確実にわかった。あの瞳を見たら迷い、殺せなくなる。ならば、今殺す。
ナイフを投げて牽制し、距離を詰める。
「それ」はこちらをじっと見つめている。ナイフが肩に刺さてもまるで気にせず、凝視している。
次の瞬間、周囲の空気が揺らぎ、熱と光と衝撃が周囲を覆った。
【続く】
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