見出し画像

優勝争いを左右するチェルシーとシティの直接対決をプレビュー :: MP001 :: WSL Watch #039

今週末に迫った次節のチェルシー対マンチェスター・シティのマッチ・プレビューを。基本的にマッチ・プレビューってコンテンツとしての消費期限が短いからTV・ラジオとか新聞とかみたいなメディア向きだと思ってるんで、今までは特にやってなかったんだけど、ただ、この試合はさすがに優勝争いを大きく左右する一戦になりそうなんで、'match preview = MP'ってカタチでまとめてみようかな、と。

DAZNが日本語実況付きで配信

試合自体は現地時間の金曜日の夜、日本時間だと金曜日の深夜、厳密には2月17日の土曜日の早朝4:15のキックオフで、先に日本での視聴環境に触れとくと、"WSL Watch #033"で言及した通り、DAZNで配信されるWSLの試合はDAZN Freemiumに含まれてるから無料で観れるようになったんだけど、この試合はDAZNの配信予定に含まれてて、しかも日本語実況付き(現段階で担当者は未発表)で観れるらしい。日本語実況の有無にどれくらい意味があるのかは個人差があると思うけど、あまりWSLの予備知識がない人とか英語が得意じゃない人にとってはないよりあったほうがいいとは思うし、とりあえずありがたいな、と。

あと、DAZN Women's FootballのYouTubeアカウントでも配信されるらしいんで、ライブで英語実況でも観れるっぽい。

10連勝中の1位と2位の勝点差3の6ポインター

首位のチェルシーはここまで11勝1分1敗で勝点34、2位のマンチェスター・シティは11勝1分2敗の勝点31。つまり、文字通り上位2チームの直接対決で、「勝点6の意味を持つ」なんて言われるいわゆる6ポインターってことになる。しかも、チェルシーはUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)を含めて直近の公式戦10連勝中、マンチェスター・シティも直近の公式戦12試合負けなしで10連勝中、ウィンター・ブレイクを挟んで連勝を重ねてて、今年に入ってから負けてないチーム同士の対戦でもあったりして。

連勝の中身を見ると、チェルシーで目を引くのはやっぱりUWCLでも首位通過をしっかり決めながらFAカップもコンチ・カップも勝ち上がってること。しかも、連勝した10試合は30得点・4失点、直近5試合はクリーン・シートっていう圧倒的な内容で、盤石としか言えない感じ。一方のマンチェスター・シティにとって大きかったのは、やっぱりFAカップのベスト16で当たっちゃったアーセナルとの激闘を勝てたことになるのかな。マンチェスター・シティも連勝した10試合は30得点・4失点で、直近4試合はクリーン・シート、FAカップもコンチ・カップも勝ち上がってるんで、UWCLがない点はチェルシーと違うけど、チェルシーに引けを取らないくらい好調って言えるかな。

チーム・スタッツを見ると、当然だけどこの2チームがいろんな項目で上位で、例えば得点数は41点のチェルシーが1位で35点のマンチェスター・シティが2位、失点の少なさは8失点のマンチェスター・シティが1位で12失点のチェルシーが2位、平均ポゼッションは61.4%のチェルシーが1位で59.9%のマンチェスター・シティが2位、クリーン・シートの数は両チームとも6試合で1位、枠内シュート数とパス数とクロス数も1位がチェルシーでマンチェスター・シティが2位って感じで。シンプルに上位にいるのが納得のスタッツを叩き出してる。

