人生、綴ってみた 【結婚・前編】 #17
翌日
私の弟の気がふれた
それを見ていたのが
九才になったばかりの私の息子だった
自分の奥さんと子供を殺して
俺も死ぬと大騒ぎ
人間とはなんて弱い生きものなんだろう
救急車で運ばれた先は
なんと父が入院している精神病院だった
しかも、同じ病棟
弟に面会するため
ナースステーションに行った
看護師さんは
私が娘だと気がついたようだ
「お父さんと面会されますか?
もう何年も会ってないんでしょう?」
「会いません。
あの人には何度も殺されそうになりました。
父親だなんて思ってもいません。
二度と関わりたくない存在です」
「わかりました。
では、弟さんの病室にご案内します」
私と息子は看護師さんに付いていく
階段を上がった先に、鉄柵があった
そこの鍵を開けて中へと入る
本当にここに弟がいるのだろうか
嫌な予感がした
病室に入った瞬間、私は凍りついた
ベッドの上に座っていたのは、父だった
心臓がドクッと音を立てた
体中の細胞がザワザワする
なんとも言えない気持ちの悪さだ
息をするのが苦しくて
声を出すこともできやしない
これはいったい何?
あんなに会わないと言ったのに
こんなの、騙し討ちではないか
看護師さんは目を潤ませて
「お父さん、良かったですね。
娘さんが来てくれましたよ〜」
父の目がギョロッと動く
「娘?
さあ、わからんなあ・・」
息子は怖がって私にしがみついた
虐待された記憶が次から次へと蘇る
頭の中は大パニックだ
早く、早くこの場から離れなければ
私は息子の手を引っ張って
病室を飛び出した
看護師さんが叫んだ
「待って!
洗濯物があるのよ、
持っていってくれないと困るのよ!」
何を言ってるんだと
憤りを感じながら振り向くと
父と目が合った
「また来てくれな〜」
そう言って
嬉しそうに手を振っていた
背中がゾッとした
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