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「中間管理職は本当に罰ゲームなのか?仕事の話を避ける上司と、仕事の話をしてほしい部下が目指す新しい関係性のカタチ」

1.上司に詰められ部下に脅され中間管理職が罰ゲーム状態に

近年、中間管理職の人気が下がっていて、若者の間でも中間管理職にはなりたくないという声も多く聞くようになりました。
弊社でも長年、管理職研修をしていますが、最近の「中間管理職にはなりたくない」という人の多さや熱量は今までに類を見ないなと思っています。

また、先日TBS NEWS DIG Powered by JNNで中間管理職に街頭インタビューを行った際に、中間管理職の方々が「中間管理職が一番辛い」「下(部下)とも上(上司)とも闘わないといけない」「下(部下)がハラスメントをしてくる」と魂の叫びを残した動画がありましたが、6/26に滝沢ガレソさんがツイートで発信して多くのリアクションがついていました。

↓TBS NEWS DIG Powered by JNNの管理職インタビューの動画リンク
https://www.youtube.com/watch?v=Fgz5GYGxm_o

さらに集英社インターナショナルが2024年02月07日に出版した「罰ゲーム化する管理職」という本もかなり話題になりました。

今までは中間管理職は上司に嫌われないようにしておけば、ある程度は仕事が成り立ちましたが、現在では上司からだけではなく部下からも嫌われないようにしないといけない状態です。
もし、部下の機嫌を損ねて辞めてしまうことがあれば、自分の評価が大きく下がります。
さらに、「ハラスメントハラスメント」という言葉があるように、正当な指摘をしても部下がハラスメントを訴えることがあれば自分自身の立場も危うくなります。

このように現在の中間管理職は「罰ゲーム」状態になっていると言えます。
今回の記事では、罰ゲーム状態になってしまった中間管理職がどうすれば良いかについて解説していきます。

2.部下の過半数が「仕事の話をしたい」一方、上司は雑談をしてしまう現状

弊社は以前に1on1支援時にIT・金融・人材・広告・不動産,建設・医療・商社・介護・歯科・製造業の方3800名に「1on1で何を話したいか?」というアンケート調査を行った事があります。
すると下記のような結果がわかりました。

上記の資料ではランキングを紹介しましたが、弊社で取ったアンケートでは過半数以上が「仕事の話をしたい」と回答しています。

マネージャーや管理職の方からはよく「仕事の話をしたいが嫌がられそう」「雑談をしないといけないのだろうけど、若者に何を話したらいいかわからない」という声を聞きます。
また、近年1on1が流行っていて、人事から「中間管理職が1on1でメンバーのケアを行うように」との指示が出るものの、メンバーからするとケアではなくて仕事の話をしてほしいと考えているため、1on1施策が失敗するパターンがほとんどです。
弊社で取ったアンケートでも「1on1において、重点的に話したいことを選択してください」という質問に対して、雑談を含む仕事以外の話したい選択した方が過半数という状況でした。

メンバーが話したい話のランキングTOP3は「業務を通して実現したい個人のキャリア」「会社や部署の目標について」「業務において発生する課題や原因の分析」といった仕事です。
仕事の話の中でも、目標達成・自己の成長・キャリア形成に関わる内容について話したいという声が多い事がランキングを見るとわかります。
この情報は管理職が、罰ゲーム状況を打開する事に活路を見出しています。

現代の人生100年時代では、若者は一つの会社にいれば安泰というわけではなく自分でキャリアを描かなければなりません。そのため、キャリアに悩みながら仕事をしている若者がほとんどです。
そこで、若者である部下に「今後もキャリアを描いていける方法」別の言い方をすると、「勝ち続ける力」を教える事ができると部下は管理職についていくようになります。
次の章では管理職が部下に勝ち方を教える方法について解説します。

3.パフォーマンスマネジメントのススメ~勝ち方(成果を出して⇒評価をされて⇒どこでも活かせるスキルをつける)の共有ステップ例~

管理職が部下に勝ち方を教える方法として、今回はパフォーマンスマネジメントを紹介します。パフォーマンスマネジメントとは、1on1で目標を達成するためにアドバイスを行い、その結果達成した目標やそれまでの過程を評価する施策です。

