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風景との対話

みなさん東山魁夷という日本画家はご存知でしょうか。
戦後を代表する日本画家の一人として知られていて、皇族の御所などの宮中画家としても知られています。風景を題材に日本国内やヨーロッパを中心に旅をしながら作品を描くということをしています。戦前ドイツに留学をしていたこともあり、渋い日本の画家というよりは西洋と東洋の中庸の感じや色合いなどを持ち合わせおり、個人的にはとても好みの画家の一人でもあります。


この東山魁夷、画家としてだけでなく、その絵画を描く際の心情などを記した著書がいくつか出ています。その中で最近読んだのが「風景との対話」というタイトルの書籍です。
先日長野に出張に行った際に立ち寄った古書店でたまたま手にした書籍だったのですが、特別装丁に惹かれるものがあったとか、東山魁夷という名前を知っていたということではなく、「風景との対話」というタイトルに何となく良好な違和感があり手にしたのでした。頭で考えてみたら風景と対話は出来ません。けれど、風景を描く画家だということを前提にこのタイトルを見るにつけ、感覚的でもある感情を文章として言語化するということは、いったいどういうことなのか、という好奇心から読んでみることにしました。

各章は一つの作品を取りあげ、その作品のモノクロ写真を挿絵にしてその絵画が生まれた背景にある旅の情景や過去の記憶を言語化していくスタイルです。Googleの画像検索で色付きの写真を見つけ出し、その文章を読むと東山魁夷が自身で見た風景と心の中の景色そして作品がリンクしていてまるで対話のような散文詩で、静明な読後感が残りました。

さらにページを進めてみると、東山魁夷は戦後すぐに絵画を描くために北欧諸国を周遊していたりもしていました。それはただの旅行記という訳ではなく、なぜ北欧を旅して自分の心の故郷に巡り合うことが出来たのかということや、小さな幸せを見つけることについての考察などが、マガジンa quiet dayとリンクしているところがとても多く、ある意味、時代を超越した同士のような親近感を東山魁夷にいだいてしまった。

今、絶賛製作中のマガジンa quiet dayの最新号のテーマも「dialogue(対話)」だったりするというシンクロ感もあり読むべくして手に取った書籍なのだとドグマを勝手に感じてしまったのでした。
さて、後述しますが来月9月11日(金)に長野市でトークイベントのファシリテーターとしてまた出張を控えています。調べてみると長野市には信濃美術館の中に東山魁夷館という場所があるとのことで是非立ち寄って実際の絵画を見てみたいなと思っています。

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