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異次元のプレイで魅せるローレン・ジェイムズ :: P2W005 :: WSL Watch #045

気がついたらアーセナルのカイラ・クーニー・クロス(Kyra Cooney-Cross)について書いた"WSL Watch #012"以来全然書いてなかった'P2W = person to watch(注目したい人)'シリーズを久しぶりに。改めて考えてみると、もう今シーズンも終盤になってきちゃったけどせっかくだからWSLの'顔'って言えるような選手とか監督とかについてちゃんと書いといたほうが後でアーカイブとして何かの役に立つかも? って思ったんで。書くべき選手はたくさんいるからどこまでカバーできるかわかんないけど。で、最初に頭に浮かんだのはやっぱりLJことチェルシーのローレン・ジェイムズ(Lauren James)。シンプルに初めて観たときに度肝を抜かれたし、控えめに言ってもチェルシーとWSLを代表する選手で、もっと言っちゃえば、イングランド代表はもちろん今後のウィメンズ・フットボールを象徴するようなスーパースターになるポテンシャルがあるタレントだと思うんで。

似てる選手が思い浮かばない異次元の選手

プロフィール的な部分は後回しにして、とりあえず、ローレン・ジェイムズのざっくりとした印象を言うなら、「こんな選手、他にいなくね?」「誰に似てるとか、思い浮かなくね?」って感じかな。

プレイの特徴を挙げると、基本的にはパワーとテクニックを併せ持ってるし、得点力もあるし、ピッチにいるだけで質的優位になるアタッカーっていうか、何もないところから個の能力で違いを生み出せちゃう選手。その中でも、特に秀でてる部分はドリブルとキックなのかな。繊細なタッチのパスとかって印象はそれほどないから、キックに関してはシュートとクロス。ただ、ドリブルもキックも規格外っていうか、文字通り次元が違う感じ。

ドリブルに関しては、基本的には簡単には止められないタイプなんだけど、個人的に未だにすごく不思議なのは、ものすごい速いってわけでも細かい緩急を使ってるわけでもないように見えるし、上体を使ったフェイクとかシザーズとかみたいなこともあまりしてないのに、一旦ドリブルを始めたら止められないし、ボールを奪われないし、ただどんどんボールを運んでいっちゃうことがけっこうあって。身体のサイズがあって、重量感もかなりあるから、50:50の状態だったら相手を押しのけて進めちゃうとは思うし、実際に対峙したら速いんだろうけど、映像で観てる感じだと「なんでそんなにあっさり相手を抜けるの?」って不思議なシーンがかなりの頻度である。パワーで押しのけてるわけでも、多彩なテクニックを駆使してるわけでもないように見えるんだけど、ただ走ってるみたいにどんどん進んでっちゃうような。古今東西いろんなドリブラーはいたし、男女問わず考えれば誰かに似てそうなもんだけど、いくら考えても似たタイプがあまり思い浮かばないくらい稀有なプレイヤーなんじゃないかって個人的には思ってる。

キックも同じように規格外かつ異次元。もちろん、明らかに力強く蹴るシーンもあるんだけど、全然強く蹴ってるようには見えないのに、ものすごく強烈なボールが飛んでくることがけっこうあって。強烈なシュートを武器にしてる選手って、流れの中で「あ、ここで足を振るな」ってわかることが多いけど、ローレン・ジェイムズの場合、普通にいつも通りドリブルしてる動きのまま、突然ものすごいシュートが飛んでくる。しかも、右でも左でも。それなりに長い間サッカーを観てきたつもりだけど、新旧の男のトップ・プレイヤーを考えても全然似た選手が思い浮かばなかったりするくらい。

まだまだ荒削りな逸材

プロフィール的な部分も押さえとくと、ロンドン出身で175cm、チェルシーで背番号10を付けてるFW。2001年9月29日生まれだから現在22歳ってことになる。

2021年にマンチェスター・ユナイテッドから4年契約で加入したんだけど、実はU10からU14までチェルシーの育成組織にいたらしい。トップ・カテゴリでのデビューはアーセナルにいた2017年で、その後、2018年にマンチェスター・ユナイテッドとプロ契約を結んでチャンピオンシップでプレイしてWSL昇格に貢献したとのこと。こういうケースが珍しいのかはわかんないけど、チェルシー→アーセナル→マンチェスター・ユナイテッド→チェルシーって経歴。チェルシー加入(復帰)後の22/23シーズンにPFAウィメンズ・ヤング・プレイヤー・オブ・ザ・イヤー(PFA Women's Young Player of the Year)を受賞、2022年からはイングランド代表にも呼ばれてて、準優勝した2023年のFIFAウィメンズ・ワールド・カップ(FIFAWWC)にも出場してる。

基本的にはアタッカーなんだけど、個人的には適性ポジションがまだ見つかってない選手って印象。主にWGでプレイしてることが多いけど、CFWだったりインサイドMFで起用されたのも見たことがあるし。守備に関しては、全然やらないわけじゃないけど、それほど貢献度が高いってタイプではないかな。ただ、ちょっとサボって攻め残ってるだけでも相手に脅威を与えるんだけど。あと、FIFAWWCでは相手選手を踏みつけて退場になってたりして、感情のコントロールができないときがたまにあったり。まあ、そういう部分も含めてまだまだ荒削りっていうか、良く言えば伸びしろがあるってことなのかな、と。ただ、やっぱり似た選手が思い浮かばないし、順調に成長したとして最終形がどういう選手なのかもあまりイメージできないような、底知れないポテンシャルも感じてたりして。

兄妹揃ってチェルシーとイングランド代表の主力

11月の月間表彰を紹介した"WSL Watch #022"でもちょっと触れた通り、実兄はチェルシーのメンズ・チームにいるイングランド代表SBのリース・ジェイムズ(Reece James)で、リース・ジェイムズはけっこう妹の試合をスタジアムで観てる(姿が中継で抜かれてる)。ちなみに、2人の父親のナイジェル・ジェイムズ(Nigel James)はUEFAライセンスを持ってるサッカーのコーチで、具体的にどのくらいの英才教育だったのかはわからないけど、2人とも父親からの影響の大きさは公言してたりする。それにしても、兄妹揃ってプロなだけでも十分すごいのに、チェルシーとイングランド代表で主力って、本当にスゴイ兄妹としか言いようがない。

得点王にも期待

ローレン・ジェイムズはリーグ戦15試合終了時点で12ゴールで得点ランキングの2位。1位はマンチェスター・シティのカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)の15ゴールなんでちょっと離されてはいるけど、今シーズンのローレン・ジェイムズはハットトリックを2回やってたりして、固め取りができるタイプだからまだまだわからない感じ。得点王争いの常連のエースのサム・カー(Sam Kerr)の負傷離脱があっただけに、ローレン・ジェイムズの得点力にかかる期待は今まで以上に大きいはず。



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