それぞれ詳しく解説していきます。

①キャリアマップを作る


まずは会社にキャリアマップがあるかどうかを確認しましょう。キャリアマップとは、その会社におけるキャリア形成の過程をモデル化したものです。
会社によって呼び名がスキルマップや能力開発シートなどと言われることもあります
キャリアマップがある場合は、「②物差しを擦り合わせる」から始めても良いですが、キャリアマップを作ってから見直しをしない企業も多いため、今のキャリアマップを部下に見せる事で、部下が自分のキャリアをイメージできるかどうかは判断すると良いでしょう。
職業ごとに、自分のキャリア幅やキャリアの先を部下がイメージできるようになると部下が今の業務にやる意味を見つけやすくなります。
また、部下が目指したいキャリアが決まれば、今の部下が伸ばすべき能力や必要な能力がキャリアマップには段階的に記載されているので、部下が「自分が何の能力をあげれば良いのか」が明確になります。

参考までに厚生労働省が出しているスーパーマーケットのキャリアマップを添付します。

画像参考リンク↓
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/backdata/02-02-02-04.html

② 期待をすり合わせる


まず管理職が最初にやることとして、「期待をすり合わせる」ということが重要です。
キャリアマップをもとに、会社が何を目指していて、そのためにどんな人材を育成したいのか?そして、今メンバーがどのような評価を会社から受けているかを説明することが重要です。
また、擦り合わせる中で、「どの会社でも活躍できる能力開発」について話すことも重要ですが、「自分が所属している会社で勝っていく方法」を教える事もとても重要です。
近年、優秀ではあるものの社内では評価されず出世できないままうまくいかないというパターンがよくあります。
そのため、自分が所属している会社でどのような人が評価されるのかを把握する必要があります。
経営層がしっかりしている会社は、会社がやるべきことや目指す目標(ミッションや経営理念)と、会社が目標達成するために必要な人材とその行動(行動指針やバリュー)を深く練っています。
そして、それを評価制度まで紐付けている会社がほとんどですが、内容の難しさと「なぜこのような人が評価されるのか?」といったような理由や背景までは明かされておらず、メンバーが理解していない場合がほとんどです。

例えば、弊社で支援していた企業様でも優秀な営業マンAさんが売り上げは多く上げていたものの、Aさんが思っている評価に比べて与えられた評価が低いということが起きていました。
Aさんが所属している会社では、売上を上げる事もとても大事にしているものの、「自分の成功を他人に共有できる力」を持つ人を出世させたいという意図がありました。
理由としてはAさんが所属する会社は2、3年で人が転職する会社で、かつ、会社側としても転職すること自体をそこまでマイナスと捉えていない会社だった事が挙げられます。
そのため、一人が成績をたくさん上げるよりも「成績を上げた人のナレッジを他の人もできるように体系化する事」に評価がつくような設計になっています。

このような評価の背景や理由を管理職がメンバーに伝えてあげて、その上でどうやって自社で評価されるようにしていくかを考えていく事が、メンバーを勝たせる上で重要です。

③目標を一緒に決める


次に管理職がメンバーと一緒にやるべきことは「目標を一緒に決めてあげること」です。
自社で評価される人物像がわかっても、それを押し付けてしまうとメンバーはついてこない事がほとんどです。
とはいえ、メンバーに「人生で何したい?」「どんなキャリアを描きたい?」と聞いてもほとんどの場合ふわっとした回答しか出てきません。
現代では小学生でも夢を聞いた際に、ないと答える子や公務員やサラリーマンと答える子が多いです(決して、公務員やサラリーマンが悪いと言うわけではなく、回答に困るからとりあえず後々困らなさそうな硬い回答をする子が増えているという内容になります)

そのため、管理職はメンバーにオープンクエスチョンで「人生で何したい?」「どんなキャリアを描きたい?」と聞くのではなく、「独身で海外旅行にたくさん行く人生と家族で田舎で暮らす人生ならどっちが良い?」と選択肢を与えて思考性を確認したり、会社のロールモデルになるような人と会わせてメンバーが目標とするような人を探してあげたりする必要があります。
また、目標が決まった際もその目標が会社が評価する人材とあっているかを確認したり、メンバーが会社が評価しない人材を目指してしまう場合は説得するようなテクニックも必要になります。

そうやって働く上での目標を決めたあとは、細かいKPIや1日の目標なども一緒に立ててあげるとメンバーがさらに目標に向かいやすくなりモチベーション向上につながります。

