見出し画像

チェルシーとシティの激闘をレビュー :: MR005 :: WSL Watch #040

"WSL Watch #039"でプレビューしたけど、どちらも公式戦10連勝中、勝点差3の首位チーム対2位チームの6ポインター、14節のチェルシー対マンチェスター・シティが期待通りの激闘だったんで、備忘も兼ねて'match review = MR'の5戦目としてレビューしとこうかな、と。

結果は0-1でアウェイのマンチェスター・シティの勝利。ちなみに、チェルシーのホームでの連続無敗記録が33試合でストップしたらしい。この結果で両チームの勝点も得失点差も並んで、総得点で上回ってるチェルシーが首位って状況に。ハイライト動画は両チームのYouTubeアカウントがアップしてるから、一応、両方貼っとこうかな。

明暗を分けたのは好調な若手の抜擢

両チームのスタメンは以下の通り。基本的にはわりと予想通りだったけど、マンチェスター・シティがジェス・パーク(Jess Park)をスタートから使ってきたのだけはちょっと意外だったかな。長谷川唯はもちろんスタメンで、浜野まいかは残念ながらメンバー外。

"WSL Watch #039"でプレビューした通り、チェルシーは基本的に4-2-3-1でCMFのエリン・カスバート(Erin Cuthbert)とメラニー・ロイポルツ(Melanie Leupolz)が攻守にすごく効いてて、一方のマンチェスター・シティもいつも通り4-3-3でCMFの長谷川唯を中心にした中盤での安定した保持をベースに押し込みたいチームなんで、マンチェスター・シティがキー・プレイヤーのジル・ロード(Jill Roord)を負傷で欠いてることも含めて中盤の攻防がキーになるとは思ってたんだけど、明暗を分けたのはこの大事な試合でスタメンに抜擢されたマンチェスター・シティのジェス・パークの活躍だったって言っていいんじゃないかな。ゴールシーンはジェス・パークがエリン・カスバートからボールを奪ったのが起点になったショート・カウンターで、そのままカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)の決勝ゴールのアシストにもなったんで、文句なしで殊勲のプレイだったし、しかも、チェルシーの中盤のキー・プレイヤーのエリン・カスバートからのボール奪取だったっていうのも大きかったと思うんだけど、ゴール・シーン以外でも、カディジャ・ショウのGKとの1v1のシーンもジェス・パークからのパスだったし、攻守両面で中盤にダイナミズムをもたらす素晴らしい活躍を見せてた。

イングランド代表に呼ばれたこともある22歳のジェス・パークは今シーズンここまでの試合出場は10試合なんだけど、実はスタメンは初めてで。昨シーズンはローン移籍してたエヴァートンで22試合出場・5得点だったから、十分な経験を積んで戻ってきたって言えると思うけど、今シーズン前半は基本的に途中出場が多くて、しかも、ローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)かクロエ・ケリー(Chloe Kelly)に代わってWGとして起用されてたイメージが強くて。ただ、ジル・ロードの負傷離脱、あと、ヴェネズエラ代表MFのデイナ・カステラノス(Deyna Castellanos)の移籍の影響もあるのかな? ウィンター・ブレイク明けの試合では4-3-3のインサイドMFでも起用されることが増えてて、基本的には勢いがあってプレイ選択がわりと強気で、いい意味ですごくイケイケな若手って印象なんだけど、その良さが最近の試合ではすごく効果的に出せてたとは思いつつ、この大事な試合でスタメン起用されるとは思ってなかったんで、ガレス・テイラー(Gareth Taylor)監督の思いきった起用が見事に当たったし、ジェス・パークが見事に期待に応えたって言えそう。

ラミレスとジェイムズに手を焼いたシティ

結果的には中盤の攻防から生まれたゴールが勝敗を分けたんだけど、内容的には期待通りかなり拮抗してて、チェルシー側にアドバンテージがあった局面もけっこうあって。例えば、マイラ・ラミレス(Mayra Ramírez)とか。頻繁にボールが入るって感じじゃなかったけど、入ったときの迫力はさすがで、特にマンチェスター・シティのCBのアレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)と接触して倒れたシーンは「VARがあったらPKだったかも」って思っちゃったくらいギリギリだったし。それ以外にも何度か際どい場面はあったし、チェルシーの絶対的なエースであるオーストラリア代表FWのサム・カー(Sam Kerr)の穴を埋めるストライカーとしてのポテンシャルは改めて強く感じたかな。端的にいうと、理不尽枠っていうか、得意なカタチになられたらわかってても防げない感じ。

