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高知出身で京都の大学に通う知人と話すとき、私のボケやツッコミはたいていすべる。


そもそも話す速度が違う。


笑うタイミングと、尺と、呼吸の深さと、なにかが少しづつ違って、その違いに私は毎度癒される。と同時に、アイスホッケーのごとく机上で見事にすべっていく私の言葉たちに、少々涙を捧げる作業にいそがしくもなる。


西と東の会話では時間の流れ方が少し違うのかしらんと思い、もしそうであれば、私はいつのまに気が短くなってしまったのやらと思うも、気の短さのために思い続かず。


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まいです、ごきげんよう❀


この春休みに大学の友人ら6人で京都大阪旅行に行ってまいりました。その6人の中にはこのブログ部に所属しているメンバーも数人いるので、お話がかぶることがあるかもしれませんが、お許しください。


メインは清水寺周辺での舞妓体験でした。


メンバーの一人が「舞妓は10代までらしいからなるべく若いうちに体験したい」と言い(その発言の時点で既に20代に突入し1年が経過している)、そのために京都に行くという順序で決まっていきました。


舞妓体験では、お化粧からお着物、頭まで舞妓さんと同じようにセットをしてもらい、写真撮影のほか周辺の土地を散策することができます。


6人のうち3人は先にお着物選びを、残りの3人は先にお化粧をという手順になりました。


〈鏡台前。襦袢の襟が触れる首元に涼しさを感じながら息を潜めているとたちまち鬢付け油が顔と肩周りに塗られていきます。〉


それが想像以上に力技で笑、鬢付け油って硬いんですね。髪の毛のワックスのようなテクスチャ、するすると塗り広げられるようなものではないので、スタイリストさんが手につけた鬢付け油を頬に塗っていく仕草とは反対方向に顔を振り動かすくらいの気持ちでいないと、うっかり顔がもっていかれてしまいます。


〈天井の灯りをてらてらと映す肌に、広いハケでおしろいが塗られていく。おでこから鼻先まで冷たい筆が撫でていく感触に不思議な安堵感が湧いていきます。〉


この時点で目を開けるともう、誰という感じです。私たちはどうして鏡を信じられるんでしょうね。どうやらそこには「白塗りの私」がいるようでした。


目の際と唇に紅を差し、姿を見つめると、「私は作品になった」と感じました。鏡を見ているようで他人を見ているような、人を見ているようで色を見ているような不思議な感覚です。


同じように化粧を終えた友人たちは私の思う舞妓さんの表情をしていました。アイラインがタレ目に引かれ口角が引き締まり、想像する「舞妓」です。ところで私は、なんだか舞妓というより歌舞伎役者のような仕上がりになっていました。アイラインがつり目に引かれていたのかな、はんなりというよりイケメンになっていて笑、新鮮な気持ちになりました。


肌が白くなるということで「肌に合わない色」というものがなくなるとの助言をいただき、着物選びをしました。(振袖は紫味とある赤を着たから青系かな…でもピンクも王道で可愛いし…黒も着てみたい…。)


白になりました。


白地に昇って行くような青い洋風な花々。


そこに黒地に金糸の帯を合わせると着物は表情を変え、大人しい雰囲気からたちまち威厳ある様相になりました。着物ってそこが魅力ですよね。


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カメラマンさんに6人の集合写真を撮っていただき、さっそく60分の散策へ。


お団子食べたり抹茶飲んでる写真とか撮りながら歩く、という想像をしていた私は甘かった…。


「舞妓さんは外で食べません。飲みません」と言う着付け屋の女将。


「でも、今回は写真撮影はOKにします。ほんとは写真を撮られるのも撮ることもだめなんですけどね」


重いカツラ。不自由な体。締められた帯。そして、飲食NG散策…。私たちはここにきて舞妓の現実を突きつけられたのです…!!


予定ではこの舞妓体験をする前に、清水寺で食べ歩き、ある程度お腹がふくれているはずでした。しかし、京都駅から清水寺方面へのバスが長蛇の列でしばらく乗れそうになく、徒歩にしたことで、昼食を取っていなかったのです。


空腹に畳み掛ける空腹。かなりハードな1時間になる予感がしました。


……しかし、しかしそれでもまだ私たちは甘かったのです。


本当に大変なのは、空腹ではありませんでした。本当に大変なのは、「注目の的」になることでした。


そんなじゃないだろうと鼻で笑わないでください。


問題は数。舞妓の格好をした人(というか観光客にとってはリアル・舞妓)が6人いたら、確かに見応えがあり、派手で、目立たずにいることの方が困難です。


交通に影響が出るほど路に外国人観光客の方が集まり、一緒に写真を撮ったり知らない間に盗られたり、前にも後にも進めない!という状況。漫画にありがちな、“有名人が普通に街に出たら風で帽子が飛ばされて正体がばれ急に大騒ぎになる”的な具合に人が集まり、いや、でも有名人と言うよりは動物園のパンダを見るように囲まれていました。あれは間違いなく人生で最も注目された瞬間でした。


…空腹。飲食なし。重いカツラ。きつい帯。身動きの取れない着物。そして、想定外の注目…人、人、人…。


体験場所に戻るとみんな一回り痩せたようでした。そして素の姿に戻った時の開放感溢れる笑顔。


「10代まで」もある意味、納得です。


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今、写真を見返すと、楽しかったな〜いい体験したな〜と幸せな気持ちが先行しますが、いざ書いてみるとこんな苦労があったようですね。


女子大学生6人の京都旅はこんなものでしょうか。


とにもかくにも楽しいよき旅でした😊


ちゃんちゃん