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『見習い神様、願いを叶えて。』#1 片思いの相手

【あらすじ】
私は絶賛片思い中の高校2年生、吉沢みゆき。
好きな人と両思いになりたい!
そう願った次の日、現れたのは神様と名乗る青年だった。
私の恋を叶えるべく、青年と奮闘するのだが…。
(全20話 恋愛×ファンタジー 毎日1話ずつ更新します)

 高校二年生、5月。
私、吉沢《よしざわ》みゆきには、好きな人がいる。

「みーゆき!何書いてるの?」
 話しかけてきたのは、親友の花屋敷《はなやしき》ゆりだ。

 二年生になっても同じクラスになれてすっごく嬉しかった。
 しかも昨日の席替えで、私達は前後の席をゲットできた。私の真後ろがゆりの席ってことね。私、クジ運だけはいいんだ。
 これで昼休みは机をくっつけて一緒にお弁当を食べられる。今みたいに休憩中に気軽にちょろっと話したりもできる。昨日から私はルンルンだった。

 ゆりは、明るくてさっぱりした、とても気持ちのいい性格をしている。見た目も可愛くって、ゆりは気付いてないみたいだけど、男子からは相当人気がある。
 私は苗字も名前も平凡だけど、ゆりは苗字も名前も華やかで、密かに憧れていた。

 まだ、ゆりとただの友達だったころ、そのことを話したことがある。
 そしたらゆりは、こう答えた。
「みゆきって変なこと言うね。私は私の名前、気に入ってるけど、みゆきって名前もすっごくいい名前だと思うよ。だって大好きなお父さんとお母さんがつけてくれた名前でしょ?」って。

 反抗期の一種なのか、そのころの私は、家族に対して気恥ずかしいという思いがあった。
 だから一層、そんなゆりの真っすぐに家族を愛し、それを堂々と人に言える強さに、私は惹かれたのだった。
 ゆりには素直な自分を見せれるような気がした。
 それから私達は親友になった。

 
 もしかして、私の好きな人って…ゆり?!って思った?
 「ゆり」なだけにって?
 もちろんゆりのことは大好きだけど、残念ながらそういう好きではないんだ。

 
 私の好きな人はね…

「ねえ、みゆき?聞いてるの?」

 ノートに集中していて、ゆりの声に気付いていなかった。
 私がすぐに返事をしないでいたら、ゆりは席を立って私の横に回り込んできた。

「えっ!これって…」
「わ!見ちゃダメ!」
 急いでノートを閉じたけれど、もう遅かった。

「みゆき、もしかしてイジメられてるの…?」
「え?」
「だって、今のって『呪い』かけてたんでしょ?」
 ゆりはすっごい勘違いをしてるみたいだ。

「だってだって、1ページ丸まるギッシリ名前が書かれてたじゃない!」
「う、うん。そうなんだけど…。」
「みゆき、芳高《よしたか》になんかヒドイことされたの?!」
「いや、えっと…。」
 私がノートを見られたことが恥ずかしくて、うまく否定できないでいると、正義感の強いゆりは行動に出ようとし始めた。

「私、芳高と話しに行ってくる!」
 もうだめだ。恥ずかしいけど誤解を解いて、ゆりを止めないと!

「ゆり、待って!違う、違うの!」
 歩き出そうとしたゆりの腕を素早く掴んだ。

「あれは、呪いじゃなくってね。」
 親友のゆりにも今まで打ち明けられず、自分の中にしまっていた思い。それだけに、次の一言がなかなかでてこない。
 だけど、ゆりになら言っていいよね?
 私は勇気を出してゆりに告白した。

「…書いてたのはね、好きな人の名前なの。」
 ゆりはキョトンとした顏をして、3秒くらい固まっていた。

「えーーーー!!!みゆき、よし…あわわわわわ」
 ゆりが大声で芳高くんの名前を叫びそうになったので、慌ててゆりの口を塞いだ。

「ゆり、声おっきいよ。しーーっ。」
 周りのみんなが一瞬こっちを見たが、すぐに興味はなくなって各々の会話に戻ったようだった。

「ごめん、私全然気付いてなかったから…。びっくりしちゃって。」
 ゆりは悪かったと思ったみたいで、それからは小声で話した。

「私こそ、ごめんね。親友なのに、ゆりになかなか言えなかったから。」
「いいよそんなの。私が恋愛オンチなの、みゆきが一番よく知ってるもんね。」
 あはは。と言ってゆりは笑って流してくれた。
 ゆりは絶対、私のことを悪く言ったり責めたりしない。ゆりに言えて、よかった。

「でも、みゆき。一言言ってもいい?」
「なに?」
 あの優しいゆりが何を言うのだろう、と恐る恐る聞き返した。

「ノートびっしり名前書くのは、絶対やめた方がいい!怖いから!!」
 たしかに冷静になったら自分でもそうだなと思った。
 最初はひとつだけ「芳高樹《よしたかいつき》」と書いただけだったのに、無意識にノートの一番下の行まで書き続けていた。

「私もそう思う。今度から半ページくらいにしとく。」
「半ページも十分怖いって。」
「あははは。」
 二人して笑い合った。

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