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たまにはイヤホンを外して

私の家は最寄駅から徒歩30分かかる。
バスなら10分、自転車なら15分。

あなただったらどれを選ぶだろうか。おそらく多くの人がバスか自転車を選ぶだろう。実際、近所の友人全員が自転車を選択していて徒歩なのは私くらいだ。


本音を言うならば私も人類の発明品に頼りラクがしたい。
自転車が壊れてから数年。シャーッという音と共に自転車が自分の横を颯爽と通り過ぎるたびに頭の中で「ほしい」気持ちが湧くが今日まで購入に至ったことはない。

結局、新しい自転車を購入するくらいなら徒歩でいいやと思えるくらいには歩くことが好きなのだ。


毎日往復1時間を楽しませてくれる私の相棒は白いイヤホンだ。

完全ノイズキャンセリングとかそういうこだわりなんてものはなく、iPhoneを購入した時についてきた純正のアレ。だけどこれがないと1日が憂鬱になるくらいには私の大事な相棒。

仕事からの帰り道、今日はなんとなく相棒と別行動を取ることにした。
イヤホンを外すと最初に聴こえてきたのはサーサーという風の音だった。この間まで冬特有の冷たいピューピューとした音だったのに短期間で自然は次の季節へと準備をしているらしい。

聴覚が自由になると他の語感も鋭くなるようで。

ランドセルを背負った小学生達が走り回っている姿。
どこかの家から漂う今日の夕飯であろうカレーの匂い。
少しだけ生暖かい風。


いつもは駅から家までの「ただの道」にしか感じていなかったけれど、私の周りにはいつも小さな変化がたくさんあって私を包み込んでいる。
その1つ1つの発見が宝探しみたいで、私は今日の疲れも忘れてフフフンと歩く。心は完全に子供の頃に戻っていた。
たまにはイヤホンという相棒から離れてみるのも悪くないじゃないか。


家に着いてドアを開ける時、赤ちゃんの元気な泣
き声が私の耳を揺らした。

彗星みたいな雲

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