チェルシーのもう1人の理不尽枠っていえば、イングランド代表FWのローレン・ジェイムズ(Lauren James)になるけど、マンチェスター・シティもさすがに警戒してたし、それほど大きなインパクトは残せなかった印象かな。それでも、いざボールを持ってドリブルを始めれば止められないし、クロスもシュートも持ってるし、当たり前のように何度か際どいシーンを作る辺りはさすがだったけど。

さすがの決定力を見せたショウ

ただ、チェルシーの理不尽枠がマイラ・ラミレスとローレン・ジェイムズなら、マンチェスター・シティの理不尽枠の筆頭はカディジャ・ショウなわけで、ゴールはもちろんだけど、GKとの1v1の場面とか迫力満点のダイビング・ヘッドの場面とか、やっぱり存在感は抜群だったかな。しかも、こういう大事な試合で決勝ゴールを決めるとか、まさにエース・ストライカーって感じだし。

見どころ満載だったエマ・ヘイズの采配

試合展開としては、立ち上がりはチェルシーの圧の強さがマンチェスター・シティをちょっと苦しめたけど、その時間帯を上手くやり過ごしたマンチェスター・シティが非保持からのチャンスで14分に先制した展開だったんで、その後は基本的にチェルシーが動いてマンチェスター・シティが対応するって流れだったのかな。

スタッツなんかがいろいろ見れるSofaScoreってサイトに'アタッキング・モメンタム(Attacking Momentum)'って項目があって、下に貼ったキャプチャ画像がこの試合のモノでSofaScoreのこの試合のページで見れるんだけど、要するに試合の流れがどっちに傾いてたかを表してて、左から右に時間が進んで、上半分の緑の部分がホーム・チームのチェルシー、下半分の青の部分がアウェイ・チームのマンチェスター・シティ、ボールのマークが得点、真ん中の線がハーフタイムって感じなんだけど、コレがわりとわかりやすく試合の展開を表示してる。具体的には、立ち上がりは拮抗してて、徐々にチェルシーが圧を強めて、マンチェスター・シティが押し戻した時間帯に先制して、その後もちょっとマンチェスター・シティの時間が続いたけど、前半の半分を超えた辺りからはチェルシーが優勢になって前半が終了、後半もマンチェスター・シティが押し戻した時間帯もあったけど基本的にはチェルシーが押してる展開で、終盤はチェルシーの猛攻だったけど、マンチェスター・シティが耐えきって何とか勝った、と。

もちろん、結果的にチェルシーは点を取れなかったんで成功だったとは言えないんだけど、個人的にはエマ・ヘイズ(Emma Carol Hayes OBE)が採った戦略がなかなか興味深かったかな。基本的には保持は4-2-3-1、非保持は2列目の3の真ん中のローレン・ジェイムズを前に押し出す4-4-2で、2列目の両サイドに戦術理解度が高くてハードワークを厭わないグーロ・ライテン(Guro Reiten)とフラン・カービー(Fran Kirby)を置いて、特にマンチェスター・シティのサイドの選手にボールが入ったときのケアをアグレッシブにさせてた感じで。保持のミスから失点はしたけど、内容的にはほぼほぼ互角かやや優勢って感じだったんで、前半に関しては失点前も失点後もそれほど変わってなかったと思うけど。