④ 1on1でFBをする


目標を決めた後は、その目標を達成するために定期的にFBをする必要があります。
メンバーの進捗が悪い場合は、「このままだと目標達成できないけど、どうやって対策する?」と一緒に改善活動を行う必要があります。
最近は、管理職が2極化していて「メンバーに嫌われるのを恐れて踏み込めない管理職」と「自分のやり方で厳しく指導することしかできない管理職」です。
とはいえ、メンバーに踏み込みながら、そのメンバーの得意を活かしつつ目標を達成させてあげるということははっきり言って難易度がとても高いです。
そこで今回は、メンバーの得意を活かしつつ目標を達成させてあげるための2つのコツを今回はご紹介します。

一つ目は「GOOD GOOD GOOD MOREの法則」です。
人間は、指摘ばかりされると嫌な気持ちになり、そのうち、指摘してきた人を敵視するようになります。特に日本人は文化的に指摘され慣れていない人が多いので、その傾向が強いです。そこで、使えるのが「GOOD GOOD GOOD MOREの法則」です。
これは、3回メンバーを褒めた後に1回承認するとメンバーが言うことを聞きやすいという法則で、例を出すと「先週営業成績一番だったじゃん!」「やっぱりAさんは細部へのこだわりがいいよね」「いつも新入社員の面倒見てくれてありがとう」と褒めた後に「他部署との連携をもっとうまくやれるようになるとAさんのキャリアの幅が広がると思ったんだけどどうかな?」と指摘するようなイメージです。
指摘する際も、メンバーのキャリア軸や成りたい像に沿って指摘する事と「と思ったんだけどどうかな?」と疑問形にしてメンバー本人に「そう思う」と言わせて合意をとると押し付け感が出にくくなり効果が出やすいです。

二つ目は「ソーシャルスタイルに合わせたコミュニケーションをとる」というテクニックです。「ソーシャルスタイル」とは1968年にアメリカの産業心理学者、デビッドメリル氏が提唱したコミュニケーション理論のことで、4つに分類される人のコミュニケーションのパターンを活用し、適切なコミュニケーションを選択するものです。種類としては、主導型・促進型・分析型・支持型に分けて適切なコミュニケーションを選択します。
例えば、主導型の方は特徴として、合理的に物事を達成していく傾向にあり、プロセスよりも結果を重視するビジネスライクな性格な方が多いです。
そのため、1on1で話す際に雑談等は少なめにして、「いかに目標達成していくか?」を軸に話すと、メンバーと信頼関係が構築でき、メンバーにとって有意義な時間になるのでおすすめです。

⑤評価に反映させる


最後は、メンバーの活躍をちゃんと評価に反映させる事です。
メンバーとしても会社で評価する人物像を知り、そこに合わせた形で目標設定を行い、管理職にFBを受けながら結果を出したとなると、それ相応の評価がもらえないと納得はできません。
評価をする際のコツとしては、常にメンバーと管理職の上司に現在の評価を擦り合わせる事が挙げられます。
まずは、メンバーに「今のペースで目標達成したらA評価だよ」といったような評価を定期的に言っていくようにしましょう。これはメンバーのモチベーションアップにもなりますし、メンバーが会社の求めている人物像とそれていたら「売り上げは良いけど、新しいメンバーのオンボもしないとA評価はあげることができない」と伝えていくことで、メンバーが会社に貢献できるようにリードする事ができます。

また、管理職の上司にも「Aさんが売り上げ120%達成した上で新入社員のオンボもうまく行ったら、うちの評価制度的にはA評価になると思ったのですが認識あっておりますか?」とすり合わせておく事で、後々、Aさんに伝えていた評価と違うものになりAさんのモチベーションを下げるという事がなくなります。

以上が、勝ち方(成果を出して⇒評価をされて⇒どこでも活かせるスキルをつける)を部下に教えるパフォーマンスマネジメントの概要になります。

4.まとめ

今回は、中間管理職が罰ゲーム状態になってしまっている現状、そして打開する打ち手として、「パフォーマンスマネジメント」をご紹介させていただきました。
弊社は「中間管理職になりたい人が増える世界」を目指して、マネジメント研修・人事コンサル・パフォーマンスマネジメントツールを展開しております。

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