物議を呼んだ前回対戦

今シーズンのリーグ戦の1巡目の対戦はマンチェスター・シティのホームの第2節だったんだけど、かなり物議を呼んだ試合で。

結果は1-1のドローだったんだけど、内容的にはマンチェスター・シティが押してる中で先制して、でも、前半に遅延行為で2枚目のイエローカードがマンチェスター・シティのアレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)に出されて退場になったことで大きく流れが変わって、その後はチェルシーが攻めてマンチェスター・シティが守る展開になって、後半にローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)までイエローカード2枚で退場になって、それでもマンチェスター・シティは何とか耐えてたんだけど、後半のアディショナル・タイムにチェルシーが同点にして引き分けたって試合で。アレックス・グリーンウッドの退場もローレン・ヘンプの退場も、1枚は妥当な判定だったと思うけどもう1枚に関しては厳しすぎでは? って感じで現地でもかなり物議を醸したんだけど、やっぱりこれだけ力が拮抗したチーム同士の対戦だと、退場者が出たら試合内容が大きく変わっちゃうし、せっかくそこまでは好ゲームだっただけに、すごくもったいない試合だったって印象が強いかな、正直なところ。

主力選手1人を長期離脱で欠く両チーム

今シーズンのこの2チームの共通点として、大きな怪我で主力選手を1人失ったって点もある。もちろん、チェルシーのオーストラリア代表FWのサム・カー(Sam Kerr)とマンチェスター・シティのオランダ代表MFのジル・ロード(Jill Roord)で、どっちもすごく大きな痛手なんだけど、この状況に対する両チームの対応はけっこう違ってて。

チェルシーはすごくわかりやすくて、スペインのレバンテからコロンビア代表FWのマイラ・ラミレス(Mayra Ramírez)を1月の移籍マーケットで獲得。控えめに言って、これは明らかにサム・カーが抜けた穴を埋める補強だし、マイラ・ラミレスも週末のFAカップのクリスタル・パレス戦でさっそくチェルシー加入後初ゴールを決めてるし、普通に脅威だな、と。

一方のマンチェスター・シティは、ジル・ロード離脱後に出場時間を増やしてるのはベテランのローラ・クームス(Laura Coombs)だったり若手のジェス・パーク(Jess Park)とメアリー・ファウラー(Mary Fowler)だったりしてる感じで、特に直近の数試合を観てると、この試合後の代表ウィークでイングランド代表にも選ばれた22歳のジェス・パークが躍動してる印象。1月の移籍マーケットで獲得した20歳のローラ・ブリンドキルデ・ブラウン(Laura Blindkilde Brown)も含めて、特定の選手でジル・ロードが抜けた穴を埋めるっていうよりは、チーム内の競争と若手の成長に期待してる感じに見えるかな。

あと、2人のベテランDF、チェルシーのミリー・ブライト(Millie Bright)とマンチェスター・シティのステフ・ホートン(Steph Houghton)もケガで欠場になるっぽい。

得点王争いをするジェイムズとショウ

チェルシーとマンチェスター・シティの対戦っていえば、得点王争いをしてる2選手にももちろん注目。13試合終了時点でマンチェスター・シティのジャマイカ代表FWの'バニー・ショウ'ことカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)が13ゴールでトップ、チェルシーのイングランド代表FWのローレン・ジェイムズ(Lauren James)が12ゴールで2位。驚異的なペースでゴールを決めてる2人にどう対応するかは当たり前だけど大事なポイントになるはず。

ちなみに、チェルシーのメンズ・チームに所属してるローレン・ジェイムズの実兄のリース・ジェイムズ(Reece James)は妹に40ゴールを期待してるらしい。

引き分けた前回対戦の振り返り

試合展開の予想をするときに普通なら前回対戦を参考にするんだけど、上で触れた通り、前回対戦はマンチェスター・シティに2人退場者が出ちゃったんで基本的には参考にならない、それでも参考にするならアレックス・グリーンウッドが退場した38分までってことになると思うんだけど、改めて確認してみたら(The FA Playerでフルマッチのアーカイヴが観れるのはすごく便利)実はわりとマンチェスター・シティが優勢に進めてて。立ち上がりから保持とネガティヴ・トランジションで主導権を握って、その流れの中でクロエ・ケリー(Chloe Kelly)のゴールで先制できて、その後はアレックス・グリーンウッドの退場まではわりと拮抗した展開って感じだった感じで。

