初めての被災地ボランティア体験
2011年6月 石巻市旧北上川下流域被災地にて
何ができるかわからないが、東北被災地に行かずにはいられなかった。
行ってみれば、「何をしましょうか?」という一般の方たちがいっぱいおられ、彼らとチームを組んで民家に流れ込んだヘドロ搔きなどをしました。
来るメンバーそれぞれの気持ちに心も奮い立ってきて、恥じらいを捨ててお手伝いすることができました。
ある日、九十歳超の母を介護する七十歳余りの娘さんの民家へ、ヘドロ搔きのボランティアへ1日半をほどお手伝いに行った時の事。娘さんは、絶望のなかにあるのにも関わらず、炎天下に働く私たちに、1時間おきに「休んでぇー!このかりんサワーを飲んでちょうだい!」と声かけられ、私達ボランティア数名は、休み10分あまり、作業50分弱の、頻繁に休む土方仕事ボラとなった。私としては何とも申しわけない出来高の作業量しかできてなくて申し訳ないと思ってました。そして昼食時になったら、「正面玄関から座敷に上がって頂戴!汚れなんか気にしないで!」と皆に声をかけられ、座敷に上がってみると、霜降りの牛肉と船盛の刺身が用意されていた。震災からわずか3カ月、被災者なのにどうやってこんなごちそうがそろえられているんだ!とびっくりしました。そして、娘さんは「皆んな、食べてぇー!召し上がってちょうだーい!」と大きな声で私たちにごちそうを振舞ってくれました。彼女は、並々ならぬことをしなければ、こんなごちそうは揃えられないはずだ。被災者なのに被災していない者に対してこんなことをなさるなんて、本当にもったいなく、ありがたいものだった。
私は作業2日目であり、その日の午後に帰らなければならなかったため、ろくに大した仕事もしないうちに帰路につくことになった。帰りの新幹線のなかで、初めてのヘドロ搔きボランティア体験で体は疲れ果てていた。しかし、とても心地よい疲れと胸にジーンとくるものがあり、「ああ…、また東北に来たい。」としみじみ思った。それが、社会貢献関係に定年後の人生をささげようと思ったきっかけとなりました。