ハーフタイム明けにまずローレン・ジェイムズとフラン・カービーの位置を変えて、非保持ではマイラ・ラミレスとフラン・カービーの2人でマンチェスター・シティの2人のCBとGKにプレッシャーをかけるカタチにして主導権を握って惜しいシーンを作って。しばらくしてマンチェスター・シティが慣れてきたら、63分にグーロ・ライテンとフラン・カービーに代えてヨハンナ・リッティン・カネリード(Johanna Rytting Kaneryd)とアギー・ビーバー・ジョーンズ(Aggie Beever-Jones)をWGに入れてエネルギーを注入。さらに72分にはSBのアシュリー・ローレンス(Ashley Lawrence)に代えてMFのシェーケ・ニュスケン(Sjoeke Nüsken)を入れてかなり攻撃的な3-4-2-1に並びも変えて、ほぼほぼ一方的に押し込んで攻め続ける展開を作って。もちろん、結果的には点を取れなかったし、リードしてるマンチェスター・シティの重心がどんどん下がったって側面もあったけど、それでも、基本的にはリードしてても保持で試合をコントロールしたいはずのマンチェスター・シティにそれをほとんどさせずに攻め続けられるチェルシーの戦術的な柔軟性とそれができる個々の選手の質が生み出す迫力はやっぱり凄かったし、手を変え品を変えどんどん先手を打ってくるエマ・ヘイズの采配は見応え十分だったな、と。

存在感抜群だったキーティング

"WSL Watch #039"のプレビューで両チームの若手GKに期待って書いたけど、前半のプレイヤー・オブ・ザ・マッチがジェス・パークなら、後半はマンチェスター・シティのGKのキアラ・キーティング(Khiara Keating)で間違いない感じだったかな。アーセナルに勝った直近のFAカップでも押し込まれる時期が長くなった終盤にビッグ・セーブを連発してたんだけど、この試合でも試合終了間際のチェルシーの決定機を含めて素晴らしいプレイを何度も見せてて。

チェルシーのハナ・ハンプトン(Hannah Hampton)もカディジャ・ショウとの1v1とかクロエ・ケリーの左サイドからの強烈なシュートを止めてて、試合を引き締めるのはGKの質っていうのはサッカーの常識みたいなところがあるけど、まさにそんな感じの試合にしてくれたのは、両チームの若いGKの活躍だったかな、と。

優勝争いは3チームの争いに

今回のマンチェスター・シティの勝利をマンチェスター・シティの次に(同じくらいかも?)喜んでるのはアーセナルなんじゃないかな? この記事はあくまでもチェルシー対マンチェスター・シティのレビューなんで詳しくは別の記事で書くつもりだけど、今節はアーセナルもマンチェスター・ユナイテッドに勝ってるんで。ちなみに、14節終了時点のテーブルは以下の通り。チェルシーとマンチェスター・シティは勝点・得失点差で並んでて総得点の差でチェルシーが首位、3位のアーセナルと4位のマンチェスター・ユナイテッドの差は勝点7に広がってる。優勝争いはチェルシーとマンチェスター・シティとアーセナルに絞られた感じなのかな。

で、チェルシーとマンチェスター・シティはもう直接対決残ってないんで、注目はアーセナルがチェルシーとマンチェスター・シティと対戦するのがいつ、どういう状況でかってことになる。先にあるのはチェルシー対アーセナルで3月16日の16節、マンチェスター・シティ対アーセナルは5月5日の21節なんで最終節の前の試合ってことになる。アーセナルとしてはどっちもアウェイなのがちょっと厳しいかな? あと、マンチェスター・シティ対アーセナルに関しては、そのときの状況次第では引き分けるとチェルシーだけが喜ぶなんて展開もあるかも? とか思ったり。基本的にはどこも直接対決以外で勝点を積み重ねながら直接対決を迎えたいだろうから、まずは当たり前だけどチェルシー対アーセナルまでの期間の試合が大切になるはず。ともあれ、チェルシーが抜け出さずに三つ巴の展開でシーズン終盤にもつれ込んでくれそうなのは、リーグ全体を楽しんでる第3者的にはすごくありがたいし嬉しいかな、やっぱり。

DAZNが日本語実況付きで配信

"WSL Watch #033"で言及した通り、DAZNで配信されるWSLの試合はDAZN Freemiumに含まれてるから無料で観れるようになったんだけど、この試合はDAZNで、しかも西達彦の日本語実況付きで配信されてた。フルマッチの見逃し配信がいつまで観れるのかは謎だけど。ちなみに、西達彦はウィメンズ・フットボールの中継ではわりとお馴染みで、DAZNのWSL中継で日本語実況が付いたケースはほとんど(全部かも?)担当してて、安心して観れる(聞ける)実況アナウンサーの1人って印象かな、個人的には。

あと、DAZN Women's FootballのYouTubeアカウントでも英語実況で配信されてて、フルマッチのアーカイブも残ってる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?