若手GKの活躍に期待

ただ、メンバーを見てみると、開幕直後だった前回対戦とはけっこう違ってて、その中でもチェルシーが最近の試合でGKに23歳のハナ・ハンプトン(Hannah Hampton)を使ってるのがちょっと目を引くかな。実はマンチェスター・シティも今シーズンはGKに19歳のキアラ・キーティング(Khiara Keating)を使ってて、この2人はこの試合の後の代表ウィークでイングランド代表にも選ばれたりしてて、代表ではマンチェスター・ユナイテッドのメアリー・アープス(Mary Earps)がファースト・チョイスになるんだろうけど、今後が楽しみな若いイングランド代表GKの対決にも注目かも。特にキーラ・キーティングはアーセナルに勝った直近のFAカップでもビッグ・セーブを連発してたんで。

試合展開を左右しそうな中盤の攻防

チームのプレイモデルを比較すると、どっちも保持型で相手を押し込んで圧倒したいチームだと思うけど、あえて違いを挙げるなら、より戦術的に整理されてて緻密に闘うのがマンチェスター・シティ、ある程度の枠組みの中で個の能力を活かして相手を圧倒するのがチェルシーって印象かな。アスリート能力と強度とパワーではチェルシー、細かいスキルと戦術的な再現性の高さではマンチェスター・シティって言ってもいいかも。

たぶんチェルシーは4-2-3-1でマンチェスター・シティは4-3-3だし、最近のチェルシーの試合を観てるとスキルと運動量と強度を兼ね備えてるエリン・カスバート(Erin Cuthbert)とメラニー・ロイポルツ(Melanie Leupolz)のCMFコンビのプレイが際立ってて、マンチェスター・シティの武器は当然中盤の構成力、CMFの長谷川唯を中心にインサイドMFの2人とレーンを超えて中央に絞るSBを加えて中盤の保持を安定させて、WGの質的優位を活かしてスピード・アップする攻撃なんで、マンチェスター・シティの中盤がエリン・カスバートとメラニー・ロイポルツを翻弄できるか、逆にこの2人のインテンシティでマンチェスター・シティの中盤にストレスを与えられるかがポイントになりそう。肉弾戦上等のガチャガチャとしたオープンな展開になるとチェルシーが有利だと思うんで。

CK・FKに関するシティの取り組み

あと、こういう拮抗した試合ではセット・プレイがキーになっていうのは常識っていうか、サッカーあるあるだと思うし、実際にマンチェスター・シティがアーセナルに勝ったFAカップの試合もCKからのゴールだったんだけど、その試合後にマンチェスター・シティのガレス・テイラー(Gareth Taylor)監督がちょっと面白いことを言ってて。曰く、セット・プレイに関しては、メンズ・チームの分析担当、つまり、ペップ・グアルディオラ(Pep Guardiola)のスタッフに協力してもらってる、と。こういうことが珍しいのか、他のチームもやってるのか、あるとすればどの程度なのかはよくわからないけど、ペップのスタッフって単純になかなかのインパクトだし、ちょっと興味深い話だと思ったりして。

WSLの面白さが詰まったトップ・レベルの好ゲームに

試合展開とか勝敗を予想するのは難しいけど、最近のチーム状態とかプレイモデルの練度とかサブまで含めた選手の層と質とか、あらゆる面で今のWSLの面白さとかレベルの高さが存分に楽しめる試合になることは間違いなさそうかな。奇しくも今週末はメンズ・チームもマンチェスター・シティ対チェルシーだったりするんだけど、メンズ・チームの対戦以上に熱い頂上対決っていうか。

(追記) 現地メディアの報道もチェック

海外のメディアにもいろいろプレビュー記事が出てるんで。内容に細かく触れたりはいないけど。主に自分用のリンク集として。あと、内容はもちろんだけど、『ESPN』と『ザ・ガーディアン』が見出しに"Clash of the Titans"って表現を使ってるのがちょっと